Dating story 月夜編
改良版第一号です、とはいってもあんまり変わってません。
我と・・・いや、私、十六夜 月夜と盟友・・・いや、靫空奏多との本当意味での最初の出会いは中学1年生の夏休みだった。
率直に言うと最初私は中学1年生の頃、虐められていた。
理由は当時は今ほど明るいというかハッちゃけたキャラではなく真逆の根暗・・・性格が暗かったのでそれが何時で作られたかは知らないカースト制度の上位の女子グループの目についたのか、よくあるタイプの陰湿なイジメの餌食となった。
それに耐えられず、私は中学入学して早、1ヶ月で不登校になっていた。
自分で言うのも何だが、私の家は日本でも有数の金持ちで、家も町の郊外の屋敷に住んでいた。
家には優しい両親とそれとは真反対の意地悪な兄と姉がいた。
性格がひねくれている兄と姉に悩まされている両親は唯一マトモな私を可愛がり、それを気に入らない兄たちは私を両親のいないところで嫌がらせをしていた。
お気に入りのぬいぐるみをボロボロにされたり、髪の毛を掴まれ叩かれたりと暴力じみていた。
そして私は部屋から一歩も出ることなく、ただパソコンやゲームをいじりながら性格がドンドン卑屈になっていった。
正直、進路とか将来とかどうでも良くなった・・・このまま親の脛齧り続けて、45歳で心筋梗塞で死ぬんだろうか、などとふざけたことを考えたが、今の生活を続けたらそんな事になってしまう。
だが、私は弱かった・・・力もなく、知識もなく、ただの弱者・・・一方的に種もみを奪われる農民のように私の人生は色々なものに奪われて行っている気がした。
そして時が過ぎ、学校は夏休みになったらしく、郵送便で宿題と『学校に来てみない?』という先生が手書きで書いたらしい内容の手紙が入っており私は宿題をゴミ箱に入れて紙をビリビリに破り捨てると、いつもの様にゲーミングチェアーに座り込んでオンラインゲームに勤しんでいた。
ここは楽園だ。エアコンは点けっぱなしWi-Fiも常時フルアンテナ、食事はカップラーメンを何種類も箱買いしている為お湯も電気ケトルがあるのでいつでも食べれる、正にNEET LIFEの最高地点だった。
だが、そんな私の楽園にあいつは・・・靫空奏多はやってきた。
私の両親が今まで世話になっている執事兼使用人が家庭の事情で夏の間の2、3週間だけ家を離れるというから、新しい使用人をその間だけ雇うというバイトを出し、志願者全13人の中から1人の少年が選ばれた。それが当時中学1年生の靫空奏多だった。
当時の奏多はただ単に執事という仕事を気分的にやってみたいという理由だけで志願したのである。
だが、バイトを受けに来た者の中では逸脱してちゃんとしており、中学生にも関わらず紅茶検定1級 掃除検定2級 家庭料理技能検定1級 コミュニケーション検定1級とほかにも様々な沢山の資格を持っていた。
そして、バイト初日、赤い紐ネクタイが目立つ事服を着こなし、月夜を除く家族の前で奏多は自己紹介をした。
「短い間だけですが、この十六夜家の執事として精一杯努めようと思います。どうぞよろしくお願いいたします。」
「よく来てくれた、ありがとう。」
「若いのにしっかりしていらっしゃるのね~よろしくね。」
両親は快く迎えてくれたが、やはり兄たちは奏多を舐めきっていた。
「君、中学生だろ?ちゃんと仕事できるの~?俺心配だな~」
「ご飯作れるの?インスタントにちゃちゃっと加える事だけはしないでよ!」
そう言うとそれぞれ自分の部屋に入っていった。
「全く・・・あいつらは礼儀というものがないのか?おっほん、あ~奏多君。気にせず、自分のペースでやってみたまえ。ああ、改めて自己紹介をするようで申し訳ない。私は太陽、こちらは妻の月だ。よろしく」
優しい表情で太陽が接してくれるので奏多もペコリと頭を下げ、作業に入った。
まずは家全体の掃除、家が広いので大変だが、家の見取り図を一瞬で記憶し、窓ガラスから冊子までスピーディーに完ぺきに家全体をピカピカにした。
「あ、私の部屋の掃除良いから。」
「俺も~」
と門前払いされてしまったので、家の周りの水まきなどを行った。
そして昼頃になったので、奏多は料理を作り始めた。
月夜以外が食卓の席につき奏多は料理を出していった。
「本日の昼食はサーモンのサラダ・サバイヨンソース仕立て、ビシソワース、金糸瓜の冷製ラーメン、デザートにはレモンのクラフティを用意させていただきました。」
テーブルには輝く料理がぞろぞろ並び見るだけで食欲が掻き立てられてくる。
「じゃあ、頂こうじゃないか皆、靫空君の実力もこれでわかるだろう。」
両親以外恐る恐る1口食べると、次々と料理を口に運んだ。
「おい、新人、この金色の麺は何だ?何でできてる?すごいコリコリしてるぞ」
「はい、そちらは金糸瓜、別名そうめん南瓜と言われており、出汁のベースは鮪節で取っており、簡単にチャーシュー、メンマ、もやし、ゆで卵、海苔をトッピングしております。」
「このビシソワース・・・いつも食べるのと違うわ、何か工夫をしてるの?」
「はい、通常は長ネギとジャガイモをベースにしてますが、このスープは冷凍保存されていた新玉ねぎを使用しナツメグを仕上げに使っています。」
「この、クラ何とかっていうのは?」
「クラフティはフランス、リムーザン地方伝統の菓子で通常はサクランボの果肉を使用していますが今回はレモンの皮とカスタードプディングを混ぜ合わせ焼いております。主食を冷たく、デザートを暖かく仕上げ、食後のコーヒーや紅茶をよりおいしく味わって頂くために工夫しています。それでは食後のお飲み物をお聞きいたします。」
「私はコーヒーを」
「私は紅茶」
「俺はコーヒー、アイスな」
「私もアイスコーヒーで、砂糖とミルク一杯ね」
「旦那様と坊ちゃん、お嬢様はコーヒー、奥様は紅茶で、今すぐ淹れてまいります。」
坊ちゃんやらなければならないお嬢様というワードが慣れないのか、2人は照れを隠すように怒鳴った
「ぼ、坊ちゃんはよせ!ああ、ええと・・・俺の名前は極夜だ!極夜様と呼べ!!」
「私もお嬢様ってなんだか小恥ずかしいから、白夜でいいわよ」
「了解いたしました、極夜様、白夜様。それでは少しお待ちください。」
奏多は急ぎキッチンからコーヒーと紅茶を持ってきてそれぞれの前に出すと、皆満足そうに堪能していた。
「あの、旦那様。月夜様のお食事もご用意してるのですが、お部屋に持っていってもよろしいでしょうか?」
すると、夫婦が顔色を暗くするのとは対極に極夜と白夜が笑い始めた。
「無駄無駄、アレは絶対出てこないし、会えることもできねぇよ。」
「そうそう、行くだけ無駄よ。」
笑いながら食後のコーヒーを飲み干し、極夜は大きなげっぷをした。
「ですが、食事はとらないとお体に触ってしまいます。無理にでも持って行ってみます。」
「無駄だと思うけどな~~あはははは。」
と奏多は料理を運ぶワゴンで2階の月夜の部屋の前までもっていき軽くノックする。
「月夜様、お食事をお持ち致しました。」
反応は無い、もう一度ノックする。するとドアに何かが投げつけたのかバンッと凄まじい音が鳴った。
「うるさい!!!ご飯なんて要らない!!消えろ!!」
(はぁ、一応執事だから主人の文句は言えないけど、流石に甘やかせすぎだ。)
ドア越しに怒鳴ってくるが奏多は退かなかった。
「いいから!!作っておいたんで食べておいてください!!食事はここに置いておきますから・・・食べ終わったら、そこに置いておいてください。」
こうなれば意地だと考えた奏多はワゴンから料理を下ろしおぼんに乗せ置いた。
月夜は奏多が去って5分後、ギギギと警戒しながら戸を開け、自分の部屋の前に置きっぱなしになっている料理を見る。彩の良い美味そうな料理なので堪らず涎が出る。
さっきの言動を思い返し考えると何だか悪い事をした気分になり、一応廊下に出された料理を部屋に運び、1口食べた。
「・・・!!美味しい。初めての味だ・・・」
もう一口もう一口と食べ進みいつしか空っぽになっていった。
「まともな食事なんて、何時ぶりだろう・・・」
普段は大抵カップ麺や、菓子など、時には食事さえとっていなかった。久々にまともな食事をとり少し満足感に満たされていった。そしてそーっと食器類を部屋から出すとそそくさと部屋へ戻った。
奏多がしばらくして部屋の前に行くと空になった皿を回収し、微笑みながら厨房に皿を洗いにいった。
一通り家事が終わると奏多は夕食前に用意された自分の部屋に入り、夕食までのわずかな時間で部屋の整理をした。
ドアと窓の鍵を確認し、布団や床の掃除をし、ものの10分でピカピカになった。
因みに妹は部活で合宿があるので1週間後に帰ってくる、そして帰ってきた後の食事代とおこづかいを与えてあるのでとりあえずは安心だろう
そして、夕食の用意を始めたところで太陽がキッチンに入ってきた。
「旦那様、どうかなされましたか?」
「いやいや、どうかねこの屋敷は?」
「はい、とっても素晴らしいです。使わせていただける部屋も立派でとても満足ですし、月夜様もお食事をとって下さいましたので、とりあえず一安心です。」
それを聞いて太陽は感心していた。
「確か、君は娘の同級生だったね。差し出がましいようだがこれを機に娘を説得してはくれまいか・・・」
「はい、出来る事なら食事は皆で、家族みんなでとること大事ですから。頑張ってみます。」
それを聞いて太陽は安心していた。
「あ、そうだそうだ、今日の夕飯は何だね?君の料理は楽しみだ。」
「はい、本日は中華です、でもメニューは見てのお楽しみです。」
「ほぉ!それは楽しみだ。」
と奏多は調理をはじめ太陽はリビングで新聞を読み始めた。
そして30分後、ご飯が出来たと合図を送り、皆、席に座ると奏多が料理を運んできた。
「本日の夕食、豆腐と3種の野菜のゴマダレサラダ、鶏肉団子のスープ、五目炒飯、春巻き、デザートにはマンゴーシャーベットをご用意してあります。」
そしてそれをもう一式2階の部屋の前に置くと、ノックをし、その場から立ち去ると、数秒後キィとドアを開き食事を受け取った。
皆、黙々と食事をし、半分くらい食べたところで極夜と白夜が
「もういらね、ご馳走さん。」
「私も・・・」
2人ともご飯を残し、スマホをいじり始めた。
「全く、お前たち食事中だぞ!弁えないか!!折角の料理も残して————」
「うるせぇな!別に良いだろうが親父には全く迷惑掛かってないんだからな。」
奏多は料理の乗った皿を回収し、暖かい烏龍茶を淹れた。
「ズズッ―って熱っ!てめぇ、なんであったけーのなんだよ。普通冷たいのだろうが!!」
「私も冷たいのじゃないと飲めないし、烏龍茶って嫌いなの!」
無茶苦茶な2人が揃って奏多に向かって熱々の烏龍茶を掛けたのだった。
辛うじて手で受けたが当たった所は赤くなり明らかに火傷していた。
「こらっ!お前たち!何てことを・・・」
「靫空さん、大丈夫ですか?」
「ふんっ!こいつのせいで俺の舌先が火傷したんだ。当然の報いだ。」
反省の色など全く見せずケータイをいじっている
「家族よりそんな今日来たばっかの使用人の事気にして私達なんかどうでも良いって事?」
「そんな事はない、だが、今の態度は人として問題があるぞ!!」
「あーはいはい、次からはしませんよ。分かりました。」
「あー!!もう!!唾散ったきったないなぁお父さんこそマナー悪いんじゃないの~?」
ひねくれた感じで2人とも部屋に入っていった。
奏多は表情を一切変えずハンカチで濡れた顔を拭き雑巾で床を掃除し始めた。
「僕は大丈夫なので気にせず旦那様達はゆっくり食事してください。」
2人の湯飲みを回収しキッチンに入っていく様子を太陽と食べ終わった食器を廊下に出していた月夜は見ているのだった。
食事も終わり、奏多は大浴場の用意をした。
湯船にお湯が入るとすぐさま極夜が入ってきてこちらを見ることも無く浴場に入っていくのだった。
そして、その後も皆次々と風呂に入り、最後に太陽が出てくると奏多も入るよう言われるのだった。
風呂に入り、髪と身体を洗い湯船に浸かった
奏多は風呂に浸かり、1日の疲れを取り始めた。
「ふぅ、火傷が軽くてよかった。もう治ってる。」
先程のやけどの跡はすっかり消え、痛みもない。こんなことで超再生を使わないといけないとは・・・
だが、この湯船の温度は丁度いいくらいで気持ちがいい。
奏多は息を貯めプールに浸かるように全身を沈めた。
暖かい湯が体を包み疲れを一気に吹き飛ばす。
すると、浴場の扉が開く音がし、鼻歌を刻みながら入ってきた。
奏多は湯船に身体を沈めているため全く気付いておらず、身体を浮上させた次の瞬間
『あ・・・』
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
お互い学校で見た事のある顔を認識した瞬間、月夜は顔を真っ赤にさせながら顔面に向かって洗面器を投げ、見事命中したのだった。
「はっ!ご、ごめん・・・」
鼻を抑える奏多を背に話をし始めた。
「あんたが入ってるとは思ってなかったから、ごめん・・・痛くない?」
「大丈夫・・・あと、久しぶり。春以来だね。」
奏多は月夜とは一回面識があっただけだが、当時からも奏多は学年でも有名であり月夜とは正反対な存在だった。
「あ、あのさ・・・学校夏明けから来ない?勉強は僕が教えるからさ。」
だが、月夜は震え、こちらへ向き怒鳴った
「・・・嫌だ。どうせお前も私の事見下してるんだろ!どうせ、また行ってもイジメに遭うだけなんだ。家の中でも限界なのに無理に決まってるだろ!!」
涙目で訴える様子は奏多にひしひしと伝わってきた
「無理じゃない・・・君のやる気次第だ。」
「知った様な口をきくな!!勝ち組のお前なんかがイジメられる者の苦しみを理解できるか!?」
「分かるよ。理解も出来る。」
奏多の返答に月夜は驚いていた。
「君の心の痛みはよく解るよ。それだけは言っておくよ。」
奏多は湯船から上がるとシャワーを浴び、出る際にこう言い残した。
「まだ、心配してくれる親がいるだけでも感謝した方がいいよ。」
月夜は奏多の悲しみがこもっているその声を湯船に浸かりながら、その意味を考えるのだった。
次の日、奏多は朝4時30分に起床し、朝食の準備、掃除をはじめ朝7時に皆が起きて食卓に座ると、厨房から奏多がやってきた。
「おはようございます。本日の朝食は和食と洋食どちらにいたしますか?」
「私は洋食だ。」
「私も洋食で」
「俺も」
「同じく」
注文を承ると奏多はトースト、ベーコンエッグ、温野菜サラダ、ヨーグルトを出した。
皆黙々と食べ、太陽は直ぐに支度し、仕事に出た。
月は今日は友人と美術館巡り、極夜は友人と遊ぶため夕食もいらず、白夜も彼氏とデートらしいので夕食はいらないそうだ。
皆を見送り、奏多は掃除の続きを終え、午前中の内に執事服のまま買い物を済ませ、月夜の昼食のサンドイッチをを作って2階に上がりノックすると、扉が開くのだった。
「・・・入って。」
手首を掴まれ無理やり部屋に入れられるのだった。
月夜の部屋は大量のゲーム機器と充電器につながれたゲーム画面の映っているスマホ、パソコンがある、しかも汚い・・・いわゆる引きこもりの部屋の代表例だった。
「お前、ゲーム好きか?」
「まぁ、人並みには」
すると、コントローラーを渡された。
「操作方法は説明書見て覚えろ。やるぞ」
「へ?」
急な展開に若干戸惑っていると、
「べ、別にNPCとの対戦に飽きただけだから対人戦したくなっただけだし・・・め、命令だ!!命令!!お前執事なんだから私のいう事聞けよ!!」
顔を真っ赤にさせながらそっぽを向いていた。
奏多は説明書を読みゲームを始めた。
ゲームをし始めて3時間が経った。
ゲームのソフトを変え色々なゲームをやった、対戦ゲームから共闘ゲームまで様々なジャンルのゲームを
「ふははは!私と互角とは・・・やるな!」
コントローラーを巧みに操りながら、彼女は笑っていた。年相応の少女の笑顔だ。
「ふふっ、やっと笑ったね」
奏多が優しく微笑みかけると顔を真っ赤にさせ下を俯いた。
「・・・た、戯言を抜かすな!次だ!!次のゲームをや、やるぞ!」
「じゃあ、この勝負勝ったら今日の晩、食事だけでも降りて来てくれない?お兄さんたち居ないようだから」
その言葉に、ピタッと月夜は手を止めた。そして数秒考えた後————
「・・・分かった。勝てたらの話だがな!!」
その言葉を聞き奏多は凄まじい指の速さでコマンド入力をし、圧勝した。
「あ、ああああ・・・・ま、負けた。」
「じゃあ、約束通り、一緒に食べてもらうよ。」
そう言うと、奏多は部屋を出て夕食の下ごしらえをしにキッチンに向かった。
しばらくすると、太陽も月も帰ってきた。
「おかえりなさいませ、夕食のご準備が出来ております。どうぞ、食卓に」
すると、2人は目を疑った。
「つ、月夜ちゃん!?」
「月夜!!出てきてくれたのか?」
「・・・うん。ご飯の時だけ、だけど・・・あとゲームに負けたから・・・」
それだけでも両親は嬉しがりながら共に食事を楽しんでいた。だが、
「ただいま~おい!新入り、飯!」
「私も~、彼氏が予定入ったっていうから切り上げたわ。」
最悪のタイミングだった。
「なんだ、コレ出てきたのか。」
「ふん、どうせ私たちがいないから出てきたんでしょ?ホントに陰湿な奴ね。」
兄や姉の言葉に恐怖していたいままでどんな目に遭ってきたかがこれでよく解ると言う位。
「ふん、どうせ親父たちのご機嫌取りだろ?ホントにウザいな。」
「ずっと部屋にこもって、オタクの遊びやってればいいのに・・・ホントに邪魔!」
奏多は月夜の目から涙が流れるのを見て言葉が出た。
「貴方たちは兄弟でしょう?何故そこまでひどい事を言えるんです?」
「はぁ?お前関係ないだろう?引っ込んでろ!」
「いえ、彼女に今日だけでも一緒に食事をとったらどうだと勧めたのは僕です。何故、そこまで、妹に・・・家族に、酷い事を言えるんですか?」
だが、答えるどころか極夜はこちらを睨みつけなんと殴ってきたのだ。
「うるせんだよ!!使用人の分際で!!口出すんじゃねぇ!!!」
倒れた奏多の顔を踏みつけた。
「もう止めて!!兄さん!私が、私が悪いんだ・・・私が・・・」
極夜の足を掴んで止めようとしたがもう一方の足で思いっきり月夜の顔を蹴った。
その際、頭を打ち、血を流し、気絶している。
「月夜ちゃん!極夜!!何てことを・・・」
「うるせぇ!黙ってろ!!」
(母親にさえこの態度・・・何て奴だ)
奏多は踏まれながら殴られた個所が既に治っていることを確認する。
「極夜、もう止めなさい。命令だ」
「あぁ!?もとはと云えばテメェがコイツばっか贔屓してっからこうなんだろうが!!糞おやじ!!」
だが、太陽の言葉は虚しく極夜は太陽にさえも暴力を振るった。
「白夜!極夜を止めて!お願い!」
「うるさいなぁ!今いい所じゃん」
月はそんな状況に耐えられず泣き崩れ気絶してしまった
踏まれている奏多はそんな光景を見て腹の底から久々の感覚が蘇ってきた。
いわゆるプッツーンという感覚だ。
「胸糞悪ぃ事ばっかしやがって・・・お前ら、家族の事を何だと思ってるんだ!!」
極夜の足を凄まじい痛みが襲う。
「痛って!な、なんだ?何しやがったんだ、てめぇ!」
奏多は手に着いた血を使い髪の毛をたくし上げた。
「家族に、そんな事をする奴は最低だ・・・お前ら甘えすぎなんだよ、餓鬼が」
「あぁ!?たかだか中学生にそんな事言われたかぁねぇんだがなぁ!!クソガキ!!!!」
「やっちゃえ極夜!!」
そして、戦いは始まりその数時間後、極夜は頭を丸め土下座の状態で白夜も土下座し気絶から目が覚めた両親と月夜に謝罪を続けた。
何があったのか聞こうとすると何も言おうとはせず震え始めた。
「残念ですが、僕は今日限りで使用人のバイト止めます。では!」
奏多は制服を脱ぎ捨て、私服に着替え屋敷をを出る前に月夜に一言だけ言った。
「勇気見せたね、君は強い。あんな状況でお兄さんを止めようとするなんて全く、君は僕の予想を遥かに超えてるよ。」
その言葉は私を救ってくれた。あの時気絶している時、確かに、彼の叫びが聞こえた。
『絶対に・・・月夜には二度と手を出すんじゃない・・・彼女は僕の友達だ!!家族だろうが何だろうが僕の友達に手を出すな!!』
こうして、私は家族間の大きな出来事を結果的に短時間解決してくれたあの人、初恋のあの人、靫空奏多と私の物語。
私はその後、新たなる道を見つけた。そう、真相成る新しくも輝かしい世界を!
第二話 我、誕生!!
我、十六夜月夜。いや、冥府の番人であり、死の騎士である、我ムーンナイトは、我が一族の邪念を払う事に尽力してくれた、盟友であり、混沌の支配者である、靫空奏多の恩に報いるために、学び舎に推参する決意をした。
だが、当時の我はまだ力に覚醒せず、正直・・・怖かったが、盟友の助けがあり、われは真の我を見つけれた。
これは我が我以前である・・・私の物語。
靫空奏多が私の家の使用人を短期間こなした夏休みが明け、私は勇気を出して学校に行く事にした。
久々の制服、女子専用のブレザー、リボン、スカートを身に纏い、スクールバック片手に家を出る。
正直、怖い。行けばまた何かされることは目に見えていた。
だが、彼は私に『君は強い』と言ってくれた。自分では自覚も糞もないが、それが、その言葉が私に勇気を与えてくれた。
両親に学校へ送ってもらい、車を出る前両親の泣きそうな顔を見て少し申し訳ない気持ちになった。そしてそのまま校門へ足を踏み入れ真っすぐ教室に向かった。
かつて自分が通っていた教室、そっとドアに手を掛け震える手を抑え戸を開けようとした瞬間、ドアがガラッと開いた。
「あれっ?十六夜さんじゃない~。なーんだ、まだ生きてたんだ。」
彼女達だった、確か今声をかけたのは名は茨城。見た目は美人だの可愛いだの、入った当初から注目されていたが、性格は最悪、それに続き周りの3人の取り巻きも合わせてさらに最悪である。
月夜の顔は一瞬にして恐怖に支配された。
「ねぇ、ちょっと、来なよ。久々にまた、遊ぼうよ~」
彼女たちの遊びとはトイレに連れ込み個室に閉じ込め、水を掛けてくるという物だった。
震えながら、その場を動けずにいると、ガっと腕を掴まれた。
「なに?私の誘い断るの?ねぇ。」
もう、限界だった。すると、後ろからポンと肩を叩かれた。
「やぁ、十六夜さん。学校来たんだね、嬉しいよ!って、あれ?顔色悪いよ?大丈夫?」
奏多だった。今来たらしく、鞄を肩にかけ教室に入る前だった。
「ゆ、靫空君!お、おはよう!今日もいい天気ね~」
すると、茨城は態度を一変させ、月夜をどかし奏多に寄ってきた。
「おはよう、茨城さん。ちょっと悪いけど、十六夜さん借りるね。色々話すことがあるんだ。」
と奏多は月夜を連れ教室に入った。
「・・・おは、よう。」
ぎこちない挨拶で先程の返事をすると、奏多は優しく微笑んでくれた。
「来てくれてほんとに嬉しいよ!!ささ、座って座って。あ、今週は約束通り付きっ切りで勉強を教えるから、席くっつけるよ。」
と奏多が席をくっつけ、ノートや教材を出す。
その様子を周りは呆気にとられており、茨城たちに至っては睨んでいた。
そして、本日、奏多は付きっ切りで月夜の勉強を教えた。
数学、英語、古文、漢文、生物、化学、社会の重要部分をノートに纏めたものを渡し、授業中の内容をもっとわかりやすく解説した。
「そうそう、その式を使って・・・うん!あってるよ!!十六夜さん、物分かりが良いね!」
また褒められた・・・
褒められると歯がゆくなり、顔が熱くなる。
その様子を茨城達は舌打ちをしながら見ているのだった。
そして、昼休み。
奏多は同じクラスの大前、加奈と共に月夜と屋上に向かった。
「こうして話すの初めてだよね!よろしく十六夜さん!」
「う、うあああ、よよよ、よろしく!!」
「俺も!よろしく!!」
顔を下に向け恥ずかしそうに出された手を握り握手した。
屋上に着くと、そこには先客がいた。
「おっす!お、見ない顔がいるな!」
それは当時、副風紀委員長だった草薙撫子だった。
何時もと変わらず寝そべりながらパンをかじっている。
「はい、友達の十六夜月夜さんです。最近まで学校を休んでいて休み明けから学校に来れたんです。というか、あんまり足をバタバタさせないでください下着見えますよ?」
ふーんと、月夜をジリジロ見るとニコッと笑った。
「そうかそうか!よろしく!私は草薙ってもんだ!」
「く、草薙・・・先輩、よよよ、よろしくお願いします。」
肩をバシバシされ少し痛がったが、数時間で友達と仲良くなれそうな先輩が出来た。
その後は皆で昼食をとり、教室に帰った。
その途中、奏多はポケットから月夜に箱を渡した。
「?何・・・これ?」
箱を開けると三日月の形をしたネックレスだった。
「つけてみてよ、これ、復帰祝いってとこかな。今僕装飾系の資格取ろうとしてるから練習でいくつか作ってるんだ、でね、これ君に逢うかなって思って。」
首飾りをつける。金色に輝く月が綺麗に首を飾る。
「似合ってるね。良かった。」
奏多がニッコリ微笑むとまたドキッとしてしまった。
「あ、ありがと・・・」
小声で返事をし、教室に帰った
教室に帰ると、奏多達の目に衝撃的なものが目に移った。
それは、先程奏多が月夜に渡したノートがビリビリに破かれゴミ箱やその前に散らばっていた。
よく見るとカバンや筆箱も捨てられており、その様子をニヤニヤ見守る茨城たちが目についた。
「なんで・・・こんなこと、するの?」
月夜は茨城の前に立った、恐怖はない、今己の根底にあるのは怒りだ・・・
「あ?な~に~?十六夜さん、まさか私がやったっていうの~?」
「お前ぐらいしかいないだろ・・・」
「はぁ!?言いがかりはよしてよ!!う~わ~十六夜さんってそんな人なんだ~」
悪い空気が流れる。だが、それをぶち壊したのは奏多だった。
「あー・・・せっかくのノートが・・・もったいないことするなよな、このノート破いた奴。」
ため息をつき、残ったビリビリにされたノートを塵取りで回収しごみ箱に捨てた。
「十六夜さん、悪いけどまた明日新しいの作ってくるから待ってて、午後からも授業の解説続けるから。」
笑いながら、何事も無かったように席に着き、昼からの授業の解説を始めた。
だが、この時月夜は感じていた、奏多にあの時の、あたしの兄たちに怒ったような雰囲気を持っていることを・・・
そして6時間目が終わった休み時間、月夜はトイレに駆け込んだ。
だが、茨城たちの虐めの手は奏多の見えぬところで働いていた。
用を足し、月夜がトイレを出ようとすると、頭上から液体が掛かってきた。
「くすくすくす、ねぇ、十六夜さん。靫空君に気に入られてるからって、調子に乗らないでね。あんたなんかが彼に釣り合ってると思ってんの?だとしたら・・・思いあがりすぎ!マジウケるwww」
ドアの外から聞き覚えしかない声が聞こえる。
そのまま授業が始まるギリギリまでトイレにこもり、教室に帰ると、入り口付近で茨城達が待っていた。
「なんだか、臭くない?」
「トイレの匂いがするわ~」
「臭い臭い!」
すると、こちらを見て鼻を摘まみ始めた。
「あら~、十六夜さん。まぁ~ビショビショじゃない!じゃあ、乾かさないとね~」
と雑巾で頭や身体をゴシゴシと拭く。手を震わせ、月夜は下を俯く。
奏多や大前、加奈が丁度いないタイミングで仕掛けてきたので誰も止めようとはしなかった。
「これで、乾いたわ。匂いはもっとひどくなったけど!ハハハハハ」
すると、首に着けたネックレスに目を付け無理やり奪った。
「なに?このセンスのわっるいネックレス?だっさ!」
ネックレスを踏みつける、何度も何度も踏みつけ、三日月は割れてしまった。
その瞬間、何かが吹っ切れた・・・全身の細胞が一気に沸騰するような感覚が体を襲った。
そして、次の瞬間・・・月夜の平手打ちが茨城の頬に炸裂した。
炸裂した威力はまぁまぁだが、女子一人を倒すくらいの威力はあった
「いい加減にしろ!!こっちが大人しくしてれば、いい気になって!!!」
落ちている雑巾を茨城の整えられた髪の毛をグシャグシャにする。
「な?や、止めなさいよ!ちょ・・・止めて!!」
取り巻きが止めように入るも月夜の一変した空気にビビッて誰も近づけなかった。
「何だ!貴様、誰かいないと何にもできないのか!?ああ!?私を攻撃するのはいい・・・だが、私の・・・いや!我が友のくれたものを、貴様が汚すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
口調も変わり、ぎろっと睨みつける、茨城は震え、その場に腰を抜かした。
止めを刺さんと、拳を握り振り下ろそうとした瞬間。
「ストップだ、月夜。 」
拳を握った腕を掴み優しく抱きしめた。
「やっぱり、君は強いね。」
ニッコリと微笑み、先生が来る前にこの場を支配した。
「さて・・・事の発端は、トイレで月夜に水を掛けたことから始まる。証拠もある。あらかじめ轟に協力してもらって月夜がトイレに行っている時にこのボイスレコーダーをもってトイレに居てもらった。」
待ってましたと言わんばかりに加奈が機械を取り出しそこから声が流れる。先程の会話が全て録音され、困惑しているところにさらに追い打ちをかける。
「君らが、僕のノートをビリビリに破ったことも証拠がある。悪いけど、念を押してこの教室には月夜の鞄が見える角度のみ監視カメラが設置してあった。あぁ、因みにこれは先生の許可を執ってるからね。そして、まさか、こんなに早くやるとは思ってなかったけど、君たちが鞄からノート出すの撮ってるから。」
そして・・・
「他人の物をとって、故意に破壊する。器物破損、窃盗。その他にも学校外での校則違反、バレテないとでも思ったかい?放課後のカラオケ、飲酒、化粧。数え始めたらキリがない。」
すると、反論するように茨城も口を開いた
「あ、あんただって!他人のプライバシーの侵害を・・・そう、盗聴してるじゃないか!!」
だが、それは直ぐに返された。
「いや、盗み聞きなどはしてないさ。さっきも言った通り教室の撮影は学校と君たち以外のクラスメイトからは許可をもらっているから全員知ってるよ、録音自体も君達からも見やすいように手洗い場に設置してもらったけど気付かなかったの?君達トイレいって手を洗わないのかい?」
完全論破、小ばかにしつつ反論する隙も与えない。
「それと、1つ言っておくね。」
人を見下す目で口を開く。
「僕は、人を集団で脅したり、いじめをする女性には絶対に好意を寄せない。覚えててね。」
そして、騒ぎを聞きつけやってきた先生に、奏多は証拠物品と事情解説し、今回の事件の関係者と共に職員室に向かうのだった。
そして、事の顛末。要約するとエンディング。
茨城達は休学。月夜はお咎めなし!奏多は普通に説教!!
そしてその日の放課後、奏多と月夜は教室で話していた。
「復帰初日から大変だったね、でも、凄かったよ」
「あ、あの・・・せっかくもらったネックレス・・・」
「ああ、壊されちゃったんだね。あの後、拾って綺麗に削ったりしたけど、ちょっと微妙な形に成っちゃった。あと、ぼくの作品ってセンスないのかな・・・」
もともと三日月のモノは形を変え、月の先端が巻かれた螺旋型の月となっていた。
「あ、ありがと・・・これで、十分・・・」
「でも、さっきの口調の変わりようは凄かったね、僕ああいう感じ好きだよ。」
そう、これがきっかけだった・・・
奏多はついこぼてしまったセリフがこの次の日、彼女の制服を軍服使用に変え、周りを威圧する口調になり、異名を使いまわしながら生徒会選挙を引っ掻き回し副会長の座を勝ち取った。
これが、現在の月夜を作ってしまった根本の物語である。
そう、ちょっとした少女の勇気と、ある男子生徒の何気ない言葉は乙女を痛いコに変えてしまうのだ。
急ピッチで他の番外編も投稿していくのでしばしお待ちを!!




