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デストラクションエラー  作者: 仕方舞う
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消滅への暇

 人は諦めが悪い。諦めの悪さが未来を開き、諦めの悪さが絶望を打ち払う。諦めなければ、終わりは無い。諦めなければ、負けはしない。

 知識の海を活用し導き出したローリアの目的は、次元境界を利用した支配。世界を隔てる次元境界が無くなれば、隔てられていた世界がぶつかり合い壊し合う。ローリアに服従する世界には次元境界による保護、服従しない世界には次元境界消失。思いのままになる世界だけを選別し、支配を受け入れる者以外を排除する。

 ローリアの目的を知った面々の反応は異なる。戒と謙二郎は、必要な準備を講じながら様子を窺う。デストラクションは、兎にも角にも早急に打倒すべき。シーリア、アーク、風、ゼロノートは、手の届かない次元への退避。それぞれに意味のある行動だが、不安要素が一つ残っている状態ではどの選択肢も選べない。



「様々な意見があるようじゃが、アポカリプスがどう動くかが分からん。今は早計な判断はいかんじゃろうな…」

 艦橋に集った意見は何一つ選ばれる事無く、立ち込めるのは絶望に似た雰囲気。ローリアだけでも脅威だったのが、そこにアポカリプスまで追加。戒が記憶を取り戻し対応出来る範疇を超えている。

「僕に出来るのは、ローリアだけだね…」

 頼みの綱だった戒が不安気に語れば、ゼロノートは頭を抱えて沈み込む。ゼロノートの落胆ぶりが集まった他の者に影を落とす。

「ゼロノート、俺達に出来る事は無いのか? 次元掌握と終末に対抗する手段が欲しい」

 謙二郎の質問に答えたのは、戒。

「次元掌握に関しては対処できるよ。次元を操作する為には、膨大な予測計算と膨大な力の行使が必要になるんだ。僕から奪った力を取り戻す事は難しいけど、思考にノイズを加えて計算の邪魔をする事は出来る。後でゼロノートに阻害パルスを組み込んだ武装の設計図を渡しておくよ。ただ、終末に関しては不可能に近い。全ての存在には、始まりがあれば終わりがある。覆せない絶対理論の片割れだから…それこそ、始まりの概念存在があれば力を打ち消せるかも…」

 デストラクションは、ゼロノートに作って貰った新しい体で深い溜息を吐く。

「まさに不可能だ。始まりと終わりは表裏一体。始まりの力で相殺すればどちらも消滅。世界から始まりも終わりも無くなる。新しい存在は生まれず、古い存在は消えずに残り続ける。楽観的に見れば、永遠に今が続く。絶望的に見れば、朽ち果てた存在しか居なくなる」

 天秤にかけられていたのは、終末か歪んだ永遠。おのずと始まりの概念存在に期待する事は出来なくなった。

「ふ~、今はアポカリプスの対応を見守るしかなさそうじゃな…」

 選ぶことになったのは、次元掌握の対処をしつつ状況観察。アポカリプスの対応に全てを委ねる不安定な決定に終った。



 展望デッキの近くの部屋をカオスとデストラクションが使っている。部屋には大きなベッドが置かれ、カオスは未だ目を覚まさず眠っている。デストラクションは、何よりもカオスの事を心配している。ローリア打倒もカオスの為。

「そろそろ目を覚ましてくれ…」

 ベッドで眠るカオスはスヤスヤと穏やかな呼吸を繰り返し、傍目にはただ眠っているようにしか見えない。だが、実際は昏睡に近い。ローリアが放った光は、破素と呼ばれる生体破壊を目的にした成分で出来ていた。機械の体なら何の問題も無いが、カオスは生体と概念の融合体。治療のお陰で速度は遅くなっているが、今も体は崩壊している。治す為には、ローリアの体から破素を取り出し解析する必要がある。


「破戒…入ってもいいかな?」


 扉の先から戒の声が聞こえる。デストラクションと呼ばないのは、ナノマシンの体を手に入れ個として存在しているから。

「…好きにしろ」

 扉を開けて入った戒は、カオスの姿を見て悲しみの表情で近づく。

「ごめん、やっぱり破素の解析でしか治療薬を作れない」

「謝るな。お前は悪くない…」

 戒は懸命に治療法を探した。だが、見つからなかった。カオスの体内で見つかったの破素は半分に割れていて、残りの部分が見つからない。その見つかっていない半分に破素を生み出した際の痕跡が残っていると思われる。

「戒、ジートの容態はどうなっている?」

「まだ目を覚ましていなけど…」

「そうか。解析に役立つのではと思ってな…」

 ジートを操り動かしていたローリア。その際、自我を縛っていた訳では無い。自我を残しておくことでジートとして自然な行動をする事が出来る。周囲の人間に変化を悟られる事を恐れたための方策。だが、破素を生み出した時点では世界は崩壊し、他者を顧みる必要は無くなっていた。ローリアがジートの自我を残していた可能性は低い。

「起きてくれれば聞けるんだけど、今の精神状態では難しいかも…」

「どういう事だ?」

「カオスと違って体に異常はないんだ。でも、そのせいで操られていた時の記憶が残って…」

 ローリアがジートとして行った悪行には、屋敷に居た仲間を殺した瞬間もある。殺したくなくても、体が勝手に動いて次々殺していく。そして、存在値として近くに集められていく。残酷な現実が直ぐ傍に在り続ける状況は心を壊すのに十分な威力。体が無事でも生きたいと思えない。

「…辛さに立ち向かう気力が無いのか? 気楽なものだ…」

 自身も操られていて痛い程ジートの気持ちは分かる。。だが、今の破戒は父としての側面が強い。ジートの気持ちよりもカオスの治癒が大切。

「だったら願ってみたら?」

「願いで何が出来る!」

「ウィッシュが見つかったんだ。ず~~~とシーリアの背中に引っ付いていたんだ」

 カオスとの戦いで戒を裏切ったウィッシュは、裏切った恥ずかしさで姿を現せずにいた。でも、大好きなシーリアから離れたくない。そこで姿を消して背中に張り付いていた。

「人の願いは底が知れない。どこまでも深くていつまでも溢れてくる。もしかしたら、絶対不可能と思っていた事も叶うかも…」

「カオスが治るのか?」

「それは君次第かな。願いを巻き込んで常識を乗り越えれば…」

 戒が言っている言葉は希望的観測。本当は願いの力でもどうにもならない。幾ら願っても、幾ら信じても、叶わない願いはある。例えば、命。シーリアが人間を求めても叶わなかったのは、アークが居る事とは別に死んでいる事実があるから。死を克服できるのは、願いを超えた新たな常識。必要なのは、常識を担保する説得力。


「緊急事態じゃ!」


 ゼロノートの怒号が飛行戦艦に響き渡る。その声はひっ迫した状況の警鐘に他ならない。

 戒と破戒は、急いで艦橋に向かう。



 艦橋ではアラームの対応に追われていた。モニターに映し出されるのは、世界各地で起こっている地殻崩壊、空間歪曲、小規模のブラックホール、人間と機人の変質。天変地異の数々は人の傍で起きている。当然とばかりに、飛行戦艦もそれらの影響を受けている。

「風! 無のコーティングを維持しながら、装甲強化を船体上部に! いやいや、下部…あ~、違う、右側面じゃ!」

 ゼロノートのちぐはぐな指示を風は何とか熟す。だが、それでも船体は右に左に弾かれる。施されたコーティングと厚くした装甲のお陰で防げているが、この状態が続けば長く保たない。

「ゼロノート! 何があった?」

 真っ先に訪れた謙二郎は、モニターに映る異常事態に目を丸くする。

「恐らくローリアじゃ! 別次元から的確に人間を狙って攻撃しておる! 謙二郎、今直ぐに英雄の街とエジプトの町に向かってくれ! 少しでも被害を抑える為に装置を設置してくれんか!」

 艦橋に用意されている円柱状の機械を指差す。

「これか?」

「それは、強力な次元干渉を促す装置じゃ。起きた事変が次元掌握なら相殺出来る筈じゃ! 急ぐのじゃ! 時間が無い!」

 捲し立てるゼロノートの指示に従い、謙二郎は艦橋を飛び出す。

 謙二郎にぶつかりながら、戒と破戒が入る。

「何があったのかな?」

「早く説明しろ!」

 二人の顔を見て僅かな安堵を感じたゼロノートは、早口にならないように状況の説明を始める。

「別次元から人間が居る場所を直接狙っておる」

「ローリアか…? 支配が目的の筈が何故問う事も無く殺している?」

「人間は力の実験に使われておるんじゃ! 別次元を想定すれば人間の数は無数。壊れかけの地球をわざわざ支配する必要はないのじゃ…」

 解釈の中では、ローリアは支配を拒んだ相手に死を齎す。それには、支配を断る事への恐怖を植え付ける目的があり、支配を受け入れる人間の数と裏切る人間の数を減らす効果がある。もし、支配を拒もうが受け入れようが結果が同じなら、支配を受け入れる者は現れない。要は、今のローリアにとって支配が目的ではなくなっている。力を試す為に人間が幾ら死んでも構わない。幾ら死んでも人間は無数にいる。支配したくなったら人間が生きている世界で支配すればいい。

「悠長に構えている場合ではない! ローリアの居場所を探せ!」

「無理じゃ! 次元干渉を確認しているが、経路が全く分からんのじゃ! どの次元からどうやって攻撃しているのか、そもそもこれが攻撃と呼べるものなのか…」

「………これは、終末の力だよ」

 戒の言葉に破戒は眉を顰める。

「アポカリプスが手を貸しているのか?」

「これは…ローリアが行使している。アポカリプスだったらこんな事はしない。命令されても絶対に…」

「協力しているからではないのか!」

「違う! ローリアがアポカリプスを取り込んで使っているんだ!」

 最悪を超えた異常事態。知識の海でも予知できず、勿論想定も出来ない。

「今起きている事象の殆どが終末の力で説明できる。地殻が壊れたのも、空間が捻じれたのも、ブラックホールが現れたのも、全部終末の力なんだよ!」

 ローリアが終末の力を得て試している。ただでさえ厄介な力が分別の無い愚かな支配者の手に渡ったら…考えただけでも恐ろしい。だが、戒は落胆するどころか強い眼差しで何度も頷く。荒々しい雰囲気が漂い、いつもの戒とは違う。

「…戒、何か策でもあるのかの?」

「まぁな、だが俺はエラーだ。アポカリプスの事なら俺が一番理解している」

 いつの間にか代わっていたエラー。

 タイミングよく艦橋に通信が入る。

「ゼロノート。英雄の街、エジプトの町、両方とも避難が終わっている。これはどういう事なんだ?」

「…どうやら予知していた者が居ったようじゃ…」

 ゼロノートの言っている事を理解出来ないが、状況を察して「今戻る」の一言を残して通信が切れる。

「説明してもらえんか? これはアポカリプスの意思が介在しておるのか?」

「正確には仕組んでいた、だ。アポカリプスは戒の感情を解き放たないように釘を刺していた。それはローリアの影を危惧していたからだ。記憶を取り戻す鍵の一つを隠しておけば扉を開く事は出来ない。ローリアが育鯖戒を完成する事が出来ないように考えていた。勿論、俺が感情を解き放つ可能性は排除できない事も想定できていた筈」

 傍で見ていた友人の言葉。エラーを信じるか信じ無いかによって違うが、戒の感情が鍵だと知っていた事実は納得出来る。鍵を狙って破戒との対立を維持させ続け、鍵が現れるまで介入をしなかった。だとするなら、ローリアの存在を早くから認知し、自分の感情も理解していた。

「俺だって知らなかった。アポカリプスにローリアを父と慕う心が在ったとは…だが、それでもアポカリプスだ! 終末の概念存在だ! ローリアが現れた時の対処を俺に託していた」

 エラーは戒と代わる。

「…対策についての説明は僕がするよ。ローリアがアポカリプスを取り込んだ事である弱点が生まれたんだ。それは終末因子の摂取。終末因子は使用する対象に依存していて、ローリアの場合かなり限られてくる。人間や機人なら死に繋がる物や状況が終末因子になるんだけど、ローリアは次元変異体。終末因子と言えるモノは一つしかない」

「ローリアを滅ぼせる…まさか、戒!」

「自分で言うのもおかしいけどね。僕を取り込まなければローリアはこれ以上終末の力を使えない。それどころか、因子不足が続けば自身が終末に飲み込まれてしまう。それを知っていてアポカリプスはローリアに吸収されたんだ」

 ローリアが自ら陥った結末に安堵が広がる。

 だが、戒は楽観を掻き消す。

「ローリアが気付いた時点で僕に勝てる力は残っていない。でも、ローリアなら別次元に僕を再現する事が出来る。僕を再現して喰らう…そうなったら、ローリアは無尽蔵に世界を壊せる」

「…防ぐ案はあるのか?」

「ローリアが僕を再現する為には必要な部分を回収しないといけないんだ。ローリアはブラックホールと融合した為、直接世界に介入する事が出来なくなった。その代わりに用意したのがレコードマーカー。レコードマーカーに精神と力の供給路を繋いで世界に介入していた。ただ介入するだけならそれで十分。終末を吸収せず、僕の記憶を戻さなかったら。でも、ローリアは過ちを犯した。そして、過ちを拭う為に次元境界に切り離した本体が必要になった」

 戒は空を指差す。

 飛行戦艦を襲っていた攻撃が止んでいる。

「レコードマーカーは次元変異体を許容できるように出来ていなかった。だから、レコードマーカーに合わせて情報を変換する必要があった。今のままではブラックホールで構成された本体に戻れない。そこで必要になるのが、ブラックホールに合わせた変換。時間が掛かる上に、変換後から本体に戻るまでは無防備になる。その時が最後のチャンスだね」

「攻撃が止んだ今、ブラックホールに戻るって事じゃな?」

 ゼロノートの質問に戒は頷く。

「そうだよ。多分、戻ってから一週間がタイムリミットだね。消滅までの暇を最大限利用して準備をしよう! 必要な事はゼロノートに伝えておくから、ゼロノートを基点に進めてくれないかな?」

「戒はどうするんじゃ?」

「僕も準備しないと…」

 戒は、ゼロノートの頭をチョンと突いて艦橋を去って行く。

 戒が触れた一瞬で、様々な情報が脳裏に提供される。そのどれもが未知で、そのどれもがローリア対策の最善案。



 ローリア対策は直ぐに動き出した。謙二郎は、創造の将クリエイトの捜索と協力依頼。破戒は、カオスから混沌の概念抽出、人体保護の為にナノマシン兼用体への移行。風とフェルギーニは、飛行戦艦の次元共振装甲への換装。アークとシーリアは、英雄の街とエジプトの町の避難者を飛行戦艦へ移動。アリアと弓は、アーセオン邸に残っている機械の回収。ソフィーは、サードと共にアメリカに向かい支配の概念でマイケルを飛行戦艦に強引に誘う。ゼロノートは、次元境界のモニタリングをしてローリアの本体の捕捉。戒は、ジートの精神復旧。

 大抵は問題なく進められたが、クリエイトとジートが難航していた。ゼロノートの協力でクリエイトの居場所を特定しても何故かそこには居らず、あったのは建設中の城。何者かに連れ去られた痕跡が無く、作業を放り出したようにも見えない。ジートに関しては、精神復旧を施しても自ら殻に籠って出てこない。戒としては何とか謝りたい。謝って理解してもらった上で協力してもらいたい。ローリアに対抗する為には、ジートが絶対に必要。マイケルを飛行戦艦に呼ぶのも同じ理由。



 飛行戦艦が停泊している英雄の街で、戒が熱弁を振るう。今回の作戦に関係しているのは全員。一人として無駄な人員は居ない。飛行戦艦に移動するのは避難の延長ではなく、作戦成功の為の原動力。

「世界を守る為にはローリアを倒せないといけない。でも、相手はブラックホールを取り込んだ次元変異体。僕達だけの力では絶対に勝つ事が出来ない。だから、皆の力を貸して欲しい! 皆の夢、希望、願い。全部叶うように祈って欲しい! どんな些細な事でも構わない。どんな不可能な事でも構わない。叶えたい気持ちを強く持ち続けて欲しい!」

 戒の肩には大きく成長したウィッシュが泊まっている。

「見えるだろ? 皆の願いが形になっているのが。願いは力になる。願いはどんな敵も退ける。皆、自信をもって叫んでくれッ! その願いは未来を叶える!」

 戒の言葉を意味をしっかり理解した者はいない。だが、戒の熱量は伝わった。集まった群衆から歓声が上がり、胸に秘めていた願いを恥ずかしげなく叫ぶ。戒の肩に泊っているウィッシュは、その場でどんどん大きくなる。



 その頃、飛行戦艦の医務室にアリアが訪れていた。ベッドで眠ったままのジートの顔を眺め、微笑みながら涙を流す。

「お兄様…私は幸せです」

 無表情の頬に触れ、優しく撫でる。

「お兄様だって幸せだったでしょ? 戒と一緒に戦っていた時、戒と一緒に研究を成就させた時。例え操られていたとしても、その心はお兄様の物。高揚感や達成感は誰の物でもない。このまま眠っていたら二度とあの思いを体験できない。それでも良いのですか?」

 アリアの言葉は心に届いている。しかし、ジートの閉じた心は開かない。

「本当に良いのですか? 研究者として願っていた夢を捨てても後悔しないのですか? 私にはそう思えない。私の知るお兄様ならいつまでも寝ていない。夢の為に貪欲に動く筈。起きて…お願いします…」

 アリアの思いは伝わっている。だが、ジートの願いを動かさない。

 アリアは、深い落胆と共に医務室を去る。


(ジート、俺は謙二郎を守りたい。謙二郎の為なら悪魔にでもなれる…あの時出来なかった決意は今こそ!)


 レコードマーカーによって吸収された山路の思念がジートに残っている。ローリアが必要としていたのは、存在値のみで不要だった思念はジートに押し付けた。


(私達はお嬢様の為に生きてきました。それは最後まで変わらない。どうか、どうか…)


 アリアに仕えていたメイド達。メイドの本分を捨ててでも主人に意見した。


(ジート様、私が誰か分かりますか? 私はリトルガーディアンシステムに搭載された人格性AI。貴方を父と慕う者です。長い間挨拶できず申し訳ありませんでした。そして、歪められた結果を齎して申し訳ありませんでした。これからは貴方の傍に居ます。貴方が望む事、願う事の為に尽力します。どうか、ご指示を…)


 破戒から解き放たれ、リトルガーディアンシステムはジートに寄り添っていた。父と慕い、赴くままに全てを許す。例えこのまま眠っていても、例えローリアに加担しても、一切口を挟まず為すままを許す。


「………………………私は過ちを犯した。それでも、皆は許してくれるのですか?」


 目を覚ましたジートは、聞える声に応える。


(当然だ。誰しも過ちは犯す)

(私達は、お嬢様を救って頂ければお許します)

(ジート様、許しは自身の中にあります。我々の言葉は貴方の心と共に…)


 存在値の果てに捨てられた思念全てがジートを奮い立たせる。責める者はいない。ただジートに願う。自分達が生きてきた意味、自分達が生きてきた痕跡、自分達が意味ある存在だった事を証明して欲しかった。


「許された者として、探求心を踏み躙られた怒りを思い知らせる!」


 運命に齎された天才は、再動の時を迎える。

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