始まり
こんにちは。
藤咲光月です!
初めて小説の投稿です。
至らぬところもあると思いますが、よろしくお願いします!
ジャラジャラと鎖がぶつかり合う音が冷たく暗い部屋に響く。
部屋には汗や排泄物などの匂いが充満していて、人が暮らしていれるような環境ではなかった。
しかしそこに並べられている無数の檻のなかの一つの小さな檻の中、鎖に繋がれた先には肋骨が浮き出てはっきりと見えるほどガリガリにやせ細った少年が。
彼は垢や泥で汚くなってはいたが綺麗な深い海を思わせる蒼色の髪に幼さの残るものの端正な顔立ちをしていて、小奇麗にしていれば多くの人のハッと目を惹くであろう容姿をしていた。
部屋には少年の他にもそれぞれ狭い檻に入れられた人々がいて、彼等は老いも若きも性別もバラバラだが彼等に共通して言えることは暗く濁った目を宙にさまよわせていることだった。
しかし少年はただ一人だけ自分の足首を拘束する鎖を憎々しそうに睨みつけていて、彼はこの空間では間違いなく異分子な存在だった。
少年が鎖を外そうと足に繋がれた枷を引っ張っていると、不意に時折鎖が立てる音以外聞こえない空間に数人の足音が聞こえてくる。
コツコツと規則正しく響く足音はだんだんと大きくなっていって、足音は少年を閉じ込めている檻の前で止まる。
それに気がついた少年はギクリと身体を強ばらせ、その振動で錆び付いていた鎖が耳障りな音を立てる。
ーーーーーーー開けるな。
少年の願い虚しく扉の鍵が開かれ、狭い檻の中で震える身体を足音の主達から少しでも遠ざけようと鉄格子に背を押し付けている少年の身体を、扉を開けた背の高い男が引っ張り出そうと手を伸ばす。
太い丸太のような腕に少年は腕を掴まれて、少年の喉の奥からひっと引き攣った声が上がる。
しかし男達は真っ青な表情の少年の様子に目もくれず、抵抗する少年を檻から引きずり出す。
ジャラジャラと耳障りな音を立てながら鎖に繋がれているせいでろくに抵抗も出来ずに引きずり出されて、自分を囲む男達を睨みつける少年。
しかし男達は少年が睨みつける眼光にもたじろいだりする様子も見せない。
少年がこれからどうされるのかを混乱した頭で考えていると、1人の男が手に持っていた鉄の棒を持ち上げる。
それは男の身体の後ろに隠れていて、今までその存在に気が付かなかった少年。
ーーーー焼印?
中心に立っているその男が持っている物が何だか、冷静になりかけた脳の片隅で理解した少年はハッと目を見開く。
「離せぇっ」
少年の喉から悲鳴にも近い声が漏れる。
しかし、男達は少年の言葉には耳を傾けることなどしない。
じたばたと暴れだす少年を男達はいとも簡単に押さえつけて、少年をうつ伏せの状態で地面に押し付ける。
「ぐ、ぅ」
冷たく硬い床に力ずくで抑えられた少年から苦しそうな呻き声が上がる。
手足と後頭部を押さえつけられて動けなくなった少年。
少年が大人しくなると、男は赫く炙られた鉄の棒を少年の無防備になった項に近づける。
「やめ、」
恐怖で震えながらも言葉を発した少年。
しかし、言い切らないうちにジュッと鉄の棒が彼の項に押し当てられ、肉の焼ける音と匂いを上げて彼の項が焼ける。
「ーーーーぁ、」
火傷をした時なんて比べ物にならないくらいの痛みに襲われ、ギクリ、と今までバタバタと抵抗していたのが嘘のように動きを止めた少年が消え入りそうなほど小さな声で悲鳴を上げる。
ーーーーーーーーあつい
額と言わず、全身からねっとりとした脂汗が噴き出して背筋を流れ落ちていく。
普段なら不快だと思うその感覚も意識の片隅に放り捨てられ、脳内で痛みを伝える信号が鳴り響き、少年の脳内をその言葉だけが支配する。
グッ、と仕上げとでも言うかのように男は最後に強く鉄の棒を押し付けて、あっさりと離れていく。
少年の項に残った、プスプスと音を立てて煙を上げる黒く焼き焦げた跡。
痛みが与えたショックにより、放心状態で固まった少年の身体を無理矢理引きずり起こした男達は、抵抗する気力も残っていない少年を放り投げるように檻の中に戻すと、ガチャンと音を立てて扉を閉じる。
男達は用は済んだと言わんばかりに少年の前から去っていって、足音はだんだん小さくなっていく。
だんだんとショックから戻ってきた脳内。
じわじわと襲ってくる少年の知っている言葉では表せ切れないほどの痛み。
生まれてこの方泣いたことのない少年だったが、自分の中の許容量を超えた出来事に見開いたままの瞳から一粒の涙か零れ、それを皮切りにいくつもの雫が瞼を乗り越え、床に小さな染みを作った。




