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People's Life -ピープルズ ライフ-  作者: おむ
第一章 ジークという人間
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第八話 断罪

 棒を握る右手が熱かった。熱いと言っても心地よい熱さだ。例えるならば、シャワーを浴びる熱さだ。

 そして何故か、ジークはこの棒の使い方を知っていた。いや、知っていたのではなく、棒を握った瞬間、脳に『鎌』の扱い方をインプットされたが正しいのかもしれない。

 もうジークには握っている棒は『鎌』にしか見えなかった。

 両足を広げ、腰を落として流れるように鎌を構えた。

 奥に見えるグラウディーをしっかりと見て、走った。

 ジークが駆けたと同時にグラウディーがジークの異変を察知し、少女から手を離し、穴の奥にいるジークに視線を移した。

 すぐにグラウディーは動き、足元から数十本の触手を呼び出し、ジークに向けて飛ばした。

 目の前から飛んでくる触手に対し、表情を変えることなく、当たる寸前でジャンプして避け、地面に突き刺さった触手の上に飛び乗り、グラウディーへと駆ける。

 チッ……と舌打ちし、グラウディーは両手を低く広げた。

 足元の床一面が黒い湯気のようなものが立ち上げ、触手の群れが現れた。

 ジークは鎌を強く握った。それに反応して、棒の渦巻き状の所から徐々に鎌の形をした刃が出現していく。

 刃の色は赤色。血ではないかと思うくらいに真っ赤だ。

 教会に入らせまいと前方から触手が次々に飛んできた。その飛んでくる触手を鎌で振るって、斬り落としていく。斬られた触手は次々に消滅していく。

 触手を斬りながら教会内に入ると、頭上から触手の攻撃が落ちてくる。右に飛んで避け、両手で鎌を握り、勢いよく左へ振って真っ二つにぶった斬る。勢い余って、斬撃が奥の壁まで飛んで、時間差で壁を軽く切り刻んでしまう。

 大振りな行動をして若干、体が硬直する。それを狙ってか、ジークを中心に四方八方から触手が飛ぶ。そのまま無数の触手が貫こうとジークがいる場所に突き刺さった。

 激しい土煙が上がる。グラウディーの表情は険しいままで、触手の群れが突き刺さった場所をガン見していた。

 土煙が上がり、五秒くらいが経ったくらいに土煙から突如としてジークが現れ、グラウディーへと走る。

 四方八方からの触手攻撃に無傷とはならなかったようで、ジークの肩や腰から流血していた。

 土煙から急に姿を現したジークを見て、グラウディーは苦虫を噛み潰したような表情を一瞬見せた。

 グラウディーとの距離は五メートルまでちぢんだ。

 右手に握る鎌の刃が暗闇を照らす光源になり得るくらいに激しく真っ赤に染まりだす。

 不意打ちを狙ってか、ジークの脇腹付近を狙って左右から触手が飛ぶ。

 左右から迫る攻撃を跳躍ちょうやくして躱わし、体をぐるりと横に一回転させた。

 体を回転させたことで体勢を立て直し、両手で鎌を握り、大きく振りかぶった。

 鎌が発する赤い輝きが強すぎて、赤い閃光の中で小さく黒色に輝いた。

 頭上で大きく振りかぶるジークを見て、グラウディーは短く笑った。


 「そんな攻撃、当たるわけないだろ」


 冷静に右側に移動しようと右に体を傾けた。が、動くことが出来なかった。

 すぐに足元を確認すると、冷気を帯びた氷がグラウディーの膝のあたりまでカチンコチンに凍らせていた。

 グラウディーは教会の出入り口へ視線を移す。

 教会の出入り口には壁に肘をついて拳で頭を支えて眺めるアルバートがいた。

  

 「エッティアの居場所を知らないなら用はない。死ね」


 グラウディーは頭上で振りかぶるジークを見て叫ぶ。


 「糞ったれ共がぁぁァァッッッ!!!!」


 グラウディーは無我夢中で触手を呼んだ。だがしかし、時すでに遅かった。

 鎌の刃は、もう動き出していた。



 【アルマ断罪ブレイクッ‼︎】

挿絵(By みてみん)


 左斜め下気味に鎌が振り下ろされ、そのまま床に赤い刃が突き刺さる。突き刺さった瞬間、刃が赤い稲妻のようなものにぐにゃりと変わってほとばしる。

 鎌の衝撃で窓の割れ残ったガラスの破片が外へ吹き飛び、赤い稲妻が教会の燃焼を止めた氷塊に直撃し、氷塊を砕く。

 鎌を握っていたジークも衝撃に耐えることができず、後方に飛ばされて仰向けで倒れた。

 真っ赤だった刃の光量が弱まり、刃の部分が完全に消滅し、一本の棒となって床に落ちた。


 「がぁぁぁぁッッ!!!!」


 グラウディーは脳天から真っ二つ―――にはならず、肘から下を斬られて肘から溢れる赤黒い煙を逃がさないように左手で斬り口を抑え、床でもがいていた。

 斬られる直前にグラウディーが立つ床が抜けたこと、ジークの振り下ろした鎌が左曲がりだったことで、グラウディーは直撃を喰らわなかった。

 体に直撃を喰らわずに右腕一本で済んだが、それでもかなりのダメージがグラウディーに入ったようで、顔から滝のように汗を吹き出し、顔色も真っ青だった。

 瀕死の重体の中、左手を震わせながら、親指と中指で輪っかを作って手笛てぶえを吹いた。

 甲高い音が鳴ると、アルバートの後ろから黒い煙がものすごいスピードでグラウディーへと集まり、馬並みのジャーマンシェパード犬へと姿を変えた。


 「嘘だろ!?全身を凍らせたはずだぞ!!」


 アルバートの叫びに反応することも、誰かに襲いかかることもなく、犬はグラウディーの胴体を口に咥え、近くの壁を体当たりして破壊し、その場から逃走する。


 「逃がすかよ!!」


 逃走した犬をアルバートが追う。

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