表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウル・コレクトター『魂の回収者』〜〜裏切られた神の復讐劇〜〜  作者: 瀬〆駿翔
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

裏切られた女神

「私は、神だ――」


 白髪の少女が、誰にも届かないほどの小さな声で呟いた。


 サファイアのように透き通った瞳は、光を失っていない。だが、胸の中心を、銀の剣が貫いている。白い肌ごと突き抜けた刃は、心臓の鼓動を奪う位置で止まり、呼吸をするたび、身体の中から温度が抜けていくのが分かった。痛みはもうない。代わりに、世界が遠ざかっていく。


 視界の端で、四人が立っている。


 二人の男と二人の女。どれも戦い慣れた目をしている。そして勝利を確信した油断と冷たさがあった。


 赤髪の女は、薄く笑った。


「……神? まだそんなことを言うのね」


 白髪の女は答えない。答えるだけの余力がないからではない。何を言っても意味がないと知っているからだ。


 彼女の背後に、淡い光が滲んだ。


 魔法陣。


 線は細く、しかし精密で、世界の法則を直接引き剥がすような形をしていた。魔法陣が広がるにつれ、空気が鳴った。圧力が生まれ、風が吹き荒れ、四人の衣が煽られる。


 褐色肌で紫の瞳の女が、余裕な顔で言った。


「――まだ動けるんだ」


 黒髪黒目の大男が、大剣を片手で構え直し攻撃に備える。


「止めろ。魔法を完成させるな」


 だが遅い。


 瞳が、ゆっくりと真紅へ染まった。血ではない。怒りでもない。何かを“起動”する時の色だ。


 青髪の青年が、わずかに顔色を変える。


「……攻撃じゃない。あれは――」


 少女の身体が、光に溶けるように消えていく。

消える、というより、ほどける。


――この魔法は最終手段、しかもこれは不完全だ。


 傷が深すぎる。(ソウル)をまともに保てない。

 それでも、やるしかない。ここで終われば、私の存在は奪われる。


 光の中で、少女の魂が裂けた。砕け、細い糸が引き千切れ、無数の欠片が別々の方向へと消えていく。


「…必ず戻る」

 

 身体が、光の粒になって崩れ始める。神にとって肉体など付属品にすぎない、魂さえあれば復活できる。だが彼女は肉体と同時に“(ソウル)"もバラバラになってしまった。


 その言葉の後、残ったのは沈黙だった。


 褐色の女が歯噛みする。


「ちっ、逃がしたか……!」


 黒髪の男が低く問う。


「どこへいったか。わかるか?」


 青髪の青年は、割れた空間を睨みながら言った。


「あれは転移ではないです。“魂”だけを別の世界へ送ったようですね。……ですがあれだけ弱っていれば魂はもう保たないでしょう。魔法が正常に動作したかも怪しいですね。」


 赤い長髪の女が、床に落ちた銀の剣を拾い上げた。刃には血がついているのに、銀は曇らない。むしろ、血を拒むように淡く光っていた。


 彼女は嬉しそうに、そして軽い調子で笑う。


「まあいいわ。あんなに弱っていて、逃げたところで何ができるの?」


 剣を指で弾く。澄んだ音が鳴った。


「それより――“地球”が手に入ったんだもの。そんなこと、どうでもいい」


 四人の視線の先に、誰もいない空間が残る。


 ただ、魔法陣の名残の光だけが、空間にうっすらと焼き付いていた。


 それは、ひとつの“道標”だった。


 彼女が戻るための。


 あるいは――誰かが追うための。


◇◇◇◇


 そして、女神の“魂”は、世界の境界を越え、世界の外へ落下していく。

知らない世界へ。知らない時間へ。知らない場所へ。

最後まで書きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ