1 王子フェルナンド
【注意】
ゲスい話です。
多少エロ気味な表現があります。
残酷な描写ありまくります。
アグアド王国の第一王子フェルナンドは、初陣となる隣国ソシアス王国との戦いを前に、緊張した面持ちで王の前にひざまずいた。
フェルナンドの母はソシアス王国の第三王女だった。アグアド王国に嫁いできたが、フェルナンドが六歳の時、原因不明の病で急死した。母の死でダレス王国の王女だった第二王妃エデルミラが幅をきかせるようになり、後ろ盾となる者のいないフェルナンドは城の中で目立たないように過ごしていた。
父王はエデルミラの言いなりだった。エデルミラの息子アルフレドは父母に愛され、第二王子でありながら事実上次の王になることは決まっているかのように恭しく扱われていた。
フェルナンドは特に王になりたいと思ったことはなく、将来は父の配下の騎士団に入り、父を支え、この国を守っていければいいと考えていた。王位継承権を捨てろと言われるなら受け入れるつもりで、少しでも父の役に立てるよう武術に力を入れ、日々剣や槍の鍛錬を怠らなかった。
フェルナンドの心とは裏腹に、エデルミラは自分の息子アルフレドより王位継承権が上位のフェルナンドを快く思っていなかった。どんなにフェルナンドが王位につく気がないと言ってもそれを信じることはなく、自分たちを油断させて裏では何か画策しているに違いないと思い込み、一方的に敵意を抱いていた。
エデルミラとその身内の国政への関与を牽制している者は少なくなかった。第二王子であるアルフレドは学業も武術も凡庸で、野心がなければ努力も厭い、母への依存心が強い。そんなアルフレドを次期王とすることに疑念を持つ者も多かった。そうした者達がフェルナンドを押し上げようと動くと、エデルミラはそれ見たことか、とフェルナンドの本心を見破ったかのように騒ぎ立て、フェルナンドに味方する貴族達をこれ見よがしに非難し、時には冤罪を着せて潰して回った。こうして王城はエデルミラを支持する者で囲まれるようになった。
ある時、隣国ソシアス王国の王太子が国境近くで何者かに襲われた。一命は取り留めたが、怪我を負い、やがてアグアド王国の手の者による暗殺未遂だと騒がれるようになった。
フェルナンドは今は亡き母の祖国と事を構えたくはなかったが、アグアド王の誠意のない対応にソシアス王の怒りは収まらず、国境に兵を向け、とうとう両国は戦争となった。
「フェルナンドはもう十六歳なのだから、軍を率いて、武功を上げるべきだわ」
エデルミラは王にそう進言した。王は反対することなく、フェルナンドは母の祖国と戦うことを余儀なくされた。
たった一歳しか離れていないアルフレドに対しては
「まだ幼いあなたに出陣は早いわ」
と言う王妃の言葉で、軍への参加は見送られた。
出陣を前に王城の広場で父王に挨拶をしたが、自分の息子の初陣に大した関心を寄せず、ただ一言、
「行って参れ」
とだけ告げた。