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第十話 アクレス

 「いてぇ……」


 清潔感のある白いベッドの上で足を伸ばして座るジークが脇腹を優しく触れると、昼食を配膳しに来ていた栗色の髪をしたショートボブのシスターであるミーファが口を開いた。


 「鎮痛液ちんつうえきを貰って来ましょうか?」

 「お……お願いします」


 ジークが即答すると、ミーファが「分かりました」と返事をし、急いで部屋から出て行った。

 部屋を出ていくミーファを見送って、視線を右にあるベッドへと移した。

 ベッドで横になって眠るのは、昨夜に誘拐されそうになっていた白髪の少女だった。白い髪と肌が太陽の光で眩しく姿を輝かせていた。外傷はなく、今は疲れて白い毛布の下で仰向けでスヤスヤと寝ていた。

 シスターが持ってきた昼食の何かの肉が挟まったサンドイッチに手を伸ばそうとしたとき、アルバートが部屋へと入ってきた。

 

 「食事中に悪い。少し話せるか?」

 「あ、はい!」


 ジークは昼食を乗せられたトレイを少し奥に引くと、アルバートが窓際に置かれた丸椅子に腰掛けた。


 「こんなダルいことはしたくないんだが、立場上、聴取して団長に報告しないといけないんだ。悪いな、怪我してるのに」

 「いえ、大丈夫です」

 「名前を改めて頼む。ファミリーネームまで」

 「ジーク・アクレスです」

   

 ファミリーネームを聞き、アルバートがジークの顔をまじまじと見つめ、


 「アクレスってカリメア王国の王のファミリーネームと同じだが、関係あったりするのか?」

 「息子です。次男のジーク・アクレスです」

 「まじかよ……」


 アルバートが頭を抱える中、ジークが口を開いた。

 

 「初対面の時に黙っててすみませんでした。迷惑をかけるかと思いまして……。でも結局、ロブさんにはバレたので言えばよかったです」

 「ロブにバレたぁ?」

 「はい。副団長達にもあとで話しておくと……」


 右手で顔を隠し、項垂れるアルバート。


 「聞いてねぇよ……」


 何かを思い出したかのようにジークを見た。


 「結局、自分探しの旅ってのは、本当なのか?」

 

 ジークが答えようとした瞬間、ばっ!と掌を突きつけた。


 「やっぱりここで気軽に聞いていい話じゃねぇ」

  

 アルバートは立ち上がる。

 

 「ここでの聴取じゃなくて、ミシェルで聴取をしたいんだが構わんか?」

 「俺は大丈夫です」

 「ならよかった」


 視線をジークから奥で眠る少女に移った。

 アルバートは後頭部をポリポリと掻きながら、


 「あの子はどうすっかな……。とりあえず団長に報告して、処遇を決めてもらうしかねぇな。団長に繋がれば、夕方にはお前に報告できると思うが……夕方に報告なかったら、二、三日はステイだと思ってくれ。まぁ療養中なら都合がいいか」

 「すみません……すぐ治します……」

 「気にすんな。じゃあな」


 アルバートが部屋から出ていき、早く治さなくては!と、サンドイッチを食べ始めた。シスターの手作りなのか分からないが、とても美味しかった。

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