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そんな時呪いが解け、初めての王家の食事会に赴いたアディリナ様。
あのお向かいになられるアディリナ様のご不安そうな表情。
離宮の使用人たちがあの時ほど、唯一アディリナ様の隣につくことができるリチャード卿をうらやましいと思ったことはない。
きっとこの日アディリナ様は王家に正式に戻られる。
私たちは昔のように戻るだけだ。
でも、このつかの間でも主人の不安に寄り添ってあげたかったのだ。
「国王陛下から命令である。アディリナ様は本日をもって本宮へと移ることが決定した。」
食事会の後、国王直属の従者が離宮に訪れ、言い放った言葉に全員が納得した。
その命に応じて、アディリナ様が本宮へと移る準備をしている際だ。
「アディリナ様からの直接の命である。アディリナ様付の者すべてがそのままに本宮へと移ることが決定した。」
それこそだ。
離宮の皆が驚愕して、腰を抜かすものまで現れたのだ。
そう、あの日は今思い出しても余りにも忙しい日だった
何故ならば、1日で離宮から本宮への引っ越しを終えねばならなかったのだから。
ようやく引っ越しを終えたのはすっかり空が暗くなった時だった。
身体は酷く疲労しているはずなのに、サラはその日中々眠ることが出来なかった。
ベットに入り、部屋を見回す。
与えられた自室は、最初に城に仕えていた時とは段違いの部屋だった。
1人だけの個室、そして広いベッド。充実した家具。
離宮の使用人達に与えられた部屋は、かつて国王の寵愛を一心に受けたフェリシナ様の従者達が暮らしていた部屋だった。
それはかつて見た共に働いていた貴族の娘たちが使っている部屋よりも良いものだった。
今まで虐げられ、蔑まれてきた離宮の者たちの環境は一変する。
本宮へ移ってからは、周囲の者たちからの視線がかつて離宮へ移る前と全く異なっていた。
国王陛下の寵愛を一心に受けるアディリナ様。
アディリナ様に仕えることは、この王宮の中で最も好待遇となった。
周囲の者たちからの要望の視線。
かつて共に働いていた者たちから向けられるのは蔑む視線ではなく、嫉妬の感情。
離宮に移る前に、同じ時期に城に入った貴族の娘が言っていた。
『あなた、離宮に勤めることになったそうね。ふふっ…私は国王陛下に最も想われているナターリナ様につくことになったわ。』
そのフェリシナ様亡き後、もっとも優遇されていた第六王妃ナターリナ様は今はすっかり変貌しているようだ。
癇癪を起し、侍女に当たる。
顔に傷がついたものまでいたようだ。貴族の子女様にとっては致命的である。
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「リチャード卿、とてもお似合いですよ。」
アディリナ様の微笑むそのお姿が美しい。
ああ、この空間はなんて居心地の良いものだろうか
50話まで続けることができ、本当にありがとうございます。
昨日より新連載『公爵様が信じるのは奴隷だけ』が始まりましたので、素人の拙い文章ではありますが、良ければご覧ください。




