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元勇者パーティーの最強魔導士も隠居後は気ままに過ごすようです  作者: UMA未確認党


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第25話 ヴァルツの判断

 ランゴ王国の王城。


 北方戦線から届いた報告書を前にエルトンは重臣たちとともに苦悶の表情を浮かべていた。


 上位冒険者たちが怒り心頭だというので、流石に王国政府も動かざるを得なかったのだ。


「……つまり、オリエンス王国の勇者アースはヴァルツ殿を傷つけたばかりか、ラーグルフの首を奪い我が国の冒険者たちが成し遂げた戦果を横取りしたと」


「えぇその通りです」


 ゲオルギウスが冷静に答える。


「その上先生とリコルドを嫉妬により輪を乱した襲撃者として扱い、オリエンス王国もおおむね同調しているとのことです」


「良くもまぁここまでふざけたことを並べられたもんだ。すぐに始末してやりたい」


 マントを来た若年の冒険者が不満を垂れる。


「サムソン殿落ち着いて」


「落ち着けるものか!先生を傷つけられたんだぞ」


 サムソンと呼ばれた若年冒険者が机を叩いて立ち上がる。彼は王国の数少ないS級冒険者であり、ヴァルツの特に優秀な弟子の一人だった。怒りに応じるようにマントの中がガサゴソと動く。


「ヴァルツ殿への侮辱は、王国への侮辱と同義!すぐに宣戦布告を」


 そう官僚をにらむと官僚は泡を吹く。


「ちょサムソン様待ってくださいよ。そんなおいそれと」


「なら俺が行く」


 サムソンの勢いに押されつつエルトンは額に手を当てた。


「……アースの所業を洗いざらい報告して、ラーグルフの首を取り返すべきか」


 その言葉に、会議室が静まり返る。


「いいえそれでは不十分です。直接取り返しに行く」


「馬鹿野郎。お前が動いたら冗談じゃすまないぞ」


「冗談で攻めるとでも思ってるのか?」


 サムソンの発言にも一理ある。問題はオリエンス王国との関係である。


 勇者を殺せば、両国間の戦争に発展する可能性がある。魔王軍が大人しくなったとはいえまだ緊張が走っている時期、この時期に北方連合が崩壊すれば、再び魔王軍に有利な状況を作り出してしまう。


 怒りは正当でも、行動は慎重でなければならない。


 そのとき、ヴァルツが静かに口を開いた。


「陛下。どうか、私のために国を危険に晒さないでください」


「ヴァルツ殿……」


「ラーグルフ殿の最期は、私が見届けました。彼の尊厳を守れなかったことは残念ですが、これ以上の争いを望んではいませんでした」


 彼は穏やかな表情をしていた。一番被害を被ったはずなのにだ。




 サムソンはしばらく黙っていた。


「……先生。アンタは、本当に変わらないな」


「恐れ入りますな」


「ですが、抗議はするべきです。これは冒険者としての礼儀を明らかに逸脱した行為だ」


「それはその通り、ぜひとも釘を刺しておきなさいな」


 ヴァルツは穏やかに言う。しかしサムソンやゲオルギウスは気づいていた。これはヴァルツが本当に怒っているときの声色だと。


「アイツ本当に虎の尾を踏むのが上手いな」


 ゲオルギウスは苦笑した。




 当の本人のアースはと言うと道中、馬車の中で上機嫌だった。


「いやあ、今回は大活躍だったな!」


「まさしくそうです。魔王軍の四天王を討ち取るとは王都でも盛大な歓迎があるでしょうね」


「当然だ。俺は勇者なんだからな」


 アースは窓の外を眺める。すると上機嫌さを邪魔するようにガタンと止まる。顔を出してみると盗賊がやってきていた。


「おうおう宝を貰おうか」


「やる宝なんかある訳ないだろバーカ」




「おいおいそんなこと言っていいのか?俺たちは勇者だぜ?」


 そういって盗賊は指で胸のエンブレムを指さす。しかしそれは板で作っただけのまがい物だ。勇者の格好はしていない明らかな野盗である。勇者の乱率は本当に自称勇者を生み出していたのだ。


「と言う訳で俺たちに大人しく……」


「うるせぇんだよ」


 アースは冷たい声で言い放ち、盗賊の胴体を真っ二つに斬る。


 すぐに仲間たちが喝采の声をあげる。


「さすがアース様!ランゴ王国の薄汚い盗賊を切り捨てるとは」


「ランゴの連中は、俺の功績を妬んで騒いでいたが……まあ、あいつらも俺の偉大さを理解する日が来るだろう」


 彼は笑った。


 本当に彼は何も知らなかった。彼が持ち帰ったのは敵将の首だけではない。自分自身では気づいていない、巨大な災厄の種だったことを……

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