表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/37

第三十話 嫌いな家事ランキング

 就職と同時に一人暮らしを始めて早十ン年、もはや自分以外の人間と一つ屋根の下で生活することが想像できなくなってきた今日この頃。一人暮らしのメリットを満喫し倒しております。


 一人暮らしにはもちろんデメリットもある。友人が極端に少ない私は、一人暮らしでさらに人と関わる機会が減った。


 以前高熱で苦しんだ際、アパート近くの自販機まで這って行き、やっとの思いでポカリスエットを購入したことがある(アパートから歩道におりる階段を這って下っていたところ、隣の爺さんに「こんの悪魔()きめがァ‼︎」と悪魔祓いの儀式をされそうになったのには参った)。


 この時ばかりは孤独をひしひしと噛みしめたものだ。


 しかしメリットデメリットを天秤にかけた結果、私にとってこの生活は実家にいるよりも数千倍は快適なのである。


 白状すると、実家を出たのは家事をなるべくやりたくないからなのだ。いい歳をした社会人として当然だが、実家にいる以上は家族全員分の食事づくりなどを要求されるのが目に見えている。恥ずかしながら、実家から逃げてきたと言う方が当たっているかもしれない(田舎すぎて近隣に職がないのも理由の一つだが)。


 実家を出た身であろうと、生活していく上で家事は必要不可欠である。必要不可欠ではあるが、面倒くさいものであるのも事実だ。やらなくて済むのなら今すぐ全てを放棄したいのだが、代わりにやってくれる人もいないので嫌々やっている。


 今回は面倒な家事のランキングを考えてみた。




〈5位 掃除機かけ〉


 我が家の掃除は比較的簡単である。何しろ物が無い。特に片付けが上手なわけではなく、あれこれ購入する余裕が無いからだ。それに多くの物を置こうものなら、1Kの居住空間(狭いキッチン+四畳半)がたちまち足の踏み場もない有様と成り果ててしまう。結果としてミニマリスト的な部屋となっているのである。


 話は変わるが私は髪がとても多い。おそらく世界で十七番目くらいに多いと思っている。美容院で「一つの毛穴から五本くらい生えてますよ! スッゲー‼︎ 今まで髪を切った中で一番多いです‼︎」と驚かれたくらいだ。しかも多い・太い・くせっ毛の三重苦。


 そのせいで部屋に落ちているゴミの大半は髪の毛である。一体いつ抜けるのか知らないが、これでもか‼︎ というほど抜け落ちている(毎秒抜けているんではないか?)。


 少しでも掃除をサボると部屋の四隅に黒々とした毛髪がトグロを巻いてしまう。これほどの量が抜けるのに、なお頭には草むしりをサボった夏の庭のごとく毛髪が傍若無人にそよいでいるのだから、まるで生命の神秘である。


 話がそれた。何が言いたいのかというと、掃除機内のゴミパックがすぐに毛髪ではち切れてしまうのである。


 ゴミパックの掃除を忘れたまま掃除機を稼働していると、突然掃除機のフタが開き、ボーン‼︎ と大きな音を立ててゴミパックが飛び出して来るのだ。そうするとゴミパックと共に私の心臓まで口から飛び出ることとなる。掃除機の吸引力が弱まるという予兆があるものの、徐々にであるので鈍い私は気づかないのだ。


掃除機かけ自体は楽っちゃ楽だが、ゴミパック問題が少し面倒なのである。




〈4位 洗濯〉


 洗濯は一人分だと週二回ほどで足りる。しかも全自動洗濯機という文明の利器のおかげで、ボタン一つですすぎや脱水まで全てをやってくれるのだから非常に快適である。しいて言えば洗濯物を干す段階が少々わずらわしいくらいだ。


 この全自動洗濯機、我が家の家電の中では一番の新入りである。初代の洗濯機は二層式洗濯機で、十年以上も働いてくれた。一人暮らしを始めるにあたり母が選んでくれたのだ。


 母は二層式洗濯機の信者である。長持ちする、汚れ落ちが良い、融通がきく、などその良さの(とりこ)になっているようで、一生を二層式洗濯機と添い遂げるつもりらしい。


 母は家電を買うにあたりアドバイスをくれたのだが、家電量販店で「これがようござんす」と他の洗濯機には目もくれず小型の二層式洗濯機を指差した。私も深くは考えずに母に従った。人の家の洗濯機なんて普段目にする機会もなかったので、全自動洗濯機の存在を当時は知らなかったのである。


 初代の二層式洗濯機がぷすぷすと白煙を上げ寿命をまっとうした後、家電量販店で全自動洗濯機を目の当たりにした時は驚いた。その瞬間「あんれまァーーー‼︎‼︎」と絶叫して気絶してしまったくらいだ。


 二層式洗濯機時代には、水をため洗剤を投入しダイヤルを回し、洗いが終わると脱水槽に洗濯物を移してダイヤルを回し、また洗濯槽に戻してすすぎ、またまた脱水を行わなければならなかった。洗濯の間中、ナースコールを押しまくる患者に対応するナースのように洗濯機に寄り添わねばならなかったのである。


 時間が出来た分有意義なこと、例えば英単語の一つでも覚えたり、筋トレに励んだり――をやっているかというとそうではない。目的もなくネットサーフィンや食っちゃ寝して過ごしているのだから、全自動洗濯機導入によって自堕落で不健康な生活に磨きがかかったと言えるかもしれない。


 次の洗濯機は二層式に戻すのもありだな、と思っている。




〈3位 食事づくり〉


 食事は生活の基本だと考えている。私の場合、食べるために生きていると言っても過言ではないだろう。


 前にも書いた気がするが、毎日似たような食事なので献立を考える手間もないし、量も多くはないので食事づくりはそれほど苦痛ではない。何よりこの作業を乗り越えれば食べる楽しみが待っている! と考えれば面倒くささも吹き飛ぶのである。


 ただ、後述する通り洗い物をなるべく出したくないのである。材料を切るとまな板や包丁を、煮ると鍋を、焼くとフライパンを、盛り付けると皿やお椀を、食事という至福のひとときの直後に洗うハメになる。食事の後はゆっくりしたい。しかしゆっくりしすぎると洗い物をやりたくなくなる。そこで出来るだけ洗い物を発生させない工夫をこらすのだ。


 一番洗うのが嫌なのが油ギットンギットンのフライパンである。だがこれを使わんことには調理が出来ないので(電子レンジ調理も限界がある)、せめて食器を減らそうとフライパンから直接食べる。こんな姿を見られたら百年の恋も一瞬で冷めるだろうが、百年の恋をしているわけではないので全く問題は無い。


 次にまな板だ。狭いキッチンだと乾くまでの保管場所にも困るし、可能な限り使用しない方向で調理を進める。


 そのために、私はある技を身につけた。まず根菜なんかは皮を剥く。この段階でまな板は特に必要ない。そして材料を入れる予定の鍋やフライパンの上で、材料を卓球のサーブのごとく放り投げる。宙に浮いている内に包丁をメチャクチャに振り回すと、材料はいい感じの一口大となり鍋なりフライパンなりの中へ投入されるのだ。


 ただし、鶏モモ肉なんかは弾力があって上手く切断できない。目下特訓中である。(真似する人はいないと思うけど、絶対に真似しないでください)




〈2位 水回りの掃除〉


 少し乱暴だが風呂・トイレ・シンクなど水回りの掃除をまとめて2位としてみた。


 中でも面倒なのが、風呂上がりに毎日行わねばならない風呂掃除である。少しでも手を抜けば浴槽に不快な汚れがこびりついてしまう。


 昔は掃除が面倒なのと時間とガス代と水道代の節約のために、冬でも短時間のシャワーで済ませていたのだ。


 そうしたら平熱が32度になりホルモンバランスが狂いまくったのか、頭痛や肩こりやむくみ、スマホのタッチパネルが全く反応しない、うどん屋でネギ抜きを注文したのに2回連続で入れられる、寝ている自分の姿を何故か宙から眺めている、通りすがりの知らないお婆さんにお経を唱えられる、など散々な目にあった。


 体を温めるのは大切だと思い知り、それ以来必ず湯を張るようにしている。どんなに面倒であろうと、健康に勝るものはないのだ。




〈1位 食器洗い〉


 とにかく面倒くさい、の一言に尽きる。このせいで食事の後にくつろげないし、特に冬は寒い台所に立って凍えながら作業しなければならない。


 一人分なので短時間で済むことであるが、台所に一瞬でも立つのがもうダメなのである。食洗機を設置すれば解決するのかもしれないが、うちのキッチンにそのような面積的余裕など皆無なのだ。


 それにしても家事というものは水仕事が多い。中でも台所洗剤は手の油を、作物を食い尽くすイナゴの大群と同等かそれ以上に根こそぎ奪っていく感覚がある。後に残るのは不毛な砂漠と化し荒れに荒れたお肌であり、冬は紙をめくるのにもひと苦労なのだ。これも食器洗いが苦手な理由の一つだ。


 この作業が無くなるとしたら、人生の質が格段に向上するであろう。


 もし食器洗いをしなくて良いならば食事づくりにだって気合が入り、一流ホテルのシェフ顔負けの料理を毎日こしらえることだって出来るはずだ。


 もし食器洗いをしなくて良いならばお肌の潤いにより肌年齢が十歳以上若返り、もち肌アイドル略してもちドルとしてメディアで引っ張りだことなっているであろう。


 もし食器洗いをしなくて良いならば肌の水分量と共に現在の一億倍くらいの文章力が身に付き、ベストセラー作家となっているに違いない。


 稼いだ印税でタワーマンションの最上階を購入、シャム猫のあごを撫でつつ年代物のブランデーを傾け、極太の葉巻をくゆらしているはずだ。


 もし食器洗いをしなくて良いならば、人生の全てがイージーモードになるはずなのだ。


 そんなことを妄想しながら、今日も嫌々食器を洗っている。



ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ