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第二十一話 礎固栄盛

「良い?深刀流の極意とは『礎固栄盛ソコエイセイ』。基礎を極めてこそ最強になれるの」


 私は今、メイスとアルンに対して深刀流を教えている。

 いや、今日のところはメイスは私の補佐だけど。

 メイスは妹弟子だが、学園に通っている間は私が教えることになっているので問題ない。

 元慈眼流の方々に関しては、技術はほとんどできているので私が教える余地はあまりない。

 むしろ慈眼流当主の…ゲダシタ・レイドルドなんて技術に関しては私以上のものを持ってるし。


 まあ彼らは師匠にみっちり鍛えられれば良い。

 技は一部は深刀流以上だけど基礎に関しては師匠には遠く及ばないようなレベルなので退屈はしないだろう。


 と、話がずれたね。


「でも、技を極めてこそ剣豪なんじゃありませんの?」


「甘いよ、アルン。基礎がなっていれば相手がどのような技を持っていても対応可能。逆にどんな凄い技を持っていても基礎がなっていなければ対して役に立たない。私もリルの基礎にやられた」


 メイスの説明に対して、アルンはふむふむと頷いている。

 アルンは私に恋心を抱いていない上に私からもそういう感情はないので、メイスの対応も優しい。

 可愛い妹分が出来たようなものだろう。


「だいたい言いたいこと、メイスに言われちゃったけどそういうことだよ。基礎を笑う者、基礎に泣く。それが深刀流に伝わる佳言。まあ、技もちゃんと教えるし重要ではあるからあんまり落ち込まないでね?」


「なるほど、理解しましたわ」


 そんなことを言っているがちゃんと心から理解していないのはよくわかっている。

 私もそうだったし、師匠もそうだったと聞かされたことがあるからだ。


「じゃあとりあえず素振り50回ね」


「そんなものでいいんですの?」


 アルンは気合を入れて竹刀(もともとこの世界にはなかったが、私が稽古用に作らせた)を振り始める。


「うん、フォームが乱れてる。もっとコンパクトに振ろうよ」


 アルンの肩を竹刀でちょっと強めに叩く。

 これは虐待とかそういうのではない。

 他の流派では…というか私以外は木刀、下手をしたら鉄の棒でこれをやるからよっぽどマシだ。

 痛くなければ覚えないというアレだ。


「やっ!はっ!」


 アルンは更に気合を込めて、アドバイスされた箇所を満足ではないものの修正して振る。


「一振り一振り考えて振ってる?ただ漫然とやってても意味ないよ?」


 肩をもっと強く叩く。

 

「ご、ごめんなさい…」


「ごめんじゃない。すみません!普段はともかく道場では上下関係はしっかりしなさい!」


 元が大貴族だから、素質はあるからBクラスに入れたものの指導者に上下関係なんて叩き込まれなかったんだろうな。

 指導も甘いものだったのかもしれない。

 無論、本人は本気でクタクタになるまでやっていただろうけど。


 ここは心を鬼にする。

 私から誘っておいてというのはあるが、私は天下の大道場となる、いや、私がする深刀流の後継者なのだ。

 ここらへんはしっかりしなきゃならない。


「今日は素振りだけしかさせないよ。だけど、課題を持ってしっかり取り組むこと!」


「は、はい!」


 アルンの表情には決意を感じた。

 だけどまだまだ。


「はいじゃない、応!」


「そ、そんな若い男性がされるような掛け声なんてでき…」


「できるできないじゃない、するの!この程度もこなせないのなら、没落したままだ!さあどうする、這って無様に見下されたまま死ぬか、再び返り咲いてお嬢様に戻るか、答えろ!」


「お、応!」


 アルンも人生がかかっている。

 この程度のプライドは捨てられる。

 

 とはいえ、私から三顧の礼で誘った上に、お嬢様なアルンに対してと考えると厳しくやりすぎだから後でフォローはしとかなきゃならないかな。

 いや、それはそれとして明日からは段階的に更に厳しくしていかなければならないけど。




 あれから数時間素振りを続けさせて、終了を宣告する。


「はい、今日の稽古は終わり。特製ドリンク作っておいたからこれ飲んで休憩してね」


 私は料理ができないと言っても剣術家だから体のサポートのためのドリンクくらいは作れる。

 否、これしか作れない。


「はぁ、はぁ…ありがとうございます!ただの素振りでも意識を変えるとここまでに辛いものなのですね…んくっ」


「でしょ?実は私も最初に深刀流習い始めた頃は素振りだからって舐めてたし。…あっ、今からは普段モードの態度でいいからね?」


「しかし、思考しながら素振りするというのは思った以上に発見があるのですね」


 アルンの表情が晴れ晴れとして見える。


「うん、剣術なんて結局自分の肉体にあった振り方をしなきゃなんだから自分で気付けなければなんにも成長できないからね」


「リルさん…いえ、師匠!あなたになら付いていけそうですわ。いままではただ自分を追い込むだけの修行をしていましたが、それだけでは意味がないことに気づけましたし。…本当にありがとうございます」


 その後メイスに稽古を付けて、今日の修行が終わった。

しばらく更新できていなくてすみません。

これからは三日に一回は投稿するように戻します。

作者の力量と生まれつきの気力が足りないため、エタらないためにも50〜60話を目標に完結させるようにしてみます。

これからもよろしくお願いします。

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