004 おっさんは召喚されました
004 おっさんは召喚されました
「あなた、何ができるの?」
メスチソ美女こと『フェリ様』である。
本名長すぎて覚えられなかった。
フェリ様と呼びなさいと言われたので、フェリ様である。
「はあ…… 肉体労働ならまぁなんとか……」
肉体はおっさん唯一の拠り所だった。
他の何も持ってこれなかったが、一番大事にしていたものが持ってこれたので良しとしよう。
「そうね、確かにいい体をしているわね」
若い女の子にそんな事言われると、おっさん照れてしまいます。
「ま、人間が召喚されるなんて前代未聞だけれど、武器が使えるというのはいいわね。何が得意なの? 剣? 槍? それとも弓かしら?」
何やら物騒な流れになっている。
「それとも、魔法? 魔法が使えるなら助かるんだけど」
魔法がある世界というのは老人、というか校長先生との話で聞いていた。
こうやって言葉が通じるのも魔法のお陰らしい。
魔法で言語に関係なく意思疎通が可能とかまじすごい。
「いえ、その…… 戦った事なんてないです」
「…… ただの農民なのね」
現在、彼女の自室に二人きりである。
おっさんは辞退したかったのだが、召喚されて10日間は親睦を深めるため同じ場所で寝泊まりするのが通例である。
部屋に入りきらない召喚獣だと、主人の方が合わせて獣舎で寝泊まりする。
彼女はどうやら貴族というものらしく、年上とはいえただのおっさん相手に物怖じしない。
ふんどし一丁のおっさん相手に全く引かないところは凄いと思う。
若い女の子の前にふんどしで正座なんて、おっさんはもう恥ずかしくて泣きそうです。
だが、
「そっか……」
という言葉からは、落胆だけではない何かを感じた。
顔を伏せているため表情は分からないが、少し、泣きそうな……
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