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いかにして彼は生きると決めたのか  作者: 冷製春雨スープ
再会の温度、初恋の再定義
8/10

7話

ゆかりは、屋敷から宿屋に向かうマサオミの後ろ姿を見守っている。

姿が小さくなっても、見えなくなるまで外で見守り続けていた。


マサオミの姿が見えなくなった時、普段の当主としての表情が崩れ、ゆかりの後方に控えていた側仕えに話しかけた。


「.....マサオミ様。私の作った大福を美味しいって、また食べたいって....」


側仕えはその姿に少し目を見開き、微笑んだ。


「そうですね。ゆかり様」


ゆかりは振り返り、いつもの余裕そうな微笑みでも、冷たい表情でもない『ゆかり』としての笑顔を浮かべた。


それはもう幸せそうに。とても嬉しそうに。


「明日は何をお出ししましょう!」


側仕えはゆかりのそんな表情を初めて見た。

彼女はゆかりが13の頃から仕え始めた。その頃から当主になり、今現在に至るまでずっとゆかりの側にいた。それでもそんなに幸せそうな顔を一度たりとも見たことがなかった。


側仕えの知っているゆかりは、日中は当主として気を張っていて、プライベートではいつも何かを心配している。そんな人だった。


だから心配していた。


何を憂いているのか知らなかった。ゆかり様は表に出してくれないから。

だから側仕えは心配だったのだ。どうにかしてあげたいと思っていた。何かできることはないかと常日頃考えていた。それでも何も見つからなかった。


それがどうだ。


「そうです!確かいちごがありましたね!大福の中にいちごを入れたら喜んでくれるでしょうか!」


「そうですね。大変喜ばれると思いますよ。」


彼が来てから、ゆかり様はずっと幸せそうだ。

ずっと表情が豊かだ。

それが側仕えには、何よりも嬉しいことだった。


「今日も大福を作りましょう!料理人はまだいるでしょうか....?」


「門を出たところは確認していません。まだいると思いますよ。ゆかり様」


「そうですか!なら行きましょう!」


「かしこまりました」


ゆかりは幸せだ。

側仕えもそんなゆかりを見れて幸せだ。



でも、そんな幸せに永遠はない。



それは突然起こった。

突風が吹く。とても強い風だった。

側仕えはスカートを片手で押さえ、目を少し瞑る。


目を開ける。


「ゆかり....様?」


側仕えの目の前からゆかりが消える。

周りを見渡す。


「ゆかり様!!」


遠くに遠ざかるゆかりの姿が見える。

肩に担がれ、口を布で覆われていた。





突然腹部に感じる衝撃


「うぐっ.....」


視界が急加速する。流れるように景色が過ぎ去っていく。

側仕えの姿があんなに小さい。


「....ああ、確保した。今向かっている。」


体に感じる風が冷たい。


「う、うぅううゔぅ」


口が覆われているのか声が出ない。


ゆかりは理解した。

私は今連れ去られている。


ゆかりは理解した瞬間、足をバタつかせ、身を捩り抵抗する。


「暴れんな。法術『苦痛の電撃』」


「んグゥぅうううう」


痛い。

痛い痛い痛い痛い


苦しい。


ゆかりに電撃が流し込まれる。手足が痙攣し、動かせない。身も捩れない。

一切の抵抗を封じ込められた。


ゆかりは悟る。自分の力では、この状況をどうすることもできないと


ゆかりは法術の才がない。武術の才もない。

故に抵抗する手段は暴れることだけ。

それも今封じられてしまった。

ゆかりは打つ手がなくなってしまった。


ゆかりは考えてしまう。戦う才はなくとも、人よりも優秀な頭脳を持って生まれてしまった弊害である。


考えることをやめられない。


私はどうなるの?もしかして殺されるの?


やだ。やだやだやだやだ


死にたくない。死にたくない!


ゆかりの内心は荒ぶっていた。

幼児のように呻き、恐怖に支配される。


なんで....なんで...

やだ。まだ終わりたくありません。死にたくありません!


そんな中、マサオミの顔が頭に浮かぶ。

涙が溢れてきた。


やっと会えたのに

10年......10年待ち望んでいたのです.....


まだ話したいことがあるんです....

側にいて欲しいのです....


想いが涙と共に溢れてくる。


明日、明日も彼に大福を作ってあげたいのです....

彼の顔をまだ見ていたいのです....


望みが頭の中をよぎり続ける。

こんな状況なのに、彼のことで頭がいっぱいになっていく。


私はまだ、貴方に何があったのかも知らないのです!

なんであの時、嘘でも再会を約束してくれなかったのかも教えてもらってないのです!


それに


それに!!


私はまだ貴方に、愛してるって伝えていないのです!!


ゆかりの体はまだ動かない。抵抗することができない。


死にたくない。


死にたくない。


彼といたい。


彼と一緒に生きていきたい。


でも、ゆかりは諦めていなかった。死ぬのが怖い。それでも彼に会えなくなる方が怖かった。

苦しい。涙は止まらない。

でも諦めてもいなかった。


だからゆかりは叫ぶ。口に布が覆われていて、言葉になっていないとわかっていても


「うむううううぅう!!」

助けて


「むぐううううう!!」

助けて


「うるせぇよ!法術『苦痛の電撃』!」


いたいいたいいたいいたい。

くるしいくるしいくるしいくるしい。


それでもゆかりはやめない。


助けて!!


助けて!!


ゆかりの口を覆う布が少しずつズレていく。


遠くから、ドガンと言う轟音が聞こえる。

ゆかりはそんなことを気にする余裕はない。

ひたすらに叫び続ける。


布がズレ、声が出る。


マサオミ様!!


「助けて!!!!」

明日8話と9話をいっぺんに出します。理由はそっちの方が「なんかいいかなぁ」と思ったからです。

はい。なんとなくです。

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