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第三十五話

公爵の居場所は直ぐに分かった、『比較的大きな屋敷が公爵の家です。』と兵士が教えてくれたからだ。扉を叩くと初老の執事が出てくる。

「失礼します、レイウェル公爵は居られますか?」

「どちら様でございましょう?旦那様は御用件が無ければお会いにはなれませんが。」

「これは申し訳無い。私はヴァルトと言う者です、公爵にお伝えいただければお分かりになられると思いますのでお伝え頂けますか?」

「少々お待ちください。」

扉の奥に引っ込んだあと、数分して扉が勢いよく開いた。

「おお、ヴァルト殿。よくいらっしゃいました、ささ、中にお入りください。」

何か公爵の腰がさらに低くなっている気がするのは気のせいだろうか?

「ヴァルトでいいと言っていた筈ですが、何で敬語に戻っているのですか?」

「この街を助けて頂いた恩人を呼び捨てには出来ません。」

本人が納得しているなら良いか。話ながら本が並べられている書斎のような部屋に案内される。この世界では活字印刷がまだ普及していないので本は手書きのままだそうだ、一冊だいたい金貨二十枚ほど必要らしい。なお、文字は大陸の公用語であるマハトラ語らしいが魔法で自動的に翻訳されるようだ。凄い技術だ。ぜひ我が国にも欲しい。

「でしたら本題に入りましょう、目下の対処のことです。」

「敵は防いだとお聞きしておりますが?」

「陸軍は、ですね。他にも海軍と空軍がいるはずです、それを撃退しなければ勝利にはならないでしょう。あと捕虜の件です。」

陸軍を倒して有頂天になっていたようだ、顔が真っ青になっている。

「ど、どうしましょう。」

「その為に必要な情報を確認しに来たんです。幾つか質問がありますので、その内容で作戦も変わりますから。」

「分かりました、何でも聞いてください。」

「海軍の基地は片っ端から調べますので大丈夫です、多量の船舶を隠すのは物理的に不可能でしょう。ですので上空から見れば一発で分かります、問題は空軍の方です。」

「はぁ、空軍ですか・・・。」

「我々は飛竜の事を詳しく知りません、ですので詳しく教えていただけますか。」

「分かりました、では飛竜の生態的な特徴からお教えします。飛竜はドラゴンの一種だと考えられています。」

ドラゴンにしては弱そうな感じがするのだが・・・、話の邪魔はしないように考えるだけに留める。

「ドラゴンに比べて弱いですが、ドラゴンは飼い慣らすことは不可能ですので、結局飛竜に落ち着いたのです。」

ドラゴンの方が長く飛べるし強いそうだが飼い慣らし安いそうだ。

「卵から育てる事はしないのですか?」

「しようとしたのはいるのですが・・・。」

「不味い事でもあったんですね。」

「その通りです、卵を追ってきた親竜がその国にやって来たそうです。それも300匹近い群れが。」

有効な対空攻撃手段がないのでは蹂躙されるだけだろう、しかも怒りで我を忘れている状態では天災の様なものだ。

「結局その国の首都一帯が焼け野原になりました。それ以降やろうとするのは強制的に排除されています。」

「殺すんですね。」

「その前に教育とかはしますが、それでも無理な場合は・・・ですね。」

さもありなん、わざわざ自殺しようとするヤツに付いていくのはいないか。

「おっと、少し暗い話になりましたな。雑食ですので一日100キロ位の野菜等も食べます。当然肉が好物ですので一週間に一回は肉を食わせないと不機嫌ですね。」

「不機嫌なの関係ありますか?」

「乗り心地に直結しますから。」

なるほど、となると維持するのに相当な家畜がいるということか。大都市、それも海に近い都市が有力だな。

「飛行時間はどれくらいですか?」

「油壺を抱えた状態で大体三時間が限界ですね。」

速度は200キロ位なので半径600キロメートルが攻撃範囲か、これだけ分かればどこが基地なのか絞るのはそう難しくないだろう。

「ありがとうございます、これで作戦が練れます。捕虜はどうしますか?」

「こちらでは受け入れてもどうにもできません、ですが高位の者たちは交渉に使えると思いますから受け入れたいと思います。」

「分かりました、装備などはこちらが頂きますが、宜しいですか?」

「それは当然の権利です、お持ちください。できれば食料をこちらに融通していただけると助かるのですが。」

「分かりました、すぐに運ばせましょう。では失礼しますね。」

「よろしくお願いします。」

公爵の家を出て、防衛を命じていた師団長に会いに行く。ここの防衛はまだ続く、労っておかないとやる気も出ないだろう。

「ご苦労様、綾瀬師団長。」

「お帰りなさいませ、閣下。」

師団長のテントに入ると副官と地図を見ていた。

「お邪魔したかな?」

「いいえ、問題ありません。今は兵器の配置確認等をしておりました。」

「そうか、先の戦いの犠牲者は?」

「死者はおりません、負傷者が数名出ただけですので圧勝と言っても良いでしょう。」

「死者が出ないのは良いことだ。飛行艇で甘味等を運ばせたから皆に配ってやってくれ、特配だと言ってな。」

「ありがとうございます。」

「これくらいはしてやらんとな、では引き続き防衛頼むぞ。」

「了解しました。」

陣地の確認もしておきたいが、今は敵の講和を引きずり出すのが先だな。内火艇で翔鶴に乗り込み出港することにした。

街で不足している物資は間宮と明石から供出することにした。それでも足りないもの(陣地の構築に使用したコンクリート、保存用の食糧等)の物資はニライカナイから輸送艦で運ぶことになった、結構な量になったので高速輸送艦は4隻、捕虜収容所警備部隊用の高速輸送艦2隻、護衛は一個駆逐戦隊が当てられた(松を旗艦とする4隻)。

なお捕虜は大半が負傷兵であり人数は合計で3万近くいた(他は原形を止めないくらいミンチになったり、逃亡したようだ。死体は纏めて穴に埋めた後ガソリンをぶっかけて燃やしておいた、そうしないと獣が寄ってくるからだ。)、高位の貴族は公爵に引き渡し一般兵は治療をするもの以外武装解除させ、ヨルトリンゲル郊外に捕虜収容所を造りそこに入れておくことにした、負傷兵の方は治療が終わるまでは解放しない方針だ。報告では一月以内には治療が完了出来るそうだ。収容所は空堀で囲み鉄条網と地雷原も造るように指示させた、三日で出来るそうだが警備に当たる人員をヨルトリンゲル防衛部隊から供出するのは厳しいので警備部隊も次の輸送に追加させた(一個大隊)。兵士から没収した武器は大半が鉄製であったが、不純物の多い鉄であろうと言うことだった。高位の者が使用していたと思われる剣は見た感じ銀のようだった、鉄より弱い筈なのだが耐久力が段違いで鉄の数倍はあるとのことだった。それでいて重量は鉄の三分の二という軽さである、実に素晴らしい。これを用いれば空母の装甲化、車輛の軽量化等上げれば切りがない効果が期待できる。これらは最優先でニライカナイで研究するようにとの命令を与えた、ただし運ぶのは輸送艦でないと厳しいので帰りに運ぶことになっている。ニライカナイにて進めている新兵器群の開発の役に立つだろう。

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