14 十二番隊の死闘4
「竜……!?」
赤いオーラに包まれたヴァイツは、全長10メートル近い竜に変じていた。
「こっちのほうが破壊効率がいいんでな……だが人間相手にこの姿をさらすとは、屈辱だ」
ヴァイツがうなった。
「まず、お前らから踏みつぶしてやるぜ!」
巨大な脚を振り上げる赤竜。
「逃げろ、ウェンディ、サーシャ!」
ジュードが後方から【アローブレード】を放った。
先ほど不意打ちで魔神の動きを一瞬止めたスキルだ。
それが全部で三つ。
次々と放たれた斬撃型の衝撃波が魔神を襲った。
が、竜と化した今のヴァイツは、微動だにしない。
うるさげに頭を振って、その三つをすべて吹き散らす。
「うぜぇ!」
叫び、巨体ひねって尾を繰り出した。
長大な尾はさらに数倍にも長くなり、うねりながら伸びていく──。
「が、あぁっ!?」
ジュードの苦鳴が響いた。
「ひいっ……」
ウェンディは思わず息を呑む。
ジュードは──。
胴体部がほとんど千切れ、数十メートルも吹っ飛ばされていた。
地面に叩きつけられ、何度かバウンドして動かなくなる。
確認するまでもなく即死だろう。
「ジュードさん……」
常に飄々としていて、どんな過酷な戦場でも彼だけは何事もなかったかのように生還してくる──そんなイメージのあった先輩騎士の、あまりにもあっけない最期だった。
「はっ、やっぱり脆いじゃねーか」
ヴァイツが笑った。
「き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
クルスが絶叫した。
涙を流しながらクロスボウを構える。
「よくも、ジュードを! 【バーストボルテックス】!」
青白い光芒を放った。
一定の溜めが必要な代わりに、絶大な威力を発揮する遠距離攻撃スキル。
「ふうっ」
が、ヴァイツの吐息だけで、青白い光芒はあっさりと消し飛ばされた。
「なっ……!?」
「弱いな。弱すぎんだよ、お前ら」
ヴァイツが口を開く。
そこから放たれる風圧──風のドラゴンブレス。
「ぐあっ……」
クルスが吹き飛ばされる。
ジュードの側に叩きつけられ、同じように動かなくなった。
「これで二人。次はどいつだ?」
「つ、強すぎる……化け物、め……」
ウェンディは全身から血の気が引くのを感じていた。
今までに戦ったどんな相手も、比べ物にならない。
すさまじいまでの恐怖感とプレッシャーだ。
「このままじゃ、全滅する……!」