血の舞踏会
碧きドナウが流れる舞踏会。バロック風の華美さを醸しつつ、絢爛豪華な食事が、感極まる香りを醸し出し、熟した果実が恍惚とさせる空気を作りなす。
貴族たちは、ホップステップっ!音楽に合わせて手を足を跳ね飛びさせる。足長がする分にはまだ良いが、短足がやると、それは喜劇を醸し出す。
笑い声で響いている。テーブルでは金の話か下の話しかしていない。くすくす笑いに高笑い、笑いの種類というのは舞踏会で揃えられる。
サラは儀礼的な社交をしながら、舞踏会の奥の方、厳重に警護されたアイテール王家の方へと向かう。
王はサラに気がつくと、変にリズムをとりながらサラに手を貸し、笑顔で微笑む。
「おぉ、サラよ。愛しのサラ!しかししかし、美しい。」
王は少しやっているようで、妙に昂っていた。
「お褒めいただいても、何も差し上げられませんよ。」
「いいさ。君の顔が見れるだけで。」
王は高笑う、息子娘は顔を訝しめ、サラの顔をジロジロ見る。きっと恨まれているのだろうと、サラは思う、
サラはしかし、「望んでいるわけじゃない」と、そんなふうに思うしかない。すこし、苦笑する。
サラは王家のテーブルに招かれる。そこには息子娘達、法皇や正妻などもいた。そんな中に、サラという名もない貴族がいるのは、居心地の良いことでは決してなかった。
「最近は不穏な時期さ。不穏不穏不穏の三拍子、リズムはワルツ、俺たちオウサマたちは、いやはや怖い怖い。」
王はにやにや笑いながらそう語る。周りの者は苦笑するしかなかった。
「でも、お父様。カトーさんはうまくやってるわ。」
「奴は…確かにいい奴だ。でも、時代を読み取れてない。あいつは愛国者だよ。でも、それだけだ。」
「内閣はしかし党との争いにも打ち勝っています。超然主義は成功していますし、政治は安定期に入っているのでは?」
「分かってないぜ。息子よ。我がアキレスよ。政治というのは安定に根づく矛盾の巣窟なのだ。いずれ内閣は党を吸収しようとする、しかし、その時、内閣は自分自身を保てなくなるのさ。あぁ、ゼウスよ。悪魔たるデウスを滅ぼしたまえ!」
王は「さあ踊れや、歌えや!」と、はやし立てる。舞踏会は最高潮のテンションに達する。踊りは眩暈の様にくるくる廻り、音楽は吐き気のような歪みを見せる。
「サラよ。愛しのサラ。生きた心地を知っているか?いや知るわけがないさ。無垢な子よ。」
「どうしてそんなに悲しい顔をなさるのですか?」
にやりと笑う王。そして朗らかに、返答す。
「世界が終わるのさ。きっと、誰かが滅ぼす。そんな時を、民衆が望んでいる。だから、その期待が恐ろしい。その恐ろしさときたら、、、きっと、死にたくなる様な苦しみなんだよ。サラよ、君には、わからないさ。」
「世界が?」
「カルタゴは、今古代の兵器を持ち込もうと必死さ。そんなもの、あるかどうかも怪しいというのに、今は戦争の時代さ。戦争のために、あらゆる悲惨さを詰めたような古代の神殿に向かわせている。
私の国も、いずれそれを行うだろう。不安で仕方ない。民衆はその不安を解消するために、戦争を試みる。戦争を、試してみるのさ。その不安が、どんなものかを、まるで傷口を撫でるように、確かめるために。」
話をしていると、警護の者が何か揉めている。王はそれを見て、
「どうした!」と叫ぶ
「それが、少々卿が酔っ払っているようでして、」
「…ロトか。」
「やあ!やあ!サウロ殿!実に!実にお懐かしゅう!は、は、は、」
酒をぐびっと。目が虚ろだ。何かをあきらめたような陽気さは、一種の妖気さを演出する。
「いやぁ、なんということか、カルタゴでは労働者に聖なる政治に関わらせ、富豪も何もかもが愛国の仕事に加わるというのに!この国では乱交パーティとは、は、はは、は、」
「つつしみなさい!ロト殿。ここは王家の場、狼藉は貴方でも許されませんわ。」
「これは失敬!マダム!しかし、私ほどの愛国者、愛王者はおりませんのですぞ?いやはや、この世は実におかしいですな。私のような狂人が最もまともで、貴方方シラフの者が狂っているとは!」
「ふざけるのもいいかげんに―――」
バンという音がした。ショットガンが烈火の如く燃え盛る。ロトはへらへら笑う。
パニックが起こった。王妃が殺され、血飛沫が大理石の純白なる肌を穢している。警護の者がロトを取り押さえる。ロトは歌を歌ってご機嫌だ。
「鎖につながれて♪つるはし打ち込む♪」
王は微笑しながら、パニックとなった舞踏会から退く、警備の者に連れられて、サラも共に連れられて行く。
「いずれ戦争が起きるぜ。サウロ。そうなった時、お前は何ができる?えぇ?一体何ができるってんだ!」
サラはロトを見て、狂っているようには思えなかった。もっとずっと狂っているのは、きっとそれを見て高笑っている貴族たちだ。サラはそれを恐れて、急いでその場を去ってゆく、鐘が9時をお知らせした。
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