ACT.2 兵庫 Street racers参戦前夜
『スキール音近いぞ』
無線が叫ぶ。
『来た!前は……金城だ…金城のS13!』
ゴール地点を過ぎ、駐車場で切り返す。
相手のFDが隣に留め、峠を指差す。
「上りでやろう」と言うのか、道路に出た。
「やってやろうじゃないの」
無線では色々と『やめとけ』とか『勝ちっこ無い』とか言われるが、そんな言葉は耳に入らなかった。
一人、雰囲気を察した奴が私らの前に立つ。
両腕を挙げ、暫くして下げる。
それと同時に、二台同時に、峠を登っていった。
短い直線の後、右コーナーの際を攻める。
やはり馬力差か、先に前に出たのはFDであった。
ブレーキランプが光ると共に赤い車体も光って見え、危険信号を発している様である。
下りではあまり関係無かった馬力差が、上りになった瞬間牙を剥いてくる。
一つ、また一つと、抜けそうで抜けない焦ったい状態でコーナーを過ぎて行く。
その度相手の車体が赤く光り、「お前には無理だ」と言ってきている様で、焦って行く自分がいた。
実際、相手がどの位の距離にいるのか、分からなくなってきていた。
「くそっ……我慢だ……耐えろ私……」
更に六つ程コーナーを抜けると、途中経過を見ようとするギャラリーが居た。
『まだFDが前だけど、金城がピッタリ着いてる』
その無線で気付いた。
私は未だ千切られて居なかったのだ。置いて行かれて居なかったのだ。
威圧を掛けているのは、相手ではなく、私の方であったのだと。
密かに威圧を受けていた相手はオーバースピードで侵入し、アンダーを出す。
『金城が……抜いた!抜いていった!』
過度な緊張と焦り、五月蝿い無線、腹と頭に響くエンジンの振動。全て揃って、頭が痛い。だが、それ以上に気持ちが良かった。
翌日
「よぉ、金城。昨日はよう勝ったな」
網走のテンションに合わせて相手するが、私の疲れは未だ残っているらしかった。
「ナビ、届いてる?」
「おん、来てたよ神戸から」
「交換してくれ」
「でも良いのか?最近新品にしたとこじゃねぇか」
網走がナビの封を開けながら、不思議そうに言う。
「兵庫Street racers出場する」
「え、え?ん?兵庫 Street racers?」
峠しか走って来なかった田舎の走り屋が第二首都に行くと言っているのだ。
混乱しても仕方が無かった。




