四天王会議
「さて皆の者、これより会議を始める」
丸い木のテーブルに両肘をつき、4人の中年の男達が中央の灯りを頼りに集まる。
ここは大衆酒場。
200人程度の比較的小規模な村にある唯一の酒場である。
神妙な顔で会議を進める4人とは相反し、意外と周囲は騒がしい。
繁盛しているみたいだ。
内の一人、村では後に風のトールと呼ばれる男が、ゆっくりと手を上げた。
今日、ここに集まってもらったのは・・・と前置きをし、ごくりと喉を鳴らして口を開く。
「村一番の『ぷりちーむすめっこ』コンテストの事であっているな」
他の三人が静かに頷く。
このレニオン村は、小規模な村だが20人前後の若い娘がいる。
若者の士気を・・・いや、若者の流出を止める一環として、この企画が毎年行われている。
「ここでの話は、他言無用を御願いしたい」
当然じゃ。と一様に口にする。
「実は・・・」
「あっ、すいませーん。まずご注文して貰っていいですか~」
話し始めると同時に、店員が会話に乱入してきた。
なんとも空気の読めない店員である。
眠そうな垂れ目の青年が、メニュー表を片手に立っていた。
ちっ、と舌打ちし「決まったら呼ぶ」と言って、人払いをする。
「はーい」と店員は素直に応じ、他の客の注文を取りに行った。
それを横目で確認し、トールは話を続けた。
「すまん、話の続きだが、俺は役場のミリィちゃんを押したいと思う」
3人の目が、キラリと光る。
「おいおいおい、今年はギルドのトットちゃんを優勝させる予定だったろうがっ!」
「おいガダン!声が大きいっ!!!」
す、すまん。とガダンは肩をすくめる。
トールは顔を下げ、悔しげな表情で首を横に振る。
「俺、もう嫌なんだ。村長のいいなりになるのはっ!!!」
ドンッ!とテーブルを叩くトール。
「お、おいっ」
仲間の制止も聞かず、話を続けた。
「だってよぉ、本当は皆がそれぞれ好きな女の子に投票して、一番を決めるのがこのコンテストだろ!」
なのに何で・・・
「毎年毎年、村長のお気に入りを一番にしなきゃいけねーんだ!」
光の鍛冶師・ガッシュがそれに同意する。
「確かに、俺もトールの意見には同意する。何が投票で決める村一番の『ぷりちーむすめっこ』コンテストだ。こんな事を許していたら、村の娘は誰も村長に逆らえなくなるぞ!」
そうだそうだと騒ぐ男達。
しかし、投票権のある成人男性は村に100人はいる。4人が結託した所でなんの意味もなさない。
「ここはどうやって村の男達を、村長の言いなりにならない様に説得するか・・・」
「しかも投票まであと3日だ。何をすれば・・・」
皆の知恵を借りたい。と神妙な顔で互いの顔を見渡す。
その後、幾つかの案が出されたが、どれも現実味のないものばかり。
行き詰ったかと思われたその時。
「すんませーん、ご注文決まりましたか~」さっきの店員が来た。
再度手を上げ、人払いをしようとするトール。
瞬間、店員の目つきが変わる。
「おいコラ」
店員がキレた。
「ここは集会所じゃねーんだ。まずは何か頼め。話はそれからだ」
最近の若者は怖い。
本当に怖い。
手にしたメニュー表をテーブルに叩き付け、「次に来る時までに決めておけ」と言い残し、再び店の奥へ消えていった。
ドラゴンに遭遇とした時の様な、心臓を鷲掴みされた感覚を感じつつ、4人はゴクリと唾をのみ込んだ。
話を折られたが再度話を・・・そう思った時、鋼のオリバーは両手をテーブルに付き、その場に立ち上がった。
叩きつけられたメニュー表を片手に叫ぶ。
「こ、これだ!これならいけるんじゃないか!?」
そう言って、オリバーが提案した案はこうだった。
メニュー表に書かれたリストの様に、言いたい事を看板に記載して村の中央に立てる。
書いた者が誰だか分からぬ様、早朝に。
内容はそうだな・・・もう村長の言いなりにはなるものかと。威厳を取り戻せと。
こんな感じでどうだと、オリバーは不敵な笑みを浮かべる。
簡単に纏めると、つまりは『スト』である。
元々村長の言いなりになっているのは、村長の意見に沿わない村人が、村長に目を付けられるから。
全員が同時に行動を起こせば、全員が粛清対象となり、個人の粛清どころではなくなるはずだ。
4人は、画期的な案に盛り上がった。
さすがオリバーだぜと、騒ぎ立てている。
その日の夜、4人は一晩中飲み明かした。
村一番の『ぷりちーむすめっこ』コンテストの成功を願って。
後日行われたコンテストで、一番に選ばれたのはギルドのトットちゃん。
つまり、看板一つで皆の気持ちは動かなかったのだ。
当然である。
世の中そんなに簡単じゃない。
PS.後日、看板に書かれた文字の筆跡鑑定が行われ、密かに4人の『異端児』が炙り出された事は、ここだけの話である。




