20.迷子の迷子のこねこちゃん!?
相変わらず公爵家の庭!?もとい森で迷っている心結です。
そろそろ誰かが気がついて、迎えに来てくれてもいい頃なんだけどなぁ……。
少し歩き疲れたので、小高い丘の中腹にある
芝生のような草原の上に腰をおろしました。
風が爽やかで気持ちがいい……。
空も澄み切って青い、雲ひとつありません。
これだけ見ると元いた世界と、変わらない景色なんだよなぁ。
もう寝っ転がっちゃえ!
仰向けになり目を閉じた。
草の香りと、少し奥の茂みから聞こえる可愛らしい鳥のさえずり……なのか?
グガァァァァ、ギャース、ギャース……キェェエ!!バサバサバサ!!
鳥?なのかなぁ……。鳥!?だよねぇ。
ちょっと目を開けて、確かめるの怖いなぁ。
などと呑気に大の字で、草の上に寝っ転がっていたのだが
ドンッッッ
突如お腹の上に、軽い衝撃と重みが加わった。
「グッ……………!?何事……!?」
(急な衝撃はダメよ……色々なものが出ちゃうよ!
今朝美味しく頂いたものとか、魂とか、中の人とか……
中の人!?はでないな、うん)
驚いて上半身だけ起こして、自分のお腹辺りを見てみると
小さなモフモフの塊が乗っていた。
「モフモフ…………」
その塊は円らなウルウルっの瞳で、心結を見上げていた。
(かわえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)
叫ばなかった自分を褒めてあげたい。
「迷子のこねこちゃん……ではないよね」
首のところに細い金の鎖!?ペンダントトップにはルビーのような
紅い宝石みたいなのもついてる……。
ひょいっ……。
モフモフの両脇に手を入れて優しく持ち上げて、
自分の顔の高さまで持ってくる。
この顔、体色は黄褐色に黒い斑紋……君はもしかして……。
「ガォ~」
可愛らしい声でモフモフは鳴いた。
その頃、侯爵家のお屋敷では、ちょっとした事件が起きていた。
「ラウル様?」
ディーヤは、心結の部屋の前で、ノックをしようかしまいか、
右往左往しているラウルを見かけた。
「ラウル様、おはようございます。
あら、顔色が優れないみたいですが、大丈夫ですか?」
ラウルは少しやつれ、ひどい顔をしていた。
「いや…大丈夫だ。少し寝不足なだけだ……」
何か言いたげな顔でディーヤを見ていたが、途惑いがちに口を開いた。
「その…心結様は……」
元気か?昨日と変わりないかと聞こうとした矢先
「ミュー様でしたら、元気いっぱいガッツリと朝食をお召し上がり、
その後、庭散策へと出かけられましたよ。
ブリオッシュをお気に召されたのか、3つもお代わりしていましたよ」
嬉しそうにモフモフリス尻尾を揺らして、笑顔で答えるディーヤ。
「………………。そうですか」
ラウルの碧の瞳が、静かな怒りに燃え上がる。
〈本気かっ!どういう神経回路してんだ、あの娘!
ガッツリと朝食を食べた挙句、お代わりだと!
昨晩の事は、大した事では、なかったのでもいうのか!
傷ついていないだろうか、泣いてはいないだろうかと
本気で心配して……。
俺が馬鹿だった。やっぱり人型は嫌いだ!〉
そんな二人の前に、黒柴のりすば犬メイドが転がるように飛び込んできた。
「ラウル様!ディーヤ、ここにいらしたのですね」
「どうしたのですか、そんなに血相を変えて」
「大変です、坊ちゃまがいなくなりました」
「…………!!」
二人は顔を見合わせた。
「屋敷の中は、全て探したのですか?」
「はい、屋敷の者を総動員して探しておりますが見つかりません」
黒柴りすば犬メイドは、半分泣いていた。
「わかりました、私も探しに行きます。ディーヤは一緒に来てください」
「はい!」
坊ちゃんを探せ!のミッションが屋敷の至る所で、開催されていたのだった。




