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幕間 若旦那様の女装は、使用人たちの見世物にならなかったの?


はい、どうもこんにちは。

作者です。

今回は『グラーシャの日記』という体裁でお話を進めております。

そして今回。

いよいよグラーシャちゃんが、

完全に宮廷婦人姿へ仕上げられた若旦那様を、何とかして見ようとする

という、かわいいかわいい奮闘を始めることになりました。

実を申しますと。

このシリーズで、


「メタモルフォーゼ会の参加者は、宮殿へ行ってから着替えたのではなく、自宅である程度仕上げてから馬車で向かったのではないか」


と考え始めた時。

かなり早い段階で思いついたのが、このネタでした。

だって。

お屋敷には。

使用人が大勢いるわけです。

しかも、その中には若い女性たちもいる。

もちろん。

十八世紀の女性使用人たちを、現代の女子学生や現代の若い会社員とまったく同じ感覚で描くことはできません。

そこは注意しなければならないと思っています。

ですが。

だからといって。

十八世紀の若い女性には好奇心もなければ、噂話もせず、格好のいい男性を見ても何とも思わなかった。

そんなはずもないでしょう。

若い娘が何人も働いているお屋敷です。

日々の仕事は忙しい。

毎日、似たような仕事も多い。

当然。

何か珍しいことが起これば。

気になるでしょう。

そこへ。

普段から屋敷で見かけている。

若くて。

格好のいい。

身分の高い若旦那様に。

突然。

とんでもない話が持ち上がります。

今度の宮廷行事では。

あの若旦那様が。

女性の宮廷衣装を着るらしい。

しかも。

ただドレスを羽織るだけではない。

髪も。

化粧も。

下着も。

大きなスカートも。

全部。

本格的に整えるらしい。

そして。

その姿のまま。

屋敷から出ていくらしい。

……見たくないでしょうか。

私は。

見たいと思います。

ものすごく。

見たいと思います。

まして。

グラーシャくらいの年齢の女の子なら。


「あの若旦那様が?」


となるでしょう。

しかも。

普段のイリヤ様は。

彼女たちにとって。

気軽に話しかけられる相手ではありません。

身分が違います。

遠くから見る方です。

それが。

よりによって。

ある日突然。

髪を整えられ。

白粉と紅を施され。

巨大な女性用のスカートを身につけ。

美しい宮廷婦人になって。

自分たちの働く屋敷の廊下を通るかもしれない。

これは。

ちょっとした事件です。

もちろん。

すべての使用人が大騒ぎした。

すべての若い女性が覗き見しようとした。

などと一般化するつもりはありません。

そんな史料があるわけでもありません。

ですが。

人間というものを考えれば。

少なくとも何人か。

ものすごく気になっていた人がいても。

私はまったく不思議ではないと思うのです。


「あの人、本当にドレスを着るの?」

「どんな色?」

「似合うの?」

「もうお化粧した?」

「いつ出てくるの?」


そんな話が。

仕事の合間に。

小さな声で。

飛び交っていたかもしれません。

しかも。

これは屋敷の若い娘たちにとって。

単なる服装の話ではありません。

普段は。

遠くからしか見られない。

格好のいい若旦那様が。

自分たちのよく知っている。

女性の衣装と。

女性の身支度によって。

まったく違う姿になる。

言ってしまえば。

ちょっとしたスキャンダルです。

そして。

ちょっとした見世物でもあります。

もちろん。

本人にしてみれば。

たまったものではないでしょう。

ですが。

だからこそ。

周囲の人間にとっては。

余計に気になる。

そんなことを考えて。

生まれたのが。

今回のグラーシャちゃんです。

彼女は。

何か大きな陰謀を追っているわけではありません。

歴史を変えるわけでもありません。

ただ。

見たい。

あの若旦那様が。

本当に。

宮廷婦人になったところを。

一度でいいから。

この目で。

見たい。

それだけです。

ですが。

こういう。

とても小さな好奇心こそ。

歴史書には。

ほとんど残らないものなのだと思います。


「男性貴族が女性の宮廷衣装を着用した」


という一行の歴史。

その同じ屋敷の片隅で。

若いメイドが。

仕事をしながら。


「今日こそ絶対見ます」


と。

ものすごく真剣に考えていたかもしれない。

私は。

そういう話を。

書いてみたくなったのでございます。


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