第三十九限 三馬鹿会合、只今進行中
俺はネッ友であり悪友である二人に現在進行形で詰められている。
場所は俺の宿……ではなく、この街のちょっとした喫茶店、「迷光喫茶 雛と翅」という店だ。隠れ家チックな見た目だったし、あまり知られていないのか、人は誰もいない。
中に居たのは店主らしきNPCの男が一人だけだったし、店内はかなり広いから隠れ家的な使われ方をされてるのかな? と感じた。
肝心の俺だが……まるで事案だ。
パッと見は女二人に詰めらてる男……だが、片方は中身男だし、もう片方は中身が終わってるので役得というより薬毒……いや、ただの毒だ。
どうにかして逃げ出せたならどれほど良かっただろうか……
それにしても……ユニーククエストに関する情報はなかなかな機密情報なんだよな……どう誤魔化していこうか……いや……そうだな……
「……わかった、わかったよ……! 全部話すからとりあえず離れろ!」
「それで逃げるとか言わないならね?」
「逃げない逃げない。ネイチャーじゃないからな」
「はぁ!? お前が詰められてる立場でよくそんなこと言えるな……!」
「まあキョートくんはネイチャーくんより前のめりな人だもんね〜」
「それ褒めてんのか……?」
少しの沈黙の後、俺は一応解放された。
ここから逃げ出しても良いんだが……今回はちと違う。
こいつらも利用させてもらうぜ……!
「最初に一つ言っておく。この話は外部に絶対に漏らすな。いいか?」
「おっけ〜、それくらいは約束するよ」
「情報ってのは大事なアドバンテージだからな。もちろんだ。早く教えろ」
俺は二人に、「ユニークモンスター」について、「童話が関係している」こと、そして、「もうすぐそのタイミング」であることを教えた。
「ユニークモンスター……?」
「なんだ? ネイチャー、もしかしてユニークモンスターのこと知らないのか?」
「え〜? そんな下準備もしてないなんてらしくないなぁネイチャーくぅん?」
「悪かったなぁ!? 無知でよぉ!?」
そうネイチャーが怒り混じりに声を荒げると、俺とファイアワークスは笑い上げる。
「……たく、しょうがないだろ! 最短でここまで来たんだから!」
「たしかにお前効率厨だもんな……」
「効率厨? 違うな。俺はただ時間を無駄にしたくないだけだ!」
効率厨じゃねぇか……
俺とネイチャーが言い合ってると、ファイアワークスが口を出す。
「てかさ〜、ユニークモンスターってさ、まだ誰も攻略したことがないって噂の激レアモンスターだよね?」
「そうなのか?」
「そこら辺の事前知識もなくてわかってないネイチャーくんのためにも説明してあげるけど」
「ムカッ……! お前ぇぇぇえええ!!」
「ユニークモンスターってのは、モンスターの中でも最上位と言われてる存在なの。たまに遭遇する可能性があるにはあるけど、同じユニークモンスターしか遭遇情報ないから、徘徊系のモンスターに居るのはそうなんだけど……」
「俺会ったことないけどな」
「そりゃそんな短い時間で会えるわけないでしょネイチャーくん」
「つまり、そんなにも"出会うことすら難しい"、"徘徊系ですらなさそうな"ユニークモンスターの情報をどうして教えたの?」
「……あ、キョート……お前、そういえばさっき言ってたよな。"もうすぐそのタイミングだ"って。お前、まだ何か隠してるのか?」
ここまでずっと黙っていた俺は、ようやく口を開く。
「……あぁ、隠してる。単刀直入に言おう。お前達を頼りたい」
…………
………………
……………………
静寂が流れた。
「おい、聞いたかお花狂い。キョートが俺たちに頼りたいだと」
「どういう了見かわからないけど、それなりの態度ってもんが必要なんじゃなぁい? キョートくーん」
「うるせぇなぁ! こっちだけが一方的に情報搾取されるくらいなら、お前達も当事者になれってことだよ!!」
「……それ、大丈夫なのか?」
ネイチャーが言う。
「大丈夫って、どういうことだ?」
「だってそれ、トップシークレットなんだろ? お前と同じクエスト受けてるその彼女……じゃなかった、女友達とかには無断だろ、どうせ」
「んあぁ……たしかにな……」
たしかに俺以外にも何人かそこまで辿り着いてる奴がいる。そいつらにとってはこの二人は邪魔な存在かもしれない。
ただ、俺と、ミライ……そしてレイにとってはそうではない。
「俺は、お前達のことは信用してないが、信頼はしている」
「珍しいね、キョートくんがそんなこと言うなんて」
「それに、俺は一度ユニークモンスターと対峙したことがある。だから分かるんだよ。あいつらは並大抵のプレイヤーだけじゃ勝てない」
「お前……ユニークモンスターと戦ったのか?」
「ああ、負けたけどな。だからこそ、俺が最もよく知ってる奴ら、悪代官軍師様と戦闘のみ日本最強男、お前達の力が必要なんだよ」
「なんか悪い気はしないね。呼び方は気に食わないけど」
「俺も同じく。だからお前機密情報って言ったのか」
「あぁ、頼む。力を貸してくれ」
「うーん……いいよ〜」
「俺もいいぜ。少し刺激が足りないなって思ってたところなんだよ」
「ネイチャーくん、君は始めたてなんだからまだまだいろいろ体験できるでしょ〜?」
「良いだろ! それくらい! 全く、初心者に優しくねぇなぁお前らは!」
「とりあえず、よろしく頼む」
俺は右の手を拳にして突き出す。
「ああ、任せとけ。プロゲーマーの力ってものを見せてやるさ」
ネイチャーは右手をパーにして出す。
「もちろん私もするよ〜、キョートくんには借りが作れそうだし、何よりユニークモンスターを倒したいからね」
お花狂い……いや、ファイアワークスは右手をチョキの形にして出す。
「……なんでお前らじゃんけんしてんだ……普通ここは拳突き出して円陣みたいなのするところだろ!」
「だって辛気臭いじゃん、私たちは楽しむことが目的なんだし、気楽に行こうよ」
「試合の時は勝つ気で行ってるんだ。ここくらいは気楽に行こうぜ」
………ははっ。
「そうだな……やっぱお前ら、最高に頭おかしいわ」
「お前も同類だろキョート」
「……そうかもな!」
それぞれの突き出した手が、コツンと当たる。
これが俺たちなりの活の込め方なのかもしれない。
……まあ、ほんとにユニークモンスターが居るかはまだ不明なんだけどな。
とりあえずネイチャーとフレンドになった。
「そういえばユニークモンスターに挑むってことだけど……二人とも、レベルはどれくらいなの?」
「俺は39だな」
「俺は21……だな」
「え? 21? 低っ」
「しょうがないだろ! 始めて数日なんだからよ!」
「えっと……キョートくんが39で……? ネイチャーくんが21……? それでユニークモンスターに勝てると思ってるの?」
「「ごもっともです……」」
ファイアワークスはニコニコした顔で俺たちへと迫る。
「キョートくん、ネイチャーくん、魔導学府の方面まで戻って……レベリングしよっか!」
「「まじかよ……」」
「最低でも50レベルは超えておかないとね!」
今もなお笑顔を壊さないファイアワークスに一抹の恐怖とウザさを感じる。
くそっ……こいつの笑顔がウザい……!
どうやったらそんなウザい顔ができるんだ……!
女優故の演劇能力ってか!?
「キョートくんのは割と早くに上がれそうだし、ネイチャーくんの方をまずは重点的にしようか。ささ、早く行くよ。今日中には魔導学府に着いてないといけないからね!」
なんでそんな思い切りがいいんだあいつは……
俺たちはここから、数時間をかけて魔導学府まで戻ることになった。
かくして、俺は二人の心強い……? 仲間を手に入れた。
そういえば何か忘れていたような……まあいいか……
◇◇◇
「へっくしゅん!!」
「なんや……誰かわっちの噂でも流したか……?」




