相棒誕生「双子の美味しそ…きれいな子たち」★
「それにしてもこの状況、どうすればいいというのだ? 未熟なダンジョンマスター、米粒のダンジョンコア、役立たず、はあ……」
コアが悩んでいる。
その最中、ルナは水たまりを覗き込んでいた。キラキラ輝く瞳で。
「わ、すんごい美少女になってる……!? えええ、可愛い。ビックリ。あと瞳が……赤……ウッ、頭が……梅干しみたいな赤色で美味しそううふふふふふ♡」
ルナが笑顔になり、だんだんと水たまりに顔が近寄っていって……
「やめい!」
お米粒アタック!
びしゃん! と顔を突っ込むことになった。
「ぶっ!? もう、コアさぁん! 乱暴!」
「頭が冷えたか」
「まあ確かに……?」
ルナは、自分の中で暴れていた【美食】の衝動が落ち着いた、と感じた。
「ねぇコアさん。私ね、白銀の髪は白米みたいで美味しそう、赤い瞳は梅干しみたいで美味しそう、食べたい! って、感じてるんですけれど、これってどう思いますか?」
「狂気か?」
「デスヨネー」
「大罪の欲望が現れた結果として、正しい現象だ」
お米粒は納得している様子だ。
ルナだけが何もわかっていない。
「コアさん、説明して下さいませんか? ダンジョンの作り方解説〜って教えてくれるって、さっき言ってましたよね?」
「気の抜けた名称にするな。まあいい」
コアはピシリッと立つ!
お米粒が立ってるぅ! とルナはヨダレを滲ませる!
お米粒アタック!
ルナはお口でキャッチしようとする!
失敗! おでこに小さな赤い跡がついた。お米粒の弾丸のようなアタックで、ルナは正気に戻った。
「ハッ!? 私は今、何を……!?」
「やれやれ。覚醒したばかりのダンジョンマスターは大罪衝動に支配されやすいとはいえ、なんとも難儀なものよ」
お米粒が光を纏う。
光は、ヒト型を形作った。
ルナとまるでそっくりな、双子のような美少年の容姿。
白銀の髪に、赤い瞳、むっすりした表情はコアの性格をそのまま表している。
「ええええ!?」
「うるさい」
「服着て下さいよぉ!」
「ああ、それはそうか」
先ほど、人情というものを再学習していたコアは、ルナの言うことを理解した。
少年用の服を纏う。
フリルブラウス、ハーフパンツ、サスペンダー、ソックス、革靴。
ルナにも服を贈った。
ワンピースドレス、タイツ、ストラップシューズ。
「わあ、コアさんセンスいい〜」
「そうだろう!!」
生まれて初めて褒められたコアは、それは嬉しそうに、満開の花のような笑顔を浮かべた。
(ウワァ。薄々思ってたけど、自信家で自分大好きなんだなぁ……)
引く気持ちが半分、羨ましいと思う気持ちが半分。
ルナは自分をそこまで好きになったことがないので、眩しそうにコアを見つめた。
その眼差しに、ますますコアは気を良くしたようだ。
ルナの隣にストンと座る。
なついた猫の様に。
「さあ説明してやろう! 汝……」
「ルナでいいですよ」
「ではルナよ。我の言葉を一字一句聞き漏らさず、己のものとせよ」
ゴクリ、とルナが生唾を飲む。
なに、質問は随時受け付ける、とコアがいうので、ルナは少し気が楽になった。
この辺りの心遣いを受けられるようになったのは、コアとルナの距離感の変化があったからだろう。
「ダンジョンとは!…………」
「コアさん?」
「ダンジョンマスターとは!…………」
「コ、コアさん?」
コアは硬直している。
瞬きすらしていなくて、心配だ。
動きがないとまるで高級なビスクドールのよう。
ルナが顔の前で手を降っても、動かない。
やがて、さあーーッと青ざめていく。
「コアさ」
「記憶がなぁーーーいッ!?」
コアは立ち上がると、頭を抱えて、絶叫した。
さすがにルナも、すぐには慰めの言葉が出てこなかった。
なんとなーく、これじゃないか? という原因に心当たりがあり、それはどこまでもルナのせいだったので。