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俺は、王道ファンタジーを望む  作者: めぇりぃう
第3章 私は、冒険者への道を望む
152/152

152話目 悪魔の王

お久しぶりでございます。大学の後期試験がありまして、忙しさのあまり執筆出来ませんでした。普段から勉学を怠っていた愚者の末路ですね。

追再試験に引っかかりそうなのでまた消えるかもしれません。が、一応続けていく予定ではあるので偶に覗いてくれれば幸いです。


 次に気付いた時、ララは地面に叩き付けられていた。


 ララの直前までの記憶では、金属棒で小柄な悪魔を突き刺そうとしていた。他の2柱を糸で縛り付け、無防備な悪魔をその胸部にある魔石を抉らんと最高速度で突撃し穿いた、その筈だ。


 抉り抜くという手応えより先に感じた上方からの衝撃。一瞬視界が揺らいだと思えば景色が下から上へと高速で流れて行き、そして地面に墜落した。予想外の、完全な不意打ちに近い攻撃に依って思考が停止したこともあり、ララは無抵抗に落下してしまったのだ。


 地面との衝突は轟音、クレーターを作り出した。生身の人間であらば重症必至。死に至っていてもおかしくない衝撃だった。実際にララの体を激痛が襲っていた。



「ララーーっ!!」

「っ!!」



 オリビアの呼ぶ声にハッと目を覚ます。



(なにが、起きた......!?)



 凹んだ地面から体を持ち上げる。それに伴い付着していた砂や石が音を立てて落ちた。


 地面と接触した全身が軋み、打たれたと思われる首裏が痛む。その鈍痛を堪えながら、震える体を無理に動かした。



(いや、理解はしている。あの瞬間に殴られた......というより叩かれたんだ。羽虫を落とすかのように。事実地面に叩きつけられた訳なんだけど)



 両手を着いてゆっくりと立ち上がり、身に付着した汚れをはたいて落とす。それと同時に自身が数秒前まで居た上空を見上げた。


 数分前まで空を覆い尽くしていた黒い影は消え失せ、美しい青空がよく見える。残る悪魔は中級以上が数柱ばかり。ララの分体が中級悪魔の数を減らしていたのだ。数秒前と何ら変わりのない景色だ。


 ただ1柱。異様な気配を放つ悪魔1柱を除いて。



(魔石への負傷は無し。魔力も十分だし戦闘は継続可能)



 ララは己の状態を確かめる。物理攻撃に耐性を有するスライム。その弱点が魔物の心臓である魔石だ。その負傷以外はスライムにとって傷とはならず、幾らでも戦闘を続けられるのだ。


 ララは人型をとっているものの、肉体の構成要素は人のそれとは異なっている。喩え切断されたとしても圧し折られたとしても、直接的な傷とはならない。ただし痛覚というデメリットだけは背負っている。人型を取るにあたり味覚とセットで付いてきた痛覚。ララは今、元の姿なら感じない筈の痛みを存分に味わっていた。


 大きく息を吸い、そして吐いた。呼吸を整えることで痛みを緩和させる。幸い進化してきた多種多様なスライムの中に、無用かと思っていた痛みへの耐性を持つ形態があった。その恩恵に縋りながら無理矢理涙を引っ込める。そして新参の敵を観察をし始めた。


 新手の悪魔。2本の角を頭に生やし、背中から大きな羽を生やす。体格は一般男性よりやや大きめ。筋骨隆々とは言わないが細身という訳でもない。ガタイの良い肉体だ。


 外見は今まで居た悪魔達とさほど変わらない。より人の姿に近くなってはいるものの、大差と呼べる違いではなかった。


 ララが一番に気付いたこと、それは目を逸らしたくなるほどの魔力量。空中に立つ悪魔は現在ララが有するより多く魔力を保持していた。


 魔物の戦闘は魔力の総量で決定すると言っても過言ではない。魔力は魔物にとって命であり、己の力を最も簡単に示す数値であるからだ。


 魔力さえあれば格上をも御せる。逆に魔力が無ければ格下にも劣る。それはララがよく理解していた。


 全体的なステータスの低いスライムは魔力量だけが唯一の取り柄。それだけは相手に勝っていたからこそ、今まで格上との戦闘でさえ勝利を収めていた。


 そんなララよりも魔力量が多い格上。悪魔であるならばステータスはスライムを遥かに上回るだろう。決して同格と呼べる相手ではない。これとどう戦えば良いのだろうか。



(と言っても現状だけを見た比較だ。俺には魔力タンクが数体あるし、あの後ろの悪魔達を喰えば回復出来る。だからこれについては問題無し......と信じたいなぁ......)



 疑惑を無理矢理捻り潰し、観察を再開する。


 次にララが気づいたこと。それは悪魔が放つオーラだ。肌を刺すような威圧感。圧倒的な強者の出で立ち。無意識に屈服しかねない、そんなオーラを放っていた。


 別格。明らかに今までの悪魔とは格が違う。それは正しく王者の風格とも呼べるものだ。


 これにより、もしかしたら見掛け倒しの雑兵かも、という希望も無くなった。彼は間違いなく悪魔の長にあたる存在。この悪魔達の統率者という事だ。



(問題は勝てるかどうか、だよな)



 ゴクリ、と生唾を飲み込む。嫌な汗が頬を伝い流れ落ちた。先程までの余裕は何処へやら。


 現在、ララの脳内には「何とかなるか」という楽天的な思考、「死ぬかも」という本能的な思考、そして「早く倒しとけばよかった」という後悔がせめぎ合っていた。


 想定よりも絶望的な相手だ。彼のような存在をララは認知していたものの、彼我の戦力差までは把握していなかった。どうにかなるだろう、という烏滸がましい判断で


 髪の毛を掻き毟る。透き通るような長い銀髪がララの手によって乱れた。



(倒すのは難しい。なら時間稼ぎをするか)



 悪魔達には時間制限がある。異界である現世に留まる為、その肉体を保持する為常に魔力を消費するのだ。特に格の高い悪魔の消費量は絶大。静止していたとしても数時間で力尽きるだろう。


 それにかけて逃走を選択してもいい。ちまちまと攻撃を当てながら逃げ回る。自分を狙うよう仕向けて相手に魔法を使わる事が目的だ。時間をかけ、この王都に被害が多く出るかもしれないが、それに目を瞑れば勝機はある。


 森の中でも行った事のある戦法だ。休みなく戦い続ければ何時かは倒れる。それを待つという、回復手段のあるララだからこそ出来る手法だった。


 この時、悪魔にも回復手段がある事をララは忘れていた。



「ララ、大丈夫!?」

「ん?あぁ、大丈夫大丈夫。危ないから近付くなよ、オリビア」



 必死に作戦を考えていたララの近くにオリビアが駆け寄る。そして心配気に声を掛けてきた。ララは笑って言葉を返す。作り笑いは上手く出来ていなかった。



(そうだ。オリビア以外どうなってもいい。オリビア以外の結界を解除すれば......)



 この場にいる人間を守るべく張っていた結界。それを無くせば多少の猶予は作れるだろう。いっそ生徒達を生け贄にすれば僅かでも時間が稼げるかもしれない。管理下にない人間の命なんてどうでもいい。死のうが生きようがどうでもいい。オリビアが悲しむかもしれないが、己等の命の方が優先的だ。ララの中でその算段が立てられていく。


 その時、背中から声を掛けられた。



「無理しちゃ、駄目だよ......?」



 オリビアも少なからず理解していた。新たに現れた悪魔が別格な存在であることを。


 振り返ったララの顔を見てそれを確信する。ララの表情は焦燥に染まっていた。危機的状況にあるのだと聞かなくとも分かる。こんなララを初めて見た。恐怖し、震えているララを。敗北する可能性が大いにあるのだと気付いていた。



「......何言ってんだ?俺が無理しなきゃ勝てないと思ってるのか?」

「ううん。私はララを信じてる。ララならきっと倒せるって信じてる。だけど、無理はしちゃ駄目」



 オリビア自身は諦めていなかった。


 逃げれば自分達は助かるかもしれない。他の皆を切り捨てて、自分だけ逃げれば助かる可能性は大いにあるだろう。ララの力を使えば討伐は出来なくとも逃走はできる。


 しかし、皆助かる可能性もあるのだ。自分が逃げを選択しなければ、助かる見込みが僅かにでもある。ララには酷だろう。我儘な主人だ。従魔(ララ)の事を考えていない。それでも、戦闘の継続という決断をした。



「......分かった。無理せずぶっ殺してくる」

「うん」



 その言葉を残し、ララは再び地を蹴って空中に飛び上がった。オリビアは小さく声を掛け、その背を見送る。きっと自分に出来ることなんてないだろう。だからこそ、信じて待つだけ。ララの、己の従魔の勝利を信じるだけ。



「敵対者は必ず殺す。ご主人様(オリビア)の命令は必ず果たす。悪魔共は殲滅する」



 ララの表情から焦燥感は失せていた。肉体の震えも止まり、その目に強い意志が再び戻っていた。


 オリビアの言葉はララを強く動かす。従魔(ララ)は愚直だ。愚直に主人(オリビア)の命令を遂行する。自分達の意思なんて二の次。全ては主人の為に。それが従魔の原動力だ。


久しぶりに書いたらよく分からない文章になりましたとさ。めでたしめでたし


※次回は来週です

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