表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/19

9 初めての客

 さて、どうやって倒すか。魔法か、召喚術か。この杖では破壊できないよな。いけない、考えすぎてしまった。大剣が首元まで迫ってくる。反射的に杖を出すがこれを簡単にぶった切り、俺の首に剣が。


「タカオ!」


 ダナが叫ぶ。そして鈍い金属音。俺の首は彼女の剣を弾き返した。


「ハ?」

「は?」


 二人の動きが止まる。あわやというところを見せてしまったな。だが大丈夫。

 ステータスが高い。当然防御力も。とはいえ今のは危なかったな。もし特殊な攻撃だった場合死んでいた可能性はある。結局緊張感が足りないのだろう。もっと気を引き締めなければ。


 よし、最近覚えたスキル「合体能力召喚」でいこう。このスキルは体を召喚獣に変化させ、スキルを使うという荒業。このスキルの威力はキャラのステータスを参照する。一般的には召喚獣のほうが強いから通常は死に技とされている。だが俺の場合、ステータスが高いため幻獣よりも遥かに強いスキルを放つことができる。


「合体能力召喚、フィストドラゴン!」


 体が変化し始める。そしてフィストドラゴンの大きさに。予定通り、これなら命中させやすいな。剣をかわしながら狙いをつける。


『ドラゴンラッシュ』


 フィストドラゴンのスキルを放つ。頭の角を前に突き出し突進する技。振りかぶろうとしたところ剣の根本に頭突きが命中、そのまま突き抜け剣を破壊した。そして折れた剣の先端が地面に突き刺さった。彼女の体から今度は白い光が溢れ出す。


(彼女が転生したとき神も意地が悪いと思ったが、なるほどこういうことだったのかな。それとも)

「剣士さん、まだ話せる?」


 ダナが尋ねるが返事がない。駄目か。ファティマが何者か、どこの国で起こったことなのか、彼女が隔離されていた場所は、それらがわかるかもしれなかったんだが。まあ、これで呪いは解けたわけだ。それでよしとしよう。


 光が一層眩しくなる。剣士は晴れ晴れとした顔に。


「ありがと、う……」


 光の粒子が上空へ。彼女の姿消え、かわりにファティマがその場で横たわっていた。寝息を立てている、良かった無事だ。

 目が覚めてから彼女に説明をした。恨むどころか白い剣士のために涙を流した。良い子だね。


「これからどうする? もう自由の身になったわけだが」

「目標は変わらず宿屋の経営ですね。転生前もずっとその事ばかり考えていましたからね」

「そうか」


 そろそろ日の出。昨日アレだけのことがあったが彼女は元気よく朝食を作り始めた。そしてうまい!

 テントを畳み出発準備。そうだ、彼女に。道具袋からお金を出す。


「ありがとう、良い宿だった。これ代金ね」

「あ、ありがとうございます」

「ずるーい、私も!」


 2人で代金を渡す。客1号は我々が! 今までで最高の笑顔を見せるファティマ。はは、お互い良い記念になったな。


 出発前、ファティマからある程度荷物を奪い持つことに。その日の夜、彼女が見事に魔物を倒すところを見て就寝。朝、朝食を食べながら疑問に思ったことを質問する。


「ほとんど音を出さずに魔物を倒しているようだが」

「はい、実はそうなんですよ」


 音が出ると安眠に響くだろうとほぼ無音で戦えるすべを身に着けたとか。しかも血が落ちないように斬ったとき凍らせている。客が地面の血を見て驚かないための工夫。酸も同様。


 それからスライムベッドについて。これはおじいさんから教えてもらった秘伝のベッドで、少し強いくらいのスライム、比較的どこにでもいるスライムを使い生成するそう。特殊なスライムで出現ポイントが決まっているタイプなら彼女が居た場所がわかるかと思ったがそういうことなら特定はできないか。


 旅の目的についてもう少し明確なものをこちらに伝えてきた。宿屋が開店できる場所。食料、飲み物、香辛料やハーブの仕入先の確認。特に食料関係は、転生前の物が殆ど見つからないため味がまだまだだという話。これ以上進化するのか。現代を超えるぞ! 白剣の剣士から聞くことが出来ていたなら。仕方ないけどね。


 目的の街に到着。ファティマがどうにも体の調子が良すぎるということで最速でギルドに寄りステータスとスキルを確認。やはりというかステータスが上がっていたようだった。そしてスキルも増えていたと。しかも固有、固有を2つも持ってしまったとのこと。


 白剣の剣士のスキルを受け継いだのかな。ステータスもか。固有は1人1つだったはず。散々苦労したし神様からのプレゼントかも。


「かもしれませんね」

「もー、そろそろ敬語やめても」

「ずっとこれだったんでなおせそうにないですね。ああ、もちろん私に向かって敬語は使わなくて結構ですから」


 本当ならずっと歳上なんだよね。ただ見た目的に彼女に敬語を使うのは変だしな。当然転生していることは周りに秘密だし。今まで通りで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ