読者と探偵が同じ情報を持つとは?
読者と探偵が同じ情報を持つとは?
どうもこのミステリーには叙述トリックがあるらしい……
そういうミステリーはよく「映像化不可能」などと言われたりするのだが、ずっと「映像化不可能」の代表ともいえるある有名な本格ミステリーが最近映像化されたりもするので……
いや、それはそれとして……
とにかく、この事件の情報をテキスト――プラス挿絵――でしか得ることができない、という点で確かに尾崎凌駕は読者と同じ情報を……
いや――
尾崎凌駕はカメラの映像を見ている……
しかし、読者は映像は見られない……
そういう意味では尾崎凌駕は読者の知らない情報を持っているということになる……
――それで彼は退場したのだろうか?
いや、これについては彼が自分で話してくれることに期待しよう。
それで――
実は、私もその映像を見ることはできる。私がアクセスできるサーバー上に首猛夫が持参したUSBメモリの動画ファイルが存在している。
私はこの医療センターのシステムエンジニアである。院内のネットワークに繋がるパソコンにはリモートでアクセスできる。
当然、尾崎凌駕のパソコンにも細工はできる。首猛夫が尾崎凌駕のパソコンにUSBメモリを挿しただけで中身をサーバーにこっそりコピーする……
まあ、詳細は書けないがそういうことも可能だ。そうだったとでもしておこう。
とにかく私もその動画を見ることも可能ではある。
ただ、精神がそれに耐えられるかはわからないが……
ただ、読者は動画は見られない……
それは小説である以上、仕方ない……
私が見てそれを文章化すればいいのかもしれないが……
いや、それはくどくなるだけだ……
ただ……
映像をコピーしたUSBメモリ
にて、尾崎凌駕と首猛夫が映像を見ているが、最後まで見ていない動画が一つ存在する。
離れの斬首殺戮シーン……
やはり、それは私が見て文章化しておかないといけないような気がする……
なので……
いや、まだやめておこう……
流石にまだ勇気が出ない……
とにかく、後は私が単独で書いていくしかないか……




