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1.思い出した王妃

初めての投稿です。

勝手が分からずアタフタしてますが、まあ投稿していく内になれるでしょう。

なかなかの年を重ねてますが、その年の功で得た自分なりの考えを教訓的ではなく、スーッと物語の中に溶け込まさせる事が出来ればなぁ、と思ってます。

「あ~やらかしちゃったか」セントディア王国の王妃である私、オリアーナは頭を抱えた。


我が息子にして王太子、ジョナスを危惧してこちら側の人間を付けといて本当に良かった。まだ挽回できる。


その為には、あの処置、「王太子妃教育」刑を受けさせる必要がある。

これも親心だぞ。お前の目を覚まさせてやるわ!





私、オリアーナはこの言葉使いからもうお気づきだろうが、前世の記憶持ちである。

ただ、その記憶が蘇ったのが遅すぎる。


長男のジョナスの出産の際、「ああ、この痛み懐かしいわ~」と思ってから、「ん?初産なのに懐かしいってなに?」と次いで思って、そこから「そうだ、私前世は日本人で一人息子の母だった」と思い出した。


いや、私は今二十歳。今頃思い出すって遅くない?普通前世を思い出すのって幼少期だよねぇ。

今更思い出して何になるの。もう結婚して、今まさに子供を産もうとしているのよ。


出産は無事に終わり、諸々の処置も済んで自室のベッドで休みながら頭を働かせた。


前世では育児の合間によくネット小説を読んでいた。

お気に入りは乙女ゲームの世界に転生した物語。


実際に乙女ゲームはした事はないけれど、その手の小説を一杯読み込んだ。


王太子とか身分が高い男性が「真実の愛」を見つけた、とか何とか言っちゃって冤罪をかけた婚約者に婚約破棄を宣言して、あざとい男爵令嬢と婚約を結びなおそうとするが、逆にざまぁされる。


そんなストーリーが多数を占めてたが、本来の乙女ゲームは婚約者の方が悪役令嬢なので断罪され、ざまぁされずに王太子と男爵令嬢(なんか聖女の力に目覚めて身分低くてもOK)が結ばれてハッピーエンドみたいな感じなんだろうな。


この世界が、そんな乙女ゲーム的異世界なのかどうなのか分からないけど、どうもそういう雰囲気がプンプンする。


だけど私は婚約破棄もされず、十歳の時に婚約した同い年の王太子と順調に十八歳の時に結婚して、現在初めての子を産んだところだ。


私自身に波乱など何もないが、もしかして私の子が何か乙女ゲーム的な事をやらかすのか?それとも他の誰か?そもそもそんな事起こらない?

いやいや、息子は大丈夫でしょ。そんなおバカな息子には育てませんもん。


     


なんて思ってたけど、前世の我が息子の事を思い出す。

小学生まではいい。

しかし中学生になると、反抗期真っ只中。そのまま高校も態度継続。

母親の言う事なんて聞きやしない。


別に多くは望んでなかったのよ?

「手に職つけて」身を立てるのが一番と思ったけど、お医者さんや弁護士さんという最上級の「手に職」は、頭の出来具合から無理。


料理人さんや工事関係の人も、家族に一人いたら助かるよね~とか思っていたけど、倒産の憂き目に遭うかも、みたいなリスクを考えるともっと安定した職業が望ましいんじゃないか、と。


大体にして、前世の私自身、夫、両方の実家の人間は会社か役所勤めの人間ばかり。

だから、そこそこの会社か役所みたいな所で働いて、でも仕事にばかりかまけないで、結婚して家族を大事にして、自分の趣味の時間も大切にして、みたいなステレオタイプの人生を送るよう望んでいた。


平凡が、平穏が一番。

そういう安定志向の持ち主だったのだ。


でも息子は違った。

「俺は東京に出て、映画関係の仕事に就くんだー!将来的に俳優兼監督みたいな立ち位置を目指す!」とか吠えてた。


私も映画は大好きで、息子にも小さいうちから映画館に連れて行って色々な映画を鑑賞させていたし、名作と言われる作品はネットで取り寄せたり、テレビで放映される映画にもよくチャンネルを合わせていた。


そう言えば私も若い頃は、俳優は考えなかったけど、裏方の仕事でもいいから映画の仕事してみたいなぁ、と考えていた時期があったっけ。

血は争えないな、とちょっと嬉しかった。


その後、彼が希望を叶えたのかどうかは分からず仕舞いだ。

彼が高校二年の時に私が亡くなってしまったからだ。


事故だった。

トラックに轢かれた。

しかしトラックに轢かれる事が異世界転生、もしくは異世界転移の条件かと思わせるほど、ありがちパターンだな、と今になっては思う。


薄れゆく意識の中で願ったのは、残された家族に私がいなくても力強く生きて行ってほしいという事。

特に息子の将来に関してはどちらに進んでもいい。

彼の人生が幸せならば。

健康であれ、心身ともに。

前世の自分も今世の自分も、それだけしか祈る事ができない。


     


で、今世の話に戻るのだが、息子がざまぁされるような運命は回避したい。

その為に小さい頃から人に優しく、よく考えてから言葉は発するようにと何度も言い聞かせて、もう洗脳する勢いで教育するつもりだった。


しかし王妃という立場上、子育ては自分ではできない。

幼い時は乳母が、その後は教育係が彼の側に実の親よりも長い時間触れ合っている。

私は育児どころか我が子の顔を見るのも、ままならない。


なにしろ時間が足りない。

私をあと三人増やしてくれ~と泣き言をいつも心の中で喚いている。


前世の私は社長秘書として、働いていた。

大きな会社ではないものの、秘書の仕事はそれなりに大変だ。

スケジュール管理、予定の組み立て、出張、会合、会議etc の手配、全て完璧に出来て当たり前。

有能な秘書と評価され、引き抜きの話も実は持ち掛けられた事もある。


そんな私が音を上げるほど、王妃業は辛いのだ。

王太子妃教育を受けていた時も辛かった。


なんで?

王妃って国王の隣で、威厳をみせつけながら微笑んで座っているのが仕事じゃないの?

せいぜい国賓の応対や、国内の社交で頑張ればいいだけではないの?


なんで財務や派閥の調整や国内のもめ事や政策とかに意見を求められるの?

学生時代頑張りすぎちゃった?

王妃使える!とか思っちゃってる?


と前世を思い出した私は考えているが、思い出す前は忙しいのは当たり前と思っていた。

だって歴代の王妃様方が、そうだったから。

何の疑問もなく、辛い日々を耐え忍んでいたのよ。


まぁ、その件に関しては後から対処するとして、喫緊の問題は息子と婚約者の関係よ。

ジョナスの眼を開かせ、あるべき場所に戻さないと。

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