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プロローグ
昔々、人間たちが今よりも広い世界を知らなかった頃。
空を覆うほど大きな、一匹の黒竜がいました。
黒竜はとても強く、そして残酷でした。
気に入らないものがあれば鋭い爪で引き裂き、退屈すれば町や村を炎で焼き払いました。
人間が泣き叫び、逃げ惑う姿を見ることが、黒竜にとって何よりの楽しみだったのです。
やがて人間たちは、黒竜へ立ち向かうことを決めました。
多くの者が剣を取り、魔法を携え、命を懸けて戦いました。
空が炎で赤く染まり、大地が揺れるほどの、長く恐ろしい戦いでした。
そして、その戦いを境に、黒竜は山奥から二度と姿を現さなくなりました。
黒竜が死んだのか、それとも人間の目が届かない場所で眠っているのか、誰にも分かりません。
ただ、それ以来、山の麓に暮らす人々は、子どもたちへこう言い聞かせるようになりました。
——決して、山の奥へ入ってはいけません。
もし暗闇の中に、燃えるような二つの赤い瞳を見つけたなら。
そのときにはもう、逃げても遅いのですから。




