〈chapter:09-03〉
【前回のあらすじ】
変態が免罪符を手に入れました。
「で、でもちょっと待ってくださいジョージさん! 言いだしっぺの私が言うのもなんですが、ジョージさんに恥じらいや躊躇いはないんですか!?」
「恥じらい? 躊躇い? なんだいそれは美味しいのかい?」
ダメだこの変態!
私を逃がすつもりがありません!
「あぁ、楽しみだなぁ。何をしてもらおうか。ああそうだ、あれにしようそうしよう。ちょっとだけここで待っていてくれマイドーターすぐに戻るから」
そう早口でまくしたてて、ジョージさんはいったんリビングから姿を消します。
あの迷いのなさ。そして行動力。もう間違いありません。どうやらジョージさんは初めから、ここまでの展開を予想して動いていたようです。
「な、なんて用意周到な、変態なんですか……っ!」
私は今さらながらに、自身の不用意な発言を恨みました。
しかし今の私はすでにまな板の上の鯉。
物理的にも精神的にも逃げ道はどこにもなく、ただ処刑の執行を待つしかありません。
そして……
「お待たせしたね、マイドーター。とりあえず、これに着替えてくれないか?」
リビングに戻ってきたジョージさんが手渡してきたのは、私立白鷺中学校の制服。
つまり私の制服です。
今さら「なぜジョージさんが私の制服を所持しているのか?」「どうやって部屋に侵入したのか?」「その行為に躊躇いを覚えなかったのか?」というありふれた疑問など、口にする気も起きません。
それらはたった一言で説明できるからです。
なぜなら変態だからです。
それよりも……
「あ、あとこれも被ってきておくれ」
そう言って制服と一緒に手渡してきたのは、私の髪の色と同色のウィッグ。
長さはセミロング程度であり、ややクセ毛な私のそれをそのまま伸ばしたような質感のそれは、私の頬をヒクヒクと痙攣させるには十分なものでした。
きっとこのときの私は、死んだ魚のような目をしていたと思います。
それでも「早く早く。マイドーター、あまり焦らさないでおくれ」と異常なハイテンションなジョージさんに急かされて、私はほとんど無意識のままリビングの隣の部屋で着替えを行います。思考を停止。ヤケになっているとも言います。
でもそれでも……
「……」(ヒクッ、ヒクッ) ←うつろな瞳で頬を痙攣させる私。
「っ! さすがマイドーター! よく似合っているよ!」 ←大はしゃぎのジョージさん。
これは流石に、ひどくないですか?
だって制服はまだしも、ジョージさんに渡されたウィッグを被った今の私はまさに……
「やはりマイシスターのドーターだね! こうしてみると本当に、むかしのマイシスターみたいだ!」
ええ、ジョージさんの言うとおり何度か写真でみたことがある、中学校時代のママ。
そのもの、なのです。
「うん、うん、いいね、すごくいいよマイドーター。ベリーグッドだ。さすがファミリー。『瓜二つ』どころかまさに『生き写し』だ。もういっそ、マイシスターと呼んでも構わないかな? 構わないよね?」
死体にたかるハエのように、
ジョージさんが気持ちの悪いことを言いながらチョコマカと私の周囲を動き回ります。
「そ、ジョージさん? それで私はいったい、この格好で何をすればいいんですか?」
それでも、せめてはやく『ご褒美』を済ませて、この生き地獄を終わらせたい。
その一心で、私がそんなことを口にすると。
「そうだねマイドーター。じゃあそのまま格好で……」
ジョージさんはまるで、純粋無垢な少年のような笑顔で。
「……俺に、『愛しているわジョージ』と言っておくれ」
「……」
ぷちっ。
その瞬間、私の堪忍袋の緒がぶち切れました。
「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああもう気持ち悪いきもちわるいキモチワルイ! 何!? 何なんですかその徹底したシスコンキャラは! いくら叔父とはいえ、姪にそんなこと言わせます? しかもじつの娘にママの真似をさせて『愛してる』発言とか、もうそれただの拷問! 変態を通り越して鬼畜の所業ですよ!? 心の底から本当に気持ちが悪いです! この変態へんたいヘンタイ!」
ようするに。
ジョージさんは、変態です!
というわけで、やっぱりジョージさんは最後まで変態でした。
カノンちゃんの苦労はまだまだ続きます。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。




