表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白内障と緑内障の手術  作者: 夏目 碧央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/27

まさかの大声で……今それ言う?!

 9時頃部屋に戻って目薬をして、ストレッチをしたらもうやる事もないし、寝てしまった。もう、眠れなくても横になって休んでいると思えばいいじゃないか、と思って。けっこう疲れているからぐったりと力が抜けて気持ち良く、まだ電気が消えていないけれども眠くなってきた。とはいえ、10時に電気が消えたらすぐに眠れるわけではなかった。

 おばあさんが隣に来て、夜中に何が起こるか心配ではあったが、まさかの色々があった。私はしばらく眠れなかったものの、そのうちに眠ったようだった。けれど、1時11分に目が覚めた。ゾロ目だったから覚えている。トイレに行こうか迷って、行く事にした。

 トイレに行くと、何だか痰を吐く音が聞こえた。手洗い場へ行くと、スキンヘッドの男性が歯磨きをしていた。こんな夜中に!?と驚いたものの、他の人を起こさないように、部屋の洗面台ではなくトイレまで来たのだな、とちょっと感心した。が、いやいや遅すぎるでしょ。消灯時間を何時間過ぎたと思っているのだ。その人は片目に眼帯をしていた。スキンヘッドで体格がいい人は、ついつい喧嘩で目を?と思ってしまう。

 喉がカラカラだったので、なるべく音を出さないように部屋のロッカーからコップを出し、うがいをした。そして、冷蔵庫から水を出して飲んだ。その時、冷蔵庫の扉のキーっという音で目を覚ましたのだろう。隣のおばあさんが、痰が絡むような咳をした。その咳がまた大きい。咳と言うか咳払いというか。それで、少ししてからナースコールを押したようだ。看護師さんが、遅い時間だからと思ったのだろう、ナースコールに応えるのではなく、直接部屋に来て、小さい声で、

「どうしましたか?」

と聞いた。そうしたらおばあさん、普通の声で、

「お手洗いに行きたいんです。」

と言った。

 おばあさんはトイレから戻って来ると、やはり普通の声量で看護師さんに、トイレの時間を書いてくれと言う。私は正の字をつける紙をテーブルに貼っているけれど、おばあさんは時間を記入しているのだろうか。

「私見えないんで、書いてもらえます?5時半と、9時半は書いてもらったんですけど……今何時ですか?」

と、しゃべっている。それで、看護師さんは、

「書いたから大丈夫。」

と、小声で言い、おやすみなさいと言って去って行った。

 まあ、私が起こしてしまったのだよな。それは悪いと思う。だけど、それを今言う?私だって、その正の字を書くのを、今は暗くて見えないから保留にしているのだ。看護師さんはペンライトで照らして書いてあげていたようだが。まあ、忘れてしまうかも、という心配は分かるが。

 それから、私はまたなかなか眠れなかったのだけれど、その内眠って夢を見ていた。今日は両隣と向かい側の廊下側からいびきが聞こえてきていた。廊下に出ると全然聞こえなくて、とても静かだった。右目の入院の初日、あれほどたくさんの大きないびきが聞こえたのは、レアだったのだ、やはり。

 やっと眠りに着いた4時過ぎ。いきなりでっかい声で右隣の人が何か言った。それも、はっきりと、こちらに話し掛けるような、質問するような感じに。そういえばまだ私が眠っていない時にも、右隣から寝言が聞こえたのだった。寝言だと思うのは、なんの脈絡もない事、病院とは関係ない事だからであって、ムニャムニャという感じではなく、本当に普通に言うから怖い。それで、あまりに脈絡がないものだから、聞いた言葉を忘れてしまう。この時は特にでっかい声で、少し長めのセリフだった。覚えていないのだが、たとえばこんな感じ。

「水道管の工事って明日だっけ?」

みたいな。問いかける感じで言うし、何しろ声がでかいもので、そりゃみんな起きるわな。びっくりだ。でも私は夢の途中だったし、すごく眠くて、起きたけれど起きていないみたいな感じだった。そこへ、隣のおばあさんがナースコールして、

「お手洗いに行きたいんですけど。」

と言ったので、完全に目が覚めた。そして、私もトイレに行きたくなってしまった。無理矢理起こされたから頭が痛かったけれど、とにかくトイレに行った。トイレには個室が2つある。私はトイレから出て、おばあさんと並んで手を洗った。もちろんおばあさんには看護師さんが付き添っている。思わず隣の人の寝言で起きたのだ、と看護師さんに伝えたくなったが、夜中なのに声を出すわけにもいかず、辞めた。

 部屋に戻ると、廊下側のベッドの人がやはりトイレに行った。あれだけ大声で寝言を言われたら、同室者全員起きるよな。いや、一人トイレに行ってない。向かい側の窓際だ。若いからか?でも、その後ゴトゴトと音がしていたから、絶対に目が覚めたと思う。寝言を言った本人はすやすやと眠っていた。

 戻ってきたおばあさんは、

「私見えないんで、書いてください。」

と、また言っていた。小声ではなく普通の声で。看護師さんは大丈夫と言って流していた。しかし、声が大きいのは耳が遠いからかなと思っていたけれど、毎回物音で起きてしまうという事は、耳、ちゃんと聞こえとるやないかい!

 せっかく眠れていたのによぉ、と思ったが、ベッドに横になったら何だか可笑しくなってきた。これは、エッセイの恰好のネタだな、などと思った。そして、もう眠れなくてもいいから今夜のおかずの事(今日は帰ってから料理をするのだ)を考えようと思ったら、やっぱり眠ったみたいだった。決まらない事を考えていると眠ってしまう質で。

 気づいたら5時40分くらいだった。その時は点滴をしている、あの一人だけ4時にトイレに行かなかった人のところに看護師さんが来たから起きてしまったのだった。

 それにしても、ホテルの個室とはだいぶ違う。カーテンで仕切っているとはいえ、同じ部屋に知らない人がいるというのは、なんと落ち着かない事か。物音がするかどうかより、すぐ手の届く空間に知らない人がいて、気が休まらないからすぐ目が覚めるのだろう。それはもう、致し方ない。病気なら寝ているしかないが、目以外は元気だから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ