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本編 最終話 貴方が大好き

「ククッハハハハハハハ‼」

「へ、陛下⁉お気を確かに‼」


いつもほとんど話さず、慎ましやかな王妃様も目を見開いて叫んだ。


王妃様の心配を軽く手で制しながら、まだ笑いが少し残っている陛下が目元を拭い、ある人を呼んだ。


「リント・カーティス‼‼」


「はい、陛下」

突然名を呼ばれて驚いてもいいはずなのに、リントはにっこりと余裕の笑みで返事をした。


何⁉何でリントが!

え、まずい状況⁉


王子の婚約者を篭絡したとかそんなことを言われるのだろうか。

だとしたら違う、いや、違わないけど、6年前から多分私はリントのことが好きで、でも私達は特に何も無いし……。



「其方の仕業だな」

「えぇ?何のことでしょうか?」


華麗にとぼけるリントに陛下は意地の悪い顔をした。



「不思議なことが起こっておる。


ここに居る王妃や当事者のクライス、エメルダ、そして上位貴族の大半と下位貴族の過半数、側妃や第二王子までもがなぜか一斉にクライスとエメルダの婚約の破棄を求めてきている。


全て其方が帰国してから始まっている様に思うが偶然か?」



「不思議なこともあるものですね。ですが、ここまで偶然が重なるということはある種の天命と判断してもよろしいかと思われます」



つ、強い‼

そしてリントどんだけ動いてたの⁉

普通に怖い‼


リントは普段通り、ニコニコしながら返答する。

その姿を陛下は怒るでもなく、また豪快に笑った。


「普段なら我が息子の婚約者を狙うなど罰を与えてもよいが……ここまでやられれば爽快過ぎて笑えてくるわ!留学先でも何やらしていたらしいな?」


「特に記憶にありませんが、どの件でしょうか?」


「フッ、其方が見学に加わってから、金の採掘方法を変える意見が通る様になったと密偵から聞いておる。クライスに王女をあてがうためか?」


「えぇ?私はただの一見学者ですよ?特に何もしておりません」



絶対嘘‼

私でもそれは分かる‼‼


私は二人のやりとりにハラハラしてしまうが、思いのほか二人は楽しそうだ。



「まぁよい!クライスは王女のお眼鏡にかないそうか?」


「私個人の浅はかな意見となりますが……殿下の努力次第かと。王女は純粋に腕の立つ者が好みのようです。

そして、国庫に余裕が出来ましたので国王は王女の望む所に嫁がせるようです。


……ただそうですね、天が味方してくれるというのなら婚約の事は難しくとも金の輸入額を3年契約で現在よりわずかにですが下げることは可能かと」



「ハハハ‼そうか!天命に従えば、ということか‼なら従うしかあるまい。エメルダ、クライス!これから婚約破棄の書類をもたせる、本当に良いのだな?」


「はい!よろしくお願いします!」

思っていたより元気に答えてしまって、陛下が気を悪くしないかドキドキしたが、陛下は至って上機嫌だった。


「はい、異論はありません」

殿下も静かに頷いた。




そうして、持ってきてもらった書類にサインをして私と殿下の婚約は破棄され、私は公爵家に帰った。


おしまい。

















じゃない‼まだ終わらないで‼

私、まだリントに返事してない‼


と、いうことで花の業者を家に呼び、私はリントに渡す花束を選んでいた。


「お嬢様、なぜ女性側が花を渡すのですか……」

若干呆れた様に侍女が言うが、私はそれどころではない。


だって、手ぶらで行くのって何か恥ずかしいじゃない?

でも、リントにいつ会いに行こう。


結局、謁見が終わり次第話そうと思っていたら金の輸入の件で陛下や宰相と話し込んでいた。

仕事をしているリントは普段と違ってキリッとした可愛さが……て、そうじゃなくて、いつ終わるのかが分からない。

明日空いているかも分からないし、そうこうしていてまた隣国に行ってしまったら嫌だ。


このまま怖気づくのはもっと嫌だ。

でも怖い、と思うから私は花を渡すことにした。


花を贈るという理由があれば、花が傷む前に近日中に是が非でも会いに行かなければならないから。



「何色になさいますか?」

「えっと……」


まずい、リントの好きな色が分からない。

だからと言ってリントの瞳の色は緑だし、髪も銀髪だから花には適さない。


「……お嬢様は綺麗な赤色の瞳をしていらっしゃいます。赤はどうでしょうか?」

「赤……」


私の瞳の色と同じ色の花をあげるのって何かこう……私をあげる!みたいで恥ずかしい‼‼


「赤はちょっと……あ!あの!選んでいくので協力してもらえませんか?」

「え?えぇ」


私は迷いなく並べてある花を手に取っていった。







花を選び終わり、リントに明日会えないかという手紙も出し、私はゆっくりと夕食後の紅茶を楽しんでいた。


リント、気に入ってくれるかしら……。


今、思い出したが出会った当初、リントに好きな花を聞くとどれも同じと言っていた。

花があまり好きじゃないのかもしれない。


まぁでも?私が会うための口実の様なものだし?

……うん、考えるの止めよう。



ゆっくりしていると軽いノックが聞こえた。


「お嬢様、リント・カーティス様がお越しです。休まれている様なら明日出直すとおっしゃっていますが、どうされますか?」


「リントが⁉えぇッとはい!応接室に通して⁉」


私は心臓が跳ね上がりながら身支度を整えた。

まだ湯あみをせず、ドレスのままだったので身だしなみは色々とセーフだ。


机に置いてあった色とりどりの花束を持ち、応接室に向かった。


ノックをして顔を出す。


「エメルダ‼会いたかった‼」


可愛いいいいいいい‼‼‼


何だか久しぶりに見る満面の笑み。

これでこそリントよ‼



「リント!私も会いたかったわ。それと、さっそくだけど貴方のこの前の告白の返事をさせてもらっていいかしら?」


ビクッとリントが姿勢を正す。

あ、お互い立ったままになってしまった。

まぁでも、こういうのは怖気づく前に言わないとね‼



スッと私はリントに花束を渡した。

「エメルダ?」


「リント、私はこの色とりどりの花みたいに、掴みどころがなくていつも可愛い貴方が大好きよ。私でよければ結婚を前提にお付き合いしてください!」


「…………この花束、俺を想像して作ったってこと?」


う、嫌だったかな。声の調子はいつもと同じだけど……。


「そ、そう……なんだけど、もし花が嫌だったら持って帰らなくてもいいし、その……」


「ありがとう、エメルダ、花束とりあえず貰うね?」

リントは私から花束を受け取るとすぐに脇にあったテーブルに置いてしまった。


「リント、その……」

私がしどろもどろになると、急にリントに抱きしめられた。


ぎゅうぅと抱きしめられてちょっと苦しい。

でも、リントって思ったより大きかったのね、力が強いのねと別のことを考えてしまう。


いや、リントのことだから別ってわけでもないんだけど。


リントは私を抱きしめながら、耳元で囁いた。

「花、ありがとう。すごく嬉しい!エメルダはいつも俺に初めてをくれる。もう絶対に誰にも渡さない‼」


「え?えぇ、喜んでもらえてよかった、花束をもらったの初めてだったの??」

「へへへ、そういうことじゃないよ」


可愛い。

眉を下げて、嬉しすぎて気の抜けたリントの顔は本当に可愛い。


私はリントの腕が緩んだ隙に、彼の胸を押した。


「エメルダ?」


心配そうに見つめるリントに微笑みかける。

そしてゆっくりとリントの首に手をまわして私がリントの頭を抱え込む様に抱きしめた。

ずっと触りたかったサラサラの髪をこれでもかと撫でまくる。


腕の中からリントのクスクスと笑う声が聞こえた。


「大好きよ、リント」

「俺も大好きだよ」










テーブルに置かれた色とりどりの花束。

花には色々と花言葉がある。


『好奇心』『喜び』『楽しみ』『幸福』『希望』。


全てが笑顔にまつわる似通った感情の言葉。



リントがエメルダに出会うまで違いが分からなかった言葉。


でも今は、全ての違いが分かるその言葉の数々を見てリントは心の底から温かい『愛しい』という感情に満たされていた。


ここまでお読みいただきありがとうございました!


本編はこれで終了となります。

次は番外編、エレンとクリス、アリスのその後です。


番外編は作成中のため、近日中に投稿します。



次回作検討中のため同じテンションでいくか、もう少し真面目でいくか悩み中のため検討の材料としても、面白いと思っていただけたら、評価、ブックマークをお願いします。


既にしていただいた方、ありがとうございます!

本当に嬉しいです‼

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