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36. 苦難の旅路

 秋の長雨状態……台風の影響で曇の日が多いですが、皆様体調にはお気をつけください。瀬上は度々お腹を壊しております。


 映画「オデュッセイア」を見てきました。「人物名」=「オデュッセウス」、「オデュッセウスの物語」=「オデュッセイア」ですね。


 感想を総括すると、「映画というエンターテイメントをよく知る監督が作った良作」でした。


 ご存知かと思いますが、オデュッセイアはトロイ戦争に参加した智将オデュッセウスのその帰途での苦難を描く物語です。この映画は、画像的には映画館で見る事を前提に効果的に作られています。


 映画館で見る映画というのは、他の画面で見るものと没入感、臨場感が段違いです。トロイ戦争のクライマックスである夜戦も描かれますが、映画館の大画面で、その場の人物目線で描かれる映像は、緊迫感を伝えてきて観客を興奮させます。大画面で目の前に見せられる乱戦、その中で相手を圧倒していく様は見る人を興奮させます。こうして戦場で兵達はコロシに酔って行くんだな、と朧げに感じました。戦争映画の乱戦シーンを映画館で見るというのはとても危険だと思いました。


 また、キュクロプス、スキュラなどに襲われるシーンの「どうなってんのこれ」感が観客を混乱させ、現場の人間の混乱を思い知らせます。このあたりも映画館で没入していないと感じない事です。


 あと、荒天の中、波を蹴立てて進むギリシャ時代の軍船を甲板から舳先に向いたカメラが映しますと、現場の人間はたまったものではないですが、見ている観客は盛り上がりますね。何か、疾走する漁船の舳先に立ってみる海はとても高揚させるものではないか、と感じさせます。


 という映像効果はともかく。印象に残ったのは三人の女優です。名前知りませんが。


 荒天の海で船が破壊され、ただ一人生き残り、砂浜に打ち上げられたオデュッセウスを女神カリュプソーが助け、世話をします。モデルの様に格好いい女性です。ハリウッドスターだもん。


 その格好いい女性が砂浜を歩くオデュッセウスの後を歩きます。その二人の距離がやがて来る離別を予想させます。切ない。


 二人目は女神アテナ。突然現れては何か言いたげな表情で一言二言告げて消え去ります。アジア人?癖のある顔をしていますが、その何か言いたげな抑えた演技がぐっときます。こういう大人し気な人にどうしても感情移入しちゃいます。私は。


 三人目は魔女キルケ。モブっぽいおばさんなんです。でもヤバさが隠せません。その表情がたまらない。良い役者さんなのでしょう。魔女キルケの愛情こもった指圧マッサージ。コワイ(怖いではなくコワイ)。そして遅れて来たオデュッセウスとの対峙。穏やかに張り詰める空気も良い。


 と言う訳で、映像的にも魅力的、人物の演技も魅力的…オデュッセウスはイタケの王ですので(小領主という感じですが)、威厳のある中年という風なので、演技的には特に印象に残らなかったな……な映画でした。


 ただ、本作オリジナルなのでしょうか?「既存のモラルを無視して自分の利益を追求する者達が文明を破壊し暗黒をもたらす」というメッセージがありました。


 トロイを攻略する政治的な目的として、交易路の支配があげられました…似たような状況がありますねー。


 あと、本作を某イーロンが批判しているんです。美女ヘレネを黒人女優にやらせているのがポリコレだと。現実世界で夢を叶えているイーロンがこんな娯楽映画に態々文句を言う意味があるのでしょうか。


 もちろん、この映画の企画段階で政治批判を考えていたとは思えませんし、この点に注目したレビューは無いから、単なる私の思い違いかもしれませんが。


 まあ、ともかく。カリュプソーみたいな(ありきたりだけど)別れを予感させる恋愛もの、ちょっと書きたくなる映画ではありました。でも、むしろアテナみたいな地味な感情を書いちゃう瀬上ですが。


 という訳で、映画「オデュッセイア」、お勧め出来ます。

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