第十九限 主人公、異変に気づく?
ん? 今聞き捨てならない言葉が聞こえてきたな……
まあそんなことはどうでもいい……遂に出会ってしまったのだ。二人の変人が……
「どうも、ミライと言います」
「レイでしゅ」
「どうも〜、ファイアワークスで〜す。気軽にファイアとかで呼んでね〜? ミライちゃんとレイちゃんね? よろよろ〜」
こいつ……めっちゃ馴れ馴れしいな……
「ところでさ〜一つ聞きたいことがあるんだけどさ〜?」
「あ、私も聞きたいことがありまして……」
二人の変人は互いに目を合わせる。
なんだ? 辻斬りでもしてるのか?
そう思うような間合いだった。
「ふーん……なら、この話は後にしよっか! 今はほかのことを知りたいし……」
そういうと、今度はレイの方へと視線を向けた。
「キョートくん、この子、NPCだよね?」
「んあ? そうだが……それがどうしたんだ」
「これが……はぁ……」
少し頭を傾げ、ため息をつく。
「あのさぁ……君はもう少し危険性ってのを考えないといけないでしょうに」
「はぁ?」
何を言ってるのかさっぱりわからない。何の危険性? まさか、NPCが裏切るとかか? そんなことあんのか?
そう考えている俺に、理由についてファイアワークスが話す。
「どうやらキョートくんは分かってないようだけど、ミライちゃんは分かってる?」
「え……わかってないです…… 多分」
「おっけー、なら説明してあげるね」
そういうと、ファイアワークスは説明を始める。
「まずさ、NPCとの同行はいろんなプレイヤーがしたことあるのよ。チュートリアルでもするからね。」
そうだな。俺はティアさんがしてくれた。
「そして、NPCが話す。これもしてる人は多いのよ。一人のNPCを信奉してるクランとかもあるくらいだからね」
「ふむふむ」
「んでもね、"NPCと共に冒険に出る"。これをしている人はあまり居ないの」
「ほう?」
「居ないことはないんだけど、トッププレイヤーとか、全然走る人……くらいなんだよね。やってる人は」
「つまり結論として?」
「目立ってるよ。それも掲示板でね」
「「掲示板?」」
俺とミライが同時に答える。
「昨日知ったことなんだけどね、ここにいるレイちゃんって子。話題になってるんだよ」
「でしゅ?」
「なんでまた……」
「クランドでケモ耳少女と歩いている女とうさぎ耳の男が歩いていたって噂があってね。流石に画像とかはなかったけど、一発で分かったよ。キョートくんうさぎ好きだもんね?」
「……それで?」
「だから注意した方がいいって言ってるんだよ。みんなの注目が集まってるよってね」
なるほどね。一応善意として受けておくか……
「ありがとな……でも、俺たちは今大事なことをしてるんだ。ま、と言ってもただのミライの強化だけどな」
「ちょっと! 言い方ってものがあるじゃん!?」
「なるほどね……ありゃ、もうこんな時間……」
そう言うと、ウィンドウが出現した。
ファイアワークス とフレンドになりますか?
うわ、なんか来た……
とはいえ、断る理由もないので承認した。
「じゃあまた語ろうね、ミライちゃん」
「おい」
「あ、はい。また今度!」
そう言うと、ファイアワークスはすぐさま帰って行った。
「あの人、優しい人じゃん! まさかキョートに女の子の知り合いが居たなんてね!」
「うるさいな……別にいいだろ居ても」
とはいえ、俺の危惧したことにはならなかったか……
二人での策謀は俺の胃を痛めかねない……やめてほしいものだ。
「そういえば、なんだけど」
突然、ミライが話しかけてくる。
「ん? どうした?」
「多分だけど、あの学校、まだまだ奥が深そうなんだよね」
「というと?」
「私たちの知らない技術……まだ出回っていない技術がポンポンと出てくるんだよねあの学校」
話を聞くと、どうやら魔法には属性があって……だとか、知らない属性が出てきた……とか、そう言う話だった。
そもそも俺は魔法に属性があることすら知らなかったぞ。まあ使ってないからなんだけども……
「なるほど……あと12日だっけ?」
「11日かな。そこまでにあと6つの七不思議を見つけないと行けないっぽいんだよね」
「なるほどな……」
俺たちが話していると、レイが口を開く。
「キョートさんはどうするでしゅ? 私たちが学校行っている間は……あの人といるでしゅ?」
「いやぁ……それはないかなぁ……流石にレベル上げとかしないといけないしなぁ……なんかお前らレベル上がってるし……」
いつの間にかミライもレベル30の大台を超えてもうすぐでレベル40に到達しそうな勢いだ。
レイも多分だがそれくらい成長しているんだろう。
ということは、うかうかしていると大幅に抜かされてお荷物になるというわけだ。それはまずい。
「まあ、とりあえずはレベル上げとかしつつ……後はあれだな、外からお前達の言う七不思議ってのを探すわ」
「探せるかな……まあ、多分ないだろうけど、魔導学府の歴史とか探してくれてもいいんだよ?」
「あー、それはアリだな……歴史なら詳しいやつを知ってるからそいつらに聞くわ」
「え? 友達できたの?」
「ちげぇよ! 前言ったクラン探索者の奴らだよ!」
「あー、そゆことね」
「そろぼち私たちも待ち合わせの時間だから行くね〜」
「おう、レイも頑張れよ」
「でしゅ! がんばるでしゅ! キョートさんも頑張ってくださいでしゅ!」
「あぁ!」
と言うわけで、解散した。
さて……明後日だっけな……あの人たちとの談合は……
俺はレベリングをするために街のギルドに行きクエストを探しに行った。
その前に、飯を食べ、お風呂を済ませた。
俺は、準備万端の状態でログインする。
「さて……レベリングするかぁ……」
調子に乗った俺は、5日の依頼を同時に受けるという無茶をした。そのおかげでレベルは上がった。が……
「はぁ……はぁ……つかれた……」
くっそ疲れた……調子に乗って5つの依頼をするとかしなきゃよかった……
「もう夜1時か……流石に寝ないとな……」
あいつらはまだやってんのかな……わかんねぇや……
そう思いながら寝ようとした時、俺は一つの音を聞いた。
それは、学校から鳴っていた。聞いたことは何度かあったが、それはどこか禍々しかった。
それは、"学校のチャイム"であった。
「こんな時間に鳴るもんなのか? 変な学校だな……まあ、とりま寝るか……」
俺は宿屋に行き、ログアウトした。




