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 前の章で読者も理解できていると思うが、前章からはSEの私、■■が書いている。最初の方で主治医と名乗ってそのまま退場した■■が書いている。

 名前は伏せておく。いや、どこかで明かすつもりではあるが……

 二十数年前に極秘にこの医療センターの闇で始まったBMI実験は数人の地下送り――すなわち生ける屍を被験者にして行われてきたが、僅か数年で打ち切られている。実験を推進してきた医師のトップは発狂して退場してしまった。それを機に実験に携わっていた医師も大部分いなくなり、現在、実験のことを詳しく知っている医師は尾崎凌駕だけ――、それ以外はSEの私だけ、ということになる。

 BMI実験はそのように頓挫したが、被験者のうちの二人は地下で二十年以上生きてきた。

 そうしてAI技術の進化で彼らは覚醒し……

 まあ、それはこの小説を読めばわかると思うのでここでやめておこう。

 最初は主治医と名乗っていた私であるが、やはり精神科の医者ではないので続けるのは無理があると思ったし、尾崎諒馬=鹿野信吾=佐藤稔も私のことを信用してはいなかったようなので、途中で尾崎凌駕と交代した。

 尾崎凌駕と尾崎諒馬=鹿野信吾の関係はよくは知らないと言っておこう。

 大体、一介のエンジニアにすぎない私と医師である彼とは、ここ医療センターではちょっと身分の差が大きくて気軽に話をする間柄でもなく――

 ただ、闇に葬られたBMI実験の当事者は彼と私の二人だけになってしまっていたし、尾崎凌駕という名前――本名から、尾崎諒馬の知人であるのではないかとは常々思ってはいた。

 まあ、そうとだけ書いておく。

 この小説の執筆は共同執筆ツールを導入していて、最初は私とAIに補助されたあの患者――尾崎諒馬=鹿野信吾の二人が文章を綴れる環境にあったのだが、尾崎凌駕と交代した際に彼にもアカウントを与えている。

 藤沢さんは最初は尾崎凌駕にメールして、それを尾崎凌駕が小説に取り込んでいたが、最後の方は私が藤沢さん=首猛夫にもアカウントを発行して共同執筆の一員になってもらっていた。

 ただ、彼は退場すると宣言したので……

   

 ――退場するしかない……

 ――やつにバトンタッチするか……

 

 まあ、「やつ」呼ばわりされて少しムカつくところはあるが、私があとを引き継ぐことにしたわけだ。因みに共同執筆ツールの藤沢さん=首猛夫のアカウントは削除した。

 

 ――退場といえば……

 

 探偵役だった尾崎凌駕も退場してしまった……



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