親子ですか?勇者さま。①
こんにちわ♪ ふえん です。
クリスマス投稿に続き、冬休み投稿です。
「親子ですか?勇者さま。前編」です。
お楽しみ下さい♪
「獣、、王、、、」
自ら去った獣王が、また自らやって来たのだ。
やはりキャスティの予想通り、ソラは上手く逃げるのに成功したという事だ。
だが、獣王も現れたという事は、正確には『逃げている途中』だったのだろう。
ソラ・・・
自らの上で気を失っているフェンを押し退け、ソラに駆け寄ろうと思うが、、脚が震えて上手く立ち上がれない。
身体が意思に反して全力で獣王に近付く事を拒否している様だった。
ソラが危ない・・・行かなきゃ!、、と、意識と本能が鬩ぎ合う。
思う、、『本当に?』
思っている、、『本心で?』
助けるんだ!、、『誰を?』
ソラを、だ!、、『そんな事…出来るの?』
勇者フェンを飛礫の様に弾き飛ばしたのはソラではなく、獣王という事だ。
なぜ獣人の味方をした勇者フェンまで攻撃したのかは分からない。
が、少なくともキャスティ達の敵、、討伐対象には変わりない。
どちらにしても、正統な勇者であるフェンをも昏倒させる様な相手に…無謀にも程がある。
『そんな事、解ってるわよ!!』
キャスティの自問自答の内にもソラへと歩を進める獣王。
・・・考えてる時間は無い。
私は勇者よ!・・・助けるんだパーティメンバーを!
「うおおおーーー!!」
気力と気合いで脚を無理矢理動かしソラへ走る。
ソラの前、、獣王との間へ躍り出て立ち塞がる。
「私は勇者キャスティ!ソラを、パーティメンバーを殺させはしない!」
不気味なまでに、静かに黒い鎧がキャスティの方を向く。
鎧越しで視線など分かる筈もないが、見ている。
見ている、、獣王が、、自分を。
獣王から見れば、自分など『死ぬ為にわざわざ躍り出て来た小動物』位にしか見えないのだろう。
ガタガタと身体が震える。
キャスティの本能が全力で『何をしているんだ!』と己自身の選択を否定し、批難しているのだ。
この行動の先に在るのは『死』しか無い事が分かりきった上での行動。
正に『馬鹿』だよね・・・。
だが、馬鹿だとは思うが後悔はしていない自分が居る。
パーティメンバーを見棄てて生き残って何になると言うのだろう?
そんな人間が勇者と呼べるか?・・・呼ばれる資格も価値も無いだろう。
世界の平和の為…皆の幸せの為に…とは行かなかったけど、パーティメンバーの為、、ソラの為に戦うんだ!!
「勇者?…お前がか?…我が前に立てたのは褒めてやろう…」
「・・・・」
「だが、それだけでは、、な。では・・・死ぬか?」
獣王が言えば、、ただの脅しではないのだ。
それは『貴女の運命はこうなります』と、決定事項で『死の宣告』をされたのと同じだ。
怖い・・・だが私が死ねばソラも・・・負けられない!
ソラの背中の傷からは今も血が流れ続けているのだ。
早く治療しないと、放って置いても遠からず死んでしまう。
そんな状態のソラに獣王が近付く理由は、、、
、、他には考えられない。息の根を止めるつもりなのだ。
・・・そんな事させない!!
泣きながらも、震える手足に鞭打って、剣を構える。
「私は、、負けない!!」
もし、この場を見ている者が居たなら、こう思った筈だ。
『 勇者だ! 』 と。
キャスティの望んだ、夢だった勇者の地位が今ここに・・・。
本人、、キャスティは気付いていない。
が、気付かない内にキャスティは夢を叶えたのだ。
誰もが恐れをなして当たり前の獣王に、面と向かって戦いを挑む。
その姿は紛れもない・・・『 勇者 』だった。
これで、目的に正当性が有ったならキャスティは勇者の御手本の様な人だと讃えられただろう。
しかし、現実は、、、
フェンに言われ、薄々気付いてはいる。
この遠征隊・・・討伐隊に正義は無いのだろう。
依頼は 『 人間に仇なす凶暴な獣王を討伐する 』 という内容だった。
だが実際に来て見れば、自分達がしている事は、ただの『 侵略行為 』でしかなかったのだ。
領地を占拠する獣王、、それを取り返そうと出陣した国軍兵士を壊滅させた。
これだけ聞けば、人間にとって獣王は『 害 』にしかなっていないのは明白だ。
だがそれは、歪められた情報なのかもしれないのだ。
実は、元々獣王が治めている地を後から国が『自分の領地だ』と言い張った可能性も有るのだから…
どちらにせよ、間違いないのは、全滅した国軍の兵士にも親も居れば家族も有ったという事だ。
その兵士の家族が『そういう仕事に就いたのだから仕方がない』と納得しているか?と聞けば、納得などしていないだろう。
そして、無謀な戦いに行かせた『 国 』を恨むか?と言えば、そうではない。
理由はどうあれ、やはり『 殺した張本人 』を恨むのだ。
、、そう。獣王を恨む、、そして獣人という括りで『 獣人達全て 』を恨むのだ。
攻めた国が悪いのか?、、兵士を殺した獣王が悪いのか?
キャスティ個人には国の意思など計り知れないが、個人的には無謀にも攻め込んだ国軍に非が有る様に思える。
仮に、獣王の町を攻めなければ人の世が終わる…なんて事なら『人間として』答えも変わってくるのだろうが。
もし、そうだとするなら国は正式に要請するはずだ。
そして、勇者フェンも『 味方 』として参戦してくれた事だろう。
・・・そうであれば、の話しだ。
違うからこそ、勇者は獣人の側に味方しているのだろう。
そう。これは『 侵略戦争 』なのだ。
私達が全滅したら人々は、どう考えるだろう?
冒険者達と最近話題の勇者ペアも獣王に殺されたそうだ。
・・・聞いた人々は・・・
怖れ慄くのだろうか?
はたまた『 仇を取れ 』と、国の大義名分に利用されるのだろうか?
結局、、国に良い様に利用されただけ…なの?
目の前の獣王はキャスティの思惑など知る由もない。
獣王から見れば、全員が侵略者でしか無いのだ。
倒すべき敵、、ただそれだけだ。
「我が領土へ踏み入った事を後悔して逝くがいい。」
ただ・・・静かだった。
周りの音が消え去り、動きさえもスローモーションになったかと思う程に鮮明に分かる。
獣王が剣を振り上げる、、。
『避けなきゃ!』
だが、認識は出来ているのに身体は一切動かなかった。
それは一瞬の出来事。
実際は身体が動かなかったのではなく、動ける時間が無かっただけなのだ。
剣がキャスティに寸分違わず降って来る。
『駄目!避けられない…』
どうにもならない、、と悟った時、キャスティは自然と目を閉じた。
死に至る一撃って痛いのかな?
、、でも達人の一撃は斬られたのを気付けない程の一撃だと言うし・・・。
あまり痛いのは嫌だな・・・。
実はもう斬られてたり?・・・無いか、まだ私、生きてるみたいだし、、
目を開けたら分かるか…でも自分から剣が生えてるのはあまり見たくないな、、。
僅かに逡巡し、キャスティは覚悟を決め、目を開ける。
獣王…ではない?…見覚えの有る…と言うか見馴れた背中が見える。
「キャスティ!!」
『ビクッ』
キャスティが今までの一生の中で一番多く聞いて来たであろう声がした。
「??、、父、、さん?」
獣王の一撃を受け止めている人物・・・父さんだった。
なんで? ここに父さんが?
「馬、、鹿娘がっ!!」
後ろを向いたままだが間違いない…父さんの声…助けに来てくれたの?
しかも・・・獣王の一撃を受けきったなんて・・・
『 父さんって、、凄いんだ・・・ 』
素直に感心するしか無かった。…なにせ今のキャスティには無理な芸当なのだから。
実際に口に出して言ってあげたら、どれだけ本人は喜ぶだろうか?
「父さ、、」
「下がっていろ!!」
キャスティが聞いた事も無い様な緊迫した声だった。
『 ガキンッ 』
キッドが獣王の武器を弾いて再度構えた途端に肩口から血が噴き出す。
「と、父さん!」
「キャスティ、、、逃げろ、、、」
・・・逃げろって何よ?
・・・何で『 一緒に戦え! 』 じゃないの?
「貴様も討伐隊の人間か?…ならば、、共に死ね!」
獣王が吼え斬り掛かろうとするのに重なる声が響く。
「駄目ーーーーっ!!」
「おじさんを殺したら駄目ーーー!」
「お、おじさ…ぐはっ、、」
「なんだ、、子供?…次から次へと…神官か…戦場へ来たからには容赦はせん!」
「…ひゃっ…」
獣王の放つ殺気にルチアは声を洩らす。
「父さん!」
「…キャスティ…逃げろ…と言って…るだろう…」
抱き起こしたキャスティの腕の中でさえ、キッドの傷からは血が止まらない。
「嫌、嫌よ、、父さん・・・嫌・・・父さん、、」
「誰か…誰か助けて…父さんが、、父さんが・・・助けて!!」
キャスティは叫ぶ。
父を思う一人の人間の娘として、、、『 助けて!! 』 と。
その時、『 フッ 』 っと背後に気配を感じキャスティが振り向く…!!
立っていたのは、気を失っていたはずの勇者フェンだった。
・・・殺られる、、、
、、、なんて、どうでも良かった。
父の事で頭が一杯だった。
キャスティは迷い無く、敵であるフェンに懇願する。
「父さんを、、父さんを助けて、、勇者様・・・」
フェンの瞳から 『 怒り 』 の感情が消える…。
、、、治療、、回復役の獣人さんを呼ぶしか・・・!!
フェンは、先程まではこの場に居なかった筈の見知った顔、、妹の顔を見付ける。
「ルチア!」
「!!…お兄様っ!」
獣王に睨まれて動けなかったルチアだが声に気付きフェンを見つけ走り寄って抱き付いた。
「お兄様・・・怖かったの・・・」
「ルチア、今はそれよりこの人の怪我の治療を…ルチアなら出来るよね?」
「勿論っ!お兄様と別れてから頑張って治療の腕を上げたんです。」
「偉いね。じゃあ、ほら、早く凄い所をお兄ちゃんに見せてよ。」
「うんっ♪」
ルチアはキッドの治療を始める。
「父さん・・・あっ!、、ソラも!」
キャスティはソラの事もフェンに懇願する。
「お願いします、勇者様。こんなお願い出来る立場に無い事は承知しています…」
「…でも…ソラを、あの娘を助けて下さい。私なら何でもします。だから…」
頭を地に擦り付けながら懇願するキャスティ。
「ルチア!三人同時に治療は出来る?」
「えっ?三人?…ごめんなさい…出来ません。」
「頑張れば二人までなら何とか治療出来るんだけど…三人は…」
しょんぼりしてしまうルチア…流石に三人は出来ないらしい。
でも二人同時に治療出来るなんて凄いじゃん、ルチア。
「じゃあルチア、あそこに倒れている人も治療してあげて。」
「はい!」、、いい返事だね、ルチア。
成り行きを見ていた獣王が言う。
「どういう事だ、フェン?我が娘は分かるが、そいつらは我が町を襲おうとした奴等だぞ!」
「それを助けよう、などと・・・この獣王と敵対するつもりか?」
「敵対する気は有りません。」
「そして、助けを求められれば僕は助けます。」
「甘い、甘いわ!…そうやって助けた相手が、今度は大軍を連れて攻めて来るのがなぜ解らん!」
「・・・でも、助けます!」
「もういい・・・フェン、黙っていてもらおう。これは我が町の問題だ!」
獣王が治療しているルチアへ殺気を飛ばす。
「、、、ひっ、、」 ルチアは小さく悲鳴を上げるが手は止めない。
一心に治療に専念する事で恐怖に打ち勝とうとしているのだ。
「待て!ルチアは僕の妹だ。手を出すならガルンさん、貴方でも許さない!」
「ほう…どう許さないのか教えて欲しいものだな。」
バチバチと火花が散る様な緊迫した睨み合いが始まる。
お互いに引くつもりなど微塵も無い。
「ええい、面倒だ。お前を黙らせて、、処分する!」
、、焦れたガルンの殺気が膨れ上がる。
攻撃された訳ではないが、殺気を感じて治療をしながらルチアは泣き出してしまっている。
「させない!」
刀を抜きフェンは構える。
「行くぞ!!」
読んで頂きありがとう御座います♪
「親子ですか?勇者さま。後編」は、
本日(27日)の21:00頃に投稿予定です。
ではでは。 ふえん




