21.そんな伝統文化はありません!
屋敷で大騒ぎになっているとは知らず
心結とモフモフちゃんは、キャハハ、ウフフと
草原で戯れて遊んでいた。
「やっぱり走るの早いね!全然捕まえられなかったよ」
「グルグルグル……」
甘えて心結の胸に、頭を擦りつけるモフモフちゃん。
「それに小さくても牙はワイルドなんだね……」
「ガォ~」
ちょっとドヤ顔で吠える。
「可愛すぎでしょう。
もう私をどうするつもりなんだね君は」
ギュッと抱きしめて頬ずりをする。
お腹の毛皮もモフモフ……。…………。モフモフ……。
(これは……あれをやるしかない!!)
(はぁぁぁぁぁ、スーハー、スーハー、ディーヤとは違う、
ちょっと甘い香りがする。幸せ……)
心結はモフモフちゃんのお腹に顔を埋めて、
幸せなひと時を堪能していた。
モフモフちゃんも大人しくされるがままに、寛いでいる。
「いました!ディーノ様とミュー様も!?……。
ん?えっ?」
みんなが血眼で探していた坊ちゃまのお腹に、
心結が顔を埋めてうっとりしている、現場に出くわすなんて
誰が思っただろう。
ラウルは衝撃過ぎて、現実を理解するのに数秒を要した。
が、そこは執事たる所以なのか、直ぐに復活を果たした。
「何をしてるんだお前……」
怒りと戸惑いが合わさった声がしたと思ったら、
心結の前からモフモフちゃんが奪われた。
「ディーノ坊ちゃま!心配しましたよ」
心結の前に、眉間に皺を寄せた険しい顔をしたラウルと
ホッとした様子のディーヤが立っていた。
「グルッ……?」
当の本人はケロっとした様子で……
ラウルに大人しく抱かれている。
「ディーノ様に何の真似だ」
「何って、”猫吸い”ですけど」
「はっ?」
「はっ?」
ラウルとディーヤの声が、同時にハモった。
何を言ってるんだこいつ!
と言わんばかりのあきれ顔つきだ。
「“猫吸い”知らない?
黄金の国ジパングという国の伝統文化です。
主に猫科モフモフに対する奥義の一つだよ。
なかなか会得が難しい技なんだからね。
顔を埋める場所の見極めとか、タイミングとか!
お互いの信頼関係が成り立ってこそ!
行える愛情儀式なんだからね」
(※注意 そんな伝統文化はありませんから!!
厳重注意です!!
猫ちゃんに無理強いとか、敏感な場所や衛生上よろしくない
場所は、吸ったらダメですよ!
フィクションという事を念頭にご理解ください。
コ……コホン……。
心結さん!あとで女神指導室にきなさい!!
以上、女神様からのお願い&お叱りでした)
「………………」
軽くドン引きのラウルであった。
「そうですか……」
〈またミュー様の残念なモフモフ発作が、
出てしまいましたか。〉
ディーヤも遠い目になった。
その時、またもや心結の頭の中に声が響いた。
【ガォォォォ~グルッル……グルルルル
称号:無類のモフモフスキーの変態レベルが8に上がった!
スキル:動物魅了レベルが5に上がった!
新しい称号:猫吸い免許皆伝者 を手に入れた!】
「へっ?」
(いやぁぁぁぁぁ!!変態レベル2段階あがってるぅぅぅ)
また変な称号も増えてるし!
猫吸いに免許なんてないから!!
女神様!私が悪かったです。冗談が過ぎました!
だから称号は取り下げては…下さいませんか。
追伸:ディーノ様の首につけてあった、
ルビーのペンダントトップ
GPSの役目を果たしているらしいです。
やんちゃ盛りのお子さんがいる家庭には、
必需品ってところかしら。
何はともあれ……
坊ちゃんを探せのミッションは、無事にクリア
されたのであった。




