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俺は、王道ファンタジーを望む  作者: めぇりぃう
第1章 俺は、安定した生活を望む
48/152

48話目 オークの波は止まらない 2

前話と被っているとご指摘頂き、訂正させて頂きました。切りが悪くなりまして申し訳ございません。

 気合いを入れてスライムモデルの分体を進めさせる。向かうは近くにいる『オークリーダー』だ。コイツら包囲するだけ包囲して、しばらく動きを見せていない。魔物にしては珍しい統率が取れている。指揮官らしき奴が居るのかもしれない。居るとしてもやはりリーダーだよな。だから、俺は近くのリーダーへと向かわせた。


 この分体には魔力を殆ど渡していない。本当に形を持っただけの魔力だ。G-(最弱)程度のステータスしか持っていない。触れれば弾けそうな程弱いこのスライムだからこそ、相手側の真意が分かるというもの。侮り潰されれば開戦だ。



 スライムモデルの視界に『オーク』達の姿が映る。実に凄い光景だ。圧巻、その一言に尽きる。巨躯の『オーク』を見るにゃ、小柄なスライムは上を向かなきゃいけないってのが要因だろうさ。今までフルボッコにしてきた奴らだけど、ここまで群れると怖いよなぁ。



『あーあー、聞こえるか?俺はこの先で暮らしているスライムなんだけど──』



 と、語り出した俺(の分体)に対して『オークリーダー』は応えた。



 持っている棍棒を振り下ろし潰す、という宣戦布告の形で。



 畜生。せめて最後まで語らせろよ。折角こっちが和平交渉しようとしているのにさ。その言葉を待たずに攻撃開始とか、信じられねぇよ。


 貧弱ステータスな俺がその棍棒を避ける事は出来ない。真正面から打ち付けられて潰された。プチッと簡単にな。しかしその音が、何処から聞こえたか分からない。


 その『オークリーダー』の振り下ろしを合図に奴らは動き始めた。我先にと俺がいる円の中心へと駆け出したのだ。


 ああ、最悪だ。開戦してしまったのか。


 体が震える。その震えは恐怖からではない。少しだけ、魔物としての本能が疼く。人間の頃持ち合わせていた理性よりも、その本能は力が強かった。いや、理性が勢いを失ったのかも知れない。いつもいつも正当防衛を立てなければ戦えなかったのは、理性が俺の中で最大勢力であったから。それが衰えれば次に出てくるのは魔物に備わる一つの本能。



 戦闘本能。



 生きたいと望む生存本能よりも強い。魔物は獣では無い。生き残る事よりも闘う事を望んでしまう。


 絶望に近いこの状況。敵は200近く、その中には同格の魔物もチラホラといる。圧倒的な窮地だ。


 少し前──分体が潰されるまではビビっていた。検証という形で納得させなければ、正直言えば逃げ出していただろう。戦闘意欲は無かったのだ。


 それなのに、今や無性に戦いたい。潰したい。それが狂気だと理性が叫ぶも、そんな事気にしていられない程うずうずする。



 暴れたい。



 その気持ちを抱いてしまった俺は行動を開始させる。


 餌に群れる愚かな豚を喰らうために。



 こうして嵐のような1週間が始まった。




 ※ ※ ※




 『オーク』達の駆け出しを気配で読み取っていたから後手に回るような真似はしない。あくまで迎撃、されど殲滅。そこには自身の安全より敵を屠る事を優先させる思考しかない。いいだろう戦争だ──だ。分体スライムを潰されてから数秒後には影狼形態(シャウルモデル)豚長形態(オーダーモデル)を前線へと突入させていた。


 2体の狼は木の影に潜る。その中をかなりの速度で移動しながら、駆けている『オーク』を捉える。外から影の中を見ることは出来ないが、影から外の景色を見ることは出来る。卑怯にも俺はその能力を大いに使わせていただいている。


 タイミングを合わせて影から飛び出し爪を振るう。後ろから首を抉るべく繰り出した技は、容易くその首を切断して見せた。その威力はまさに鎧袖一触。ただの《引っ掻く》では無く、魔力マシマシの引き裂くだ。


 この技は広範囲に効果をもたらすものでは無い。横薙に《溶解液》を打ち出せば複数にダメージを与えられるかもしれないが、それはまだ使いたくはない技だ。視認されていても躱せないだろうし、今は一体ずつ屠るべく直接引っ掻いている。


 見えない敵からの攻撃とは厄介なものだ。そこに音もなく、気配もなく、という要素が加われば尚更。ガードも抵抗も出来ないのだから残酷で無慈悲な一撃となる。いや、気付く間もなくあの世に逝けると思えばラッキーなのかもな。


 影から影へと飛び移りながら、次々と『オーク』を撃破していく。10体近く屠った時には、その周りに居る『オーク』達には混乱が広がっていた。仲間たちが不可視の攻撃で倒れていく様は恐怖でしかないのだろう。慌てて止まり武器を構えて辺りを見渡す者、騒ぎながらも進もうとする者、蹲ってしまう者。反応こそ違えど一様に恐慌は見受けられる。


 これで、第一の撹乱は成功だ。未だに10体未満しか狩ってはいないが、その倍以上の足止めには成功したから。続いて豚長形態(オーダーモデル)の突撃だ。一目見ただけでは仲間からの裏切り。更に混乱を与えられるだろう。期待しながら前へと動かした。

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[良い点] 面白いです。 [気になる点] 前話と内容が一緒のところがあります。
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