10 握力で賢者の石を作れそうな錬金術士
街について数日後のある日。パーティを組んでいる若い男の冒険者がこちらに話しかけてきた。
「キミらさ、こんな野良召喚術士放って俺たちと組まない?」
「お断り!」
「私も!」
冒険者達は理解に苦しむというような顔をして去っていった。「腹立つ!」とご機嫌斜めな二人。その気持は嬉しいけど、前述の通り、本来なら金持ちか国くらいしかまともに育成できない。一般の召喚術師は弱いことがほとんど。そのため中には彼らのように「野良召喚術士」や「野良」と蔑む人もいる。
まあ、彼らの気持ちもわかる。効率が悪いってレベルじゃないからなー。効率はとても重要、誰もがはやく強くなりたいしね。彼らからしたら趣味や道楽でやってんじゃないんだよってところだろうか、真面目に冒険者をやっているように見えないのかもしれない。基本命がけだからな、そう見えて苛立ちを覚えているのかな。俺も野良召喚術士を見たら転職をすすめるだろうしな。
「ぶん殴ってくる!」とまだご立腹な二人。彼女たちはそこを理解しつつも仲間が馬鹿にされて腹が立っているんだろうな。自分のために怒ってくれる仲間がいる、このことが嬉しかった。
しばらく街を拠点に活動した後、次の街へ。今回も徒歩、いずれ金策も考えたほうがいいかな。それでも、稼ぎながら、魔物を見ながら進めるしいいか。どこにどんな魔物がいるか知っておくのも悪くない。
道を歩いていると斜め前方遠くにテントがあるのを発見。我々と同じように野宿かな。外に出て何やら燃やしている。あれは蒸留器かな、とすると錬金術士の人か。
錬金術はポーション等を作る、冒険者にとっては非常に重要なクラス。テントの様子をうかがっていると遠くから騒がしい音が。盗賊の集団がこちらに向かって来る。
「盗賊か。あー、あのテントの人がまずいかも」
こちらと盗賊と丁度中間くらいの位置。「こちらへ」とダナは大声で逃げるよう誘導した。
だが錬金術師は盗賊へ向かっていった。錬金術士は戦闘職ではあるが、直接戦闘は向きではない。後方で回復支援、遠距離攻撃等が主な役目。ゲームでの話だけど。それにしたって何も持たずに突っ込んでいくとは。途中ローブを脱ぎ捨てた、女性だ。
「んだてめぇ、そんなに死にてえのか!」
盗賊は金属製のメイスを錬金術士に向かって叩きつけた。女性はそれを左手だけで軽々と受け止める。そして力を込めると金属が軋む音が発生、その後メイスの先端が爆発粉砕。
「ほえっ」
間の抜けた声を発し、唖然としながら弾けたメイスを見つめる盗賊。周りの盗賊たちも驚き進軍を止める。その後は俺たちも参戦、盗賊たちを倒した。通りがかりの馬車の人に近くの街に連絡を頼んだ。
「助かったよ」
「いやいや、ほぼ手出しはしてなかったけど」
錬金術士の女性がこちらに話しかけてきた。歳は俺と同じくらいかな。赤髪で角と尻尾が生えた女性、半獣人か。革のグローブに軽装の服。彼女はとにかく強かった。盗賊たちの中に突っ込み、次々と倒していく。我々は逃げ出した盗賊を片付ける程度。刃物による攻撃を直接腕で受け止めたりしていた。かなり頑丈な肌だな。
「お姉さん強いね。格闘士?」
「元な。今は錬金術士だ」
子供の頃、錬金術士に憧れ、どうしたらなれるかと聞いたところ、誰でもなれるけど体を鍛えておいたほうがいいと言われ、鍛えることを決意。どうせなら本格的にと特殊格闘術機関「魔王の巣」へ入り体を鍛えた。15年後、鍛え抜いた体で錬金術士のもとへ行くと「それは鍛え過ぎかも」と苦笑いされたという。
「魔王の巣ってあの魔王育成機関の一つの?」
「ああ」
驚くダナ。魔王とは魔族の王のこと。魔族とは人間と敵対していた人たちのこと。現在戦争はなくなり、仲の悪い地域でたまににらみ合いがある程度。全体として人類と仲がいいようだ。現魔王の方針で人間とは仲良く、だとか。ヴァミ5の設定より。
話が弾んでいる、うちの女性陣と気が合うようだ。錬金術の話になり、実際にポーション作りを見せてくれた。
器具の前に。「これは蒸留器」と言う彼女。オイルランプに火をつけ、鉄製のフラスコに入った水を温める。フラスコの先にはフラスコが。ここに蒸留した水を集めるわけか。
計量器を使い、素材の重さをはかりながらすり鉢に投入、すりつぶし粉状に。乳鉢と乳棒を取り出す。乳棒は特殊な道具で、持つところと先端が魔力を流しやすくするため金属になっている、とのこと。乳鉢に粉を入れ、蒸留水をそこにかける。すかさず魔力を込めながら乳鉢で混ぜる。蒸留水を全部投入し、ある程度かき回して完成、ポーションの出来上がり。
S~D、そこからさらにプラスマイナス等級があり、自分が作ったポーションはCのプラスでまだまだ修行不足と彼女は嘆く。話を聞くに、まだ錬金術師になった期間はそんなに長くないようだ。現在は一通り勉強を終えて工房を開ける場所を探しながら旅をしているところ。
「よかったら一緒に旅をしないか?」
仲間にならないかと提案する彼女。反対する者はなし。加入決定!
「クリスだ。よろしく」
こうしてまた一人、頼もしい仲間が増えた。




