3話 街で甘い物探す
僕達は今街を歩いてる。何故かって? 僕がいると全員が馬車に乗れなかったからだよ。歩いてもすぐに着くくらいの距離だから歩いていくらしい。立場ってのもあって移動は基本馬車らしいよ。それにしてもびっくりだよね。3人が魔王の直属の護衛軍だなんてさ。姉妹でもないんだって、僕の名推理は外れていたらしい。
「おい。話を聞いているのか?」
クルスがそう言い視界に入り込んでくる。
「ああ、ごめんなさい。どうしたんですか?」
クルスは頭を抱える。
「今、私が女王様の凄さを伝えているというのに……。」
あ、そうだった。彼女達には申し訳ないから断れないけど正直どうでもいいんだよな。昔から歴史だけは苦手だった。
ペリーだかペルーが黒糖かなんかに乗って日本を侵略してきたくらいしか覚えてない。ハナから興味ない。戦争、戦いなんてどうせ血泥臭い戦いを聞かされるだけだからね。食ってるものが不味く感じるだけだ。
「えー。すごーい。」
僕は言葉すら聞かずに適当に相槌を返した。視界に肉屋が入る。そこにはとにかくデカい肉塊が目に入る。見せ物じゃない。実際に売っているではないか!
「クルスさん! あのお肉食べてみたいです!」
「え? 今は女王様の話を……。」
「まあいいじゃない。彼、話聞いてないみたいだし。」
え? ちょっとステラさん?! 気づいてたの? でも言わないでよ! また殴られるかもしれないじゃないか!
「そうか、こいつに英雄譚など聞かせても無駄だったかも知れぬ。」
あ、なんとかなりそう。
「クルス。また語り癖出てた。」
メモリーの指摘でクルスは少し頬を赤らめていた。
「えーと、肉だったか? これ、食いきれるのか?」
クルスは僕を見る。
「まあいけるか。」
「この肉一つくれるかい?」
今、僕の体型を見て言ったよな。やっと魅力に気づいてくれたのかな? そうなんだよ! 僕の魅力、それは! この体型にあるのだよ! この体型がすっとしてたら普通の人でしかないからね。
思考も普通。
体型も普通。
と来たら、ただの甘い物が好きな凡人でしかないという自負はある。これは僕のチャームポイントであり命なのだよ!
クルスは自分の腕くらいはある大きな肉を両手で持ってきていた。
「ありがとうございます。クルスさん。買ってもらっちゃって。」
僕はそれを片手で受け取る。
「いや、いいんだ。よく片手で持てるな。」
「クルスちゃん、力あるのにどうして両手で持っていたの? そんなに重いのかしら?」
ステラの問いにクルスは静かに言った。
「いや、重くはない。だが面積が大きいんだ。到底片手では持てん。」
ステラはクスリと笑った。
「クルスちゃん可愛いもんね。」
どうやらクルスは気にしていないようだ。僕には高等なイジリに聞こえたのだが考えすぎか? もしそうだとするなら、ステラさん……食えないな。僕は肉にかぶりつく。
うん。固い。だが噛めば噛むほど味が出て美味いな。麦わら帽子を被った海賊が食う肉なのに食感のイメージが違いすぎるが全然美味い。
僕は肉を頬張りながら街並みに視線を向けた。今更ながら違和感を覚える。
なんか和風だな。江戸? いや明治か? よく知らんけど、るろうに剣心とかでよくみる建物がズラッと並んでる。奥にはデカいお城みたいなものも建っているし、正直この街並みは大好きだ。なんだか興奮する。異世界で街並みを決めた人はきっと天才に違いない。でも、街を歩く人々にも違和感が凄いな。角は当たり前のように生えていて尻尾、ましてや立派な羽まで生えてる人までいる。竜人の国と聞いていたが人間の姿はどこにもない。僕を凝視する者までいる。正直照れるからやめてほしいものだがきっと種族間の争いごとだろう。まあこうして街を歩くのが許されているのなら僕には関係のないことだね。
「お前、名前がないのは不便だな。見ろ、あの城が女王様がいらっしゃる場所だ。」
クルスさんがそう言うと少し前から見えていた城に視線を向ける。京都に行った時に見たものと同じだ。いや、多分違うんだよ? 素人目線じゃよく分からんよ。
「あれ、あの高い建物の上で過ごしてるの?」
僕は知ってる。あの城、上にはくつろげる場所がないことを。実際に登ってきたからね。きっと1階、それか2階くらいで過ごしているんだろう。
「いいや。基本あのお城は使わないな。女王様は御殿という建物で過ごしている。」
「は? え? あの建物使わないの? じゃあ、なんのためにあれ建てたわけ?」
「元は将軍というもののステータス? 自慢のようなものでしかないと言っていたな。でも、あの建物はこの国象徴として使われるのが基本だな。」
成程。確かにその話はどこかで聞いたことがあるかもしれない。なんて……話してたらもう着いたのか。
僕達は門をくぐる。そこで僕はあり得ないものを目にしたのだ。壁に張り付いて首だけを動かす。
その奥にはきっと『絶対に手刀を見逃さない人』が潜んでいるに違いない、恐るべき機械。
――そう、監視カメラだ。しかも最先端の自動追尾式。
絶対に地球から来た人がいる!
……パティシエだといいなぁ。
「どうした? 何を立ち止まってる?」
「いや、カメラあるんだなぁって。」
クルスの質問にそう返すとメモリーが近づいてくる。
「わかるの!? カメラ!」
「う、うん。元は地球の物だからね。え? そうだよね。」
「うん。それよりも! これ、私が造ったの! もっと褒めて!」
おどおどタイプの子かと思ったが意外と来るな。僕が負けている。
「ま、まあ……すごくコンパクトだし、景色に溶け込んだ美しいデザインだよね!」
なんだ? カメラってあと何褒めればいいんだろう。コンパクトなのは嘘じゃない。多分地球でも通用するじゃないかな? 知らんけど。
「分かってるならいい。」
そう言いメモリーは離れていく。
これどっち? だめだよね? 多分だめだよね?
「早く来て!」
メモリーは2人に合流するとそう僕に声を張った。
ゆる……されたのか?
「あら? あらら〜。どうしたの? メモリーちゃん。随分と積極的じゃない。」
「別にステラが考えてるようなやつじゃないよ。」
「あら……そう。残念ね。」
こうして僕らは御殿の扉を開いた。
「いらっしゃ~い。皆〜。」
ステラのデカい胸に1人の女性が飛びつく。
「あらあら、魔王になっても甘えん坊さんですね〜。」
「いや、これはステラ姉の母性が爆発してるのが悪いと思いまーす。」
これが……魔王? いや流石に違うだろ。……いや今ステラさん明言したよね? 魔王って言ったよね? ……マジで?
僕はこの時に確信したんだ。魔王は大したことないってね。本気で思ったよ? でもそれと同時に期待が高まったんだ。彼女の前世はきっとふつうの女の子でお菓子好きなんじゃないかって。
僕は魔王を見ていた。ステラさんのたわわなそれに顔をうずめて話す彼女だったが何か違和感を感じたのか視線を僕に向ける。
「お、お、お客人!!!」
魔王はすごい速度で後退し、柱の後ろに隠れる。
「セレナかと思ったじゃん。お客人呼ぶなら言ってよ〜。すっごい恥ずかしいんですけど。」
「言ったわよ〜。ちゃんと魔法で連絡入れたのだけども、見逃しちゃったかな? セレナちゃんも可哀想ね。間違えられるなんて。」
この人隙ありゃ煽りだな。バレないようにしてるんのが更に……。まあいい。僕がきた理由は一つなんだ。
「魔王さん!」
「は、はい。」
ひょこりと顔を出す。
「僕にケーキを作ってください。」
僕は頭を下げた。僕は甘い物が欲しいんだ!




