親子ですか?勇者さま。②
予定の通り、後編の投稿です。
前編に引き続いて、お楽しみ下さい。
では、『親子ですか?勇者さま。後編』どうぞ♪
「何が 『 行くぞ! 』 よ!この唐変木は!!」
「誰だ!我に生意気な口を利くのは・・・んっ?! この声は?」
「今、何て言ったのかしら?、、私にもう一度言ってごらんなさい…バラン!」
「バラン?、、なぜ、その呼び名を、、!!!」
相手には見覚えが有る…というか、忘れる筈が無い…だが、そんな…その姿は、、
「まさか・・・ファ、ファリス・・・なのか?」
「お婆ちゃん…」
「お婆様…」
ルチアは泣き顔のまま治療を頑張ってくれている。
「そうよ、フェンちゃん。…で、バラン、貴方、今、私の孫達に何て言ったのよ!」
好きだった女性が、昔のままの美しい姿で目の前に現れたら誰だって平静では居られないだろう。
それは獣王でも例外ではなかった。
「いや、それは…その…」
「私の聞き間違いかしら…フェンちゃんを『黙らせて』、ルチアちゃんを『処分する』って?」
「私の可愛い孫達に何を言ってくれたの?・・・ねぇ、バラン。」
・・・ガルンさん、、勇者パーティーではバランって呼ばれてたんだ・・・
フェンの知らない勇者パーティでの話し…呼び名一つでも聞くだけで身体が熱くなる気がした。
「いや、そう、誤解だ。ただの誤解だ!」
「ふーん。誤解ねぇ…そう言えばフェンちゃんボロボロじゃない…どうしたの?」
「・・・・」
「ねぇ、誰かにやられたの?、酷いよねー、誰にやられたのかなー?」
「ねぇ、、バラン? (怒) 」
咄嗟に 『 バッ 』 っと、ガルンさんが手を挙げた。
「俺だ! 俺がやった。」
「はぁー?バラン、貴方、誤解でウチのフェンちゃんをボロボロにしたって言うのね?」
「しかも…昔のパーティメンバーにまで剣を向けるなんてね…最低!」
「昔の?、、何の話だ?」
「たった今、斬り捨てておいて知らないとでも?」
ファリスがキッドの方を見るのにつられてガルンも見る。
「あの男が…?」
「貴方も薄情者よね、バラン。キッドも可哀想に…」
「…キッド?…キッド?!」
「そうよ。一緒に魔王城の前まで行った仲なのに…メンバーの顔すら覚えてないなんて。」
「きゃっっ!!」
突然のルチアの声に驚く・・・何が?・・・
治療していたルチアを押し退けてキッドが立ち上がったのだ。
「あら、キッド、、もう大丈夫な訳?」
…大丈夫な訳が無い。
キャスティを庇って獣王の一撃を受け、先程まで血が噴き出していたのだから。
キャスティも脇で見ていて驚きを隠せない…なぜ立ち上がれるの?、と。
それでも立ち上がる蒼白い顔の父を『ふるふる』と、首を横に振り信じられないと、見つめるばかりだ。
ヨロヨロと前に進み出るキッド。
「獣王、いや、バラン様…この度は娘が、、申し訳、、ございません。」
ん、?…娘?…この娘がキッドの娘…なのか?
「この上は、この命を以て償います、、なので、どうか…どうか娘の命だけは…」
「ファリス様…この様な私をパーティの仲間と呼んで戴き、、感謝します。」
向けられたキッドの笑顔は蒼白なのに、なぜか爽やかに見えた…
「!!…止めなさい!!!」
ファリスが叫んだ・・・キッドが何をする気なのか気付いたのだろう。
だが、その制止は聞き届けられない。
一瞬の出来事だった。
キッドが剣を抜き、首筋に当てて…引いた。
激しい血飛沫が飛ぶ。
「き、きゃーーー!!」
「い、嫌ーーーっ!父さん!!」
今まで自分が治療していた者が自ら首を切ったのだ…ルチアにはショックどころの話しではない。
キャスティも自分の為に父が己の首を掻き切るなんて思いもよらなかったのだろう。
呆然と『どうして…どうして…』と、泣きながら繰り返すばかりだった。
ルチアはショックの余り、『あ、あ、、』と、固まってしまっている。
フェンもショックだった。
父親、、親子とはこういう者なのか、と。
…そう。確かに首を掻き切った事はショックだった。
が、別の…その行動、考え方の、あまりの違いにショックを受けたのだ。
娘は父を、、、父は娘を、、、
お互いがお互いを思い、、助けようと行動している、、、。
フェンの父ロベルトは、己の目的の為にフェンを殺そうとしたのだ。
なのに、、キャスティの父は己の命を擲ってキャスティの、、娘の命を救おうとしたのだ。
…父さんは…なぜ父さんはあの時、あんな事を?
フェンの問いに答えてくれる父はもう居ない。
だが、目の前に居る娘、キャスティの父親は目の前に居る、まだ生きている。
キャスティが問えば、まだ答えてくれるのだ。
父親の行動を現実として受け止め難く、嘘だと思いたいキャスティ。
「嘘よ、、嘘だと言って!…父さん強いもんね?…こんなの嘘よ!!」
フェンは固まって動けなくなっているルチアに言う。
「ルチア!もう一度キッドさんに治癒の魔法を!」
「お婆ちゃんも!早く、、この人を死なせちゃ駄目だ!」
自分で言っていて思う。
『 羨ましい 』 と。
『自分もあの時にこんな風に言えたら…』と。
そう。キャスティの父に対してではなく、自分の父、ロベルトに言いたかったのだ…
・・・言えれば良かったのに、、
現実はそれを許さなかった。
ロベルトはフェンを殺そうとし、そして爺ちゃん…ジンが勇者として討ったのだ。
フェンは命拾いし、そして父の死を前に…『ホッと』したのだ。
父を助けたいという気さえ起きなかったのだ。
父と自分…どちらかが死ぬまで戦うしかない場面。
自分では『殺せなかった』だろう。
その役目を爺ちゃんが代わってくれたのだ。
フェンが『父を殺す』事は免れたが、代わりに爺ちゃんが『義息子殺し』の業を負ったのだ。
爺ちゃんは義息子殺しとフェンの父親を殺したという『傷』を引き受けたのだ。
フェンの言葉に我にかえりルチアはキッドに駆け寄るが、傷と溢れる血を見て後ずさってしまう。
「大丈夫よ、ルチアちゃん…キッド君は助かるわ。」
「力を抜いて私を感じるの…そして、心に浮かんだ言葉通りに呪文を唱えるのよ。」
初めての二人の、、祖母と孫の共同作業…効果は覿面だった。
ファリスの力をルチアが媒介して使ったのだ。
教団の本拠地から離れると力が弱まると言っていたファリスだが、ルチアという若く生命力溢れる使い手を通して力を使ったのだ。
特に今は、お兄様に、、フェンに会えたというルチアの嬉しさからくる精神力…心の力の向上、充実度は目を見張る物が有ったのだ。
心配して損した、と言われそうな程に呆気なくキッドの傷は塞がり、気色も戻って来る。
「父さん!…父さん、、良かった…。」
キャスティは戦士としてではなく娘として、父親の無事をただ喜んだ。
「さて、、と、あと治療が必要な人は?」
治療が終わりファリスが呟く。
・・・あ、!
「お婆ちゃん!」
「なーに?フェンちゃん。」
「お婆ちゃん、お願い。あの紅い鎧の、、リカを治して欲しいんだ。」
「ふーん。あの鎧の子、リカって言うのね?名前からして女の子かな?フェンちゃんの…」
「ガルンさんの娘なんだ!」
「えーっ、フェンちゃんの好い人とかじゃないの?」
目に見えて『 やる気 』が下がった気がする。
「って、お婆ちゃん!、いいから早く治療してあげて!」
「もう、分かったわよ。お婆ちゃんに任せれば、すぐ治るわよ♪」
「それから、バラン!、キッドが起きたら謝っておく事!、いいわね?」
「そ、それは…」
「あー、疲れたわーっ。貴方の娘を治療する力はもう残って無いかもねー。」
「わ、分かった!謝るから娘を…リカを頼む。」
「ちゃんとよ!ちゃんと謝るのよ?」
「あ、ああ、了解した…」
ファリスとルチアの二人によってリカの治療も問題なく終わる。
他の捕まっていた獣人の人達も『 サービスよ♪ 』と言って全て治療してしまった。
治療が終わる頃には霊体であるファリスを『神』と崇める者まで出た。
治療の途中から何の出番も無かった大司教が布教したのも輪を掛ける結果となった。
「こら!貴方もサボってないで治療を手伝いなさい!」
と、何度言われても『信者の力がファリス様の力になるのです!』と聞かずに布教したのだ。
「ファリス様こそ唯一無二の存在。信じ、そして、その慈愛に触れよ!」
「全てをファリス様は癒して下さるだろう。」
、、、と、ここまでは何時もの内容だったのだが、、
ここからが何時もと違った。
「そして、この方がファリス様の御孫様…ルチア様だ!!」
「おぉーーっ」
獣人達から感嘆が上がる。
「えっっ!…私!?」
何で?…何でここで私の名前が出て来ちゃうの?
『 ルチア様ーーっ! 』
『 ルチア様… 』
『 神様ーーっ! 』
様々な視線に晒されてルチアも居たたまれない。
「お兄様っ、、」
フェンに駆け寄ると後ろにしがみつく様に隠れる。
「そして、こちらがファリス様の御孫様でルチア様の兄上様であり、勇者でもあるフェン様だ!」
興奮気味に大司教は宣言する。
…いや、肩書きが長過ぎて『 何だか偉い人なんだ 』位にしか伝わってないんじゃない?
…実際に偉くもなければ、今ではただの国からの『 お尋ね者 』でしかないのだから。
…お尋ね者?
「あ、!!」 思わず声に出して言ってしまった。
これは不味いのでは?
「お兄様?」
急に声を上げたので少し驚いたルチアだが、直ぐにニコニコと屈託の無い笑顔を見せる。
…僕って『 お尋ね者 』なんだ…
これは…ニーナお姉様の事を言ってる場合じゃないのでは?
フェン自身が盗賊になった訳ではない。
、、が、『 国から追われる身 』という点においてはニーナお姉様と同じ立場になったのだ。
このままじゃ、ルチアに迷惑を掛ける事になっちゃう…よね?
「お兄様、、、」
フェンの雰囲気が急に変わった事をルチアは敏感に察知する。
「お兄様…どうかされましたか?」
「ううん。ルチア何でも無いよ♪」
「ルチアは教団のお仕事は大丈夫? 困った事とか無い?」
…まぁ、お婆ちゃんが付いていてくれるんだし、何も有る訳が無いんだけどね…
「急にどうしたんですか?・・・ええ、お兄様。大丈夫です。」
「皆、、他の神官様達と仲良く出来てる?」
前に神官宿舎へ行った時には、ルチアは他の神官さん達から、、、浮いていた。
、、まるで、腫れ物を触る様な・・・敬遠されている風に見えた。
「大丈夫ですよ♪」
元気な返事だけど…少し表情が曇る…この反応、、前にも…
ルチアがこんな表情で 『 大丈夫 』 と言う時は…
周りへの気遣い、、心配を懸けまいと、強がってくれている時なのだ。
「ルチア、本当に皆と上手く行ってるの?」
「うん。皆、仲良しだよ♪」
ルチアに優しく微笑んで頷いてから第三者にも聞いてみる。
「・・・大司教様、本当ですか?」
大司教は 『 ギクッ 』 とした顔を見せ、ルチアを見る。
ルチアはルチアで大司教に向かってコクリ、コクリと頷いている、、、
どう見ても 『 大丈夫と言って! 』 とアピールしてるんだよね、、。
「ファリス教、大司教様にお聞きします。ルチアは本当に大丈夫なのですね?」
「そ、それは…」 大司教は苦渋の表情を浮かべる。
ルチアが 『 肯定して欲しい 』 のは丸分かりだ…。
だが、、教団の大司教に対しての質問に偽りは許されない。
個人的な質問なら 『 お茶を濁して誤魔化す 』 事も出来るのだが…
「あ、あまり…」
「あまり?」
「大司教様! 何で言っちゃうんですか!!」
ルチアが批難の声を上げる。
「ルチア!…ルチアは僕に嘘を言うの?」
「ち、違うの、、お兄様・・・私・・・」
「じゃあルチアの口から聞かせてよ。皆と仲良く出来てるの?」
「そ、それは、、、」
フェンの心配は杞憂ではないだろう。
良くない仲が 『 パッ 』 っと良くなる訳がないのだから、、、
『親子ですか?勇者さま。後編』閲覧ありがとう御座いました。
今年中に何とかならなかった勇者さまは、、
来年はどうにかなると良いのですが(笑)
次話は元日、年明け早々に投稿したいと思います♪
では皆様、少し早いですが良いお年を。
ふえん




