第一夫君レオンハルトの恋 14
入れ替わるようにルイスが『成婚の儀』のために部屋に入っていく。
控室に戻り、しばらくの間『彼女』との初めてのマナの交流に思いを馳せていた。
女官が控室に入ってきた。『彼女』を診察した女医が後ろに続いて入ってくる。
「ご成婚おめでとうございます。レオンハルト様、クリストフ様。実はこの後のことについて注意事項等説明をさせていただきます」
そう言うと『彼女』の医療記録と一緒に二種類のガラス瓶をそれぞれ手渡された。
「こちらは『渡り人・ハルカ』様との初めての『営み』の時にご利用ください。こちらは下準備のための『ラバースライム』。ご利用方法は既に夫君教育の方にて説明は受けていると思います…… そしてこれは『王族専用の秘薬』でございます。おそらくハルカ様は初めてか、ほとんど経験されていない状態です。しかも記録されるということで緊張されることが想定されます。こちらの秘薬によって緊張も緩和されると思いますので……」
そうだった。『成婚の儀』の後の『彼女』との初めての『営み』は公的に記録されるのだった。閲覧者は国王のみとされてはいるが……
『彼女』の精神的負担は夫君である我々とは比べ物にならないはずだ。
「それから、こちらは別宮『月の光』にあるマナの源泉です。定期的に皆様にお届けすることになりますが、湯船に十滴ほど入れていただくと『渡り人』様のお身体の回復を迅速に行うことができます」
大きめのガラスの容器に乳白色に虹色の虹彩を放つ『マナの源泉』を手渡された。
丁度説明がひと段落した頃、『彼女』がいる部屋から強力なエネルギーが放出された。それを見てクリストフが部屋へと向かう。
そのエネルギーの放出が成婚の儀の口付けによるマナの交流によるものだと気づいたのはその時だった。
入っていったクリストフに入れ替わるように半ば茫然自失のようなルイスが控室に入ってきた。
そんなルイスに対しても先に説明を受けた私達と同様の説明が女医からなされる。三人の夫君への説明を終えると女医は女官と共に控室から出ていった。
『彼女』の心と身体のことを一番に考えなくては。
それにしても『彼女』の下した決断は夫君である私達から見ても驚きのものだった。
『渡り人』はこの星に渡ってきた瞬間からその全てを公開記録対象とされている。それは監視の意味もある。
それを『彼女』は女性の立場から『自分に続くであろう『渡り人』が若い女性の場合、彼女達にとっては過酷なことを公開記録とするのはやめてほしい。ある程度のプライバシーを認めて欲しい。その代わり、自分が求められるデーターとして記録を残すというものだった。
つまりは『渡り人の閨の恩恵』に関するデーターだ。
ただし、公開記録とはいえ現時点でそれを閲覧できるのは国王ただ一人だ。百五十年後にある程度閲覧権限は下げられるそうだが……
夫君の自分であっても『夫婦の営み』を第三者に見られるというのは勘弁して欲しいのだ。女性である『彼女』なら尚更だろう。
さてどうするか。
思案していると再び『彼女』のいる部屋から強いエネルギーが放たれた。ルイスと顔を見合わせ『彼女』のいる部屋へと向かった。




