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巨大なモンスターに向かって杖を構える。このサイズだと、いくら俺の魔法と言えども一撃で倒すことは困難だろう。そう、俺の魔法のみでは。
「アメリア、攻撃魔法の強化を頼む!」
「まかせてください、メイナードさん」
アメリアの補助魔法によって、俺の魔法に強化がかかる。杖にいつも以上の粒子が集まっていく。
「炎よ燃やし尽くせーーーッ!!」
蒼白い光が杖に集まりきったところで、魔法をモンスターへ飛ばす。飛ばした魔法がモンスターに接触した瞬間に、光が蒼白い炎へと変わりモンスターを包む。高火力の炎に包まれたモンスターは断末魔の叫びを上げた。
「ギシャアアアーーッ……アアッ……」
モンスターはしばらく暴れていたものの、やがてこんがりと焼かれてその場に倒れ、動かなくなった。
「終わりのようだな」
動かなくなったモンスターを杖でつついてみる。モンスターは完全に沈黙したようだ。
「さすがはメイナードさんですね!」
「ああ、やったな」
駆け寄ってきたアメリアとハイタッチを交わす。
「おいおい。メイナードだけの功績じゃないだろ」
「ごめんなさい。カルロスさんがモンスターの攻撃を受け止めて、エミリさんがみんなのケガを回復させて、オーガストさんがモンスターを攻撃し続けて弱らせて下さったおかげですよね」
剣を鞘にしまいながらオーガストが文句を言うと、アメリアが急いで訂正をした。
実際、個人の力ではなくパーティーの団結力があったからこそ、こうも簡単にモンスターを倒すことが出来たのだ。
「もちろんアメリアの補助魔法のおかげもあるからな」
「ありがとうございます」
俺が褒めると、アメリアが嬉しそうに頬を染めた。
俺たちは名の知れた冒険者パーティーであり、凶暴なモンスター討伐の依頼を軽々とこなすことで有名だ。
パーティーメンバーは、剣士でありパーティーのリーダーでもあるオーガスト、盾担当のカルロス、回復担当のエミリ、補助魔法担当のアメリア、そして攻撃魔法担当の俺だ。
なお今は名の知れたパーティーだが、こうなるまでにはいくつもの苦難があった。途中でパーティーをやめたメンバーは何人もいた。しかし当時は辛くて仕方がなかった出来事も、今ではこの五人の結束を強めるための試練だったのかもしれないと思うほどだ。
特に補助魔法担当のアメリアとは、窮地を共にしたことで、パーティーメンバー以上の関係性を築くことに成功した。
とはいえ他のメンバーにこのことは伝えず、他のメンバーがいるところでは過度にイチャイチャしないことを二人で決めた。そんなことをしたらパーティー内の空気が悪くなると思ったからだ。変に気を遣われるのもパーティー内の不和の原因になりかねない。だからみんなの前でするのはハイタッチまで。
この取り決めのおかげで俺たちのパーティーは全員仲良く、そして最強だ。
仲良く最強……そのはずだった。
「メイナード、お前は目立ち過ぎなんだよ。このパーティーのリーダーは僕なのに」
「相手の攻撃が当たらない後衛から、安全に敵を倒すのは気持ちが良かったか?」
「って言うか気付いてるのよ、メイナードとアメリアが付き合ってることくらい。パーティー内の風紀を乱さないでよ」
俺の喉元には、オーガストの剣の切先が当てられている。応戦しようにも身体にはエミリの負荷魔法が掛けられていて、思うように動かせない。さらに両腕をカルロスに押さえられ、杖も取り上げられてしまった。
「…………くっ」
苦し紛れにオーガストを蹴ろうとしたが、負荷魔法のせいでゆっくりとしか動かない足ではダメージを与えることが出来なかった。
「お前はここで終わりだ。盗賊にでもやられたことにしてやろう」
「……俺がいなくなったら、パーティーの戦力が落ちるぞ?」
「心配はいらない。新たなメンバー候補にはすでに声を掛けてある。それにエミリがいれば問題は無いだろう」
「ええ。あたしは回復担当だけれど、それ以外の魔法も使えるわ。今あんたに掛けてる負荷魔法のようなものもね」
魔法使いは得意不得意分野こそあれ、努力をすれば大抵の魔法を使用することが出来る。
事実、今の俺にはエミリの負荷魔法が掛かっている。ハッタリや強がりではなく、エミリがいれば回復魔法も攻撃魔法も使用が可能だろう。
「準備が整ったから、やっとお前を排除できる。排除したかったんだ、ずっとずっと」
「……だとしても、それなら俺をパーティーから追放すればいいだろ。殺す必要は無いはずだ」
三人と会話をしながらこの状況を打破する手段を探すものの、あまりにも劣勢だ。
「残念だが、これは決定事項だ」
「お前はここで死ぬ運命なんだよ」
「さようなら、メイナード」
三人からは、変わることのない強い意志が返ってきた。議論の余地すら無さそうだ。
だから俺は、俺を殺すことで合意しているのだろう三人に向かって問う。
「最期に教えてくれ。俺は殺されるほどのことをしたのか? どうして俺を殺すんだ?」
三人はお互いに顔を見合わせた後、揃って口の端を上げた。
「お前が目障りだからだ」
「お前は目障りなんだ」
「あんたは目障りなのよ」
目障り。たったそれだけのことで……。
自身の喉から上がった血飛沫と意地悪く笑う三人の姿が、俺の見た最期の光景だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この作品は完結まで書き終えていますので、ぜひ最後までお楽しみください。
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