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中編

にゃーは聖女?みたいにゃ。

名前はまだにゃーよ!


教皇他、聖職者たちは、今日もまた進展のない報告に落胆を露わにしていた。

各地に派遣している聖職者や聖騎士の負担を考えると、そろそろ捜索を打ち止めしなければいけないことは、皆んなわかっている。

けれど、諦めきれないのだ。


もしかしたら、明日見つかるかもしれない。

いや、明後日こそは。


そう思って、ずるずる捜索を続けている。

もし諦めてしまって、聖女様が辛い目に遭ったら目も当てられない。


そんな重たい空気を破るように、会議室の扉が勢いよく開いた。

全員の視線が集まった先には、黒猫を丁寧に腕に抱いた若い聖騎士がそこにいた。


どうやって扉を開けたのだろう。

両腕は猫で塞がっているはず。

もしや、足で蹴った……?


どうでもいいことだが、誰もが心の中で思った。


黒猫の存在を訝しむ聖職者たちのことなど全く気にせず、黒猫は機嫌良く尻尾を揺らしている。

相当ご機嫌なようだ。


「あー……そこな、聖騎士。何かあったのか?」


「はっ!聖女様捜索部隊に所属している、聖騎士リアムと申します。急ぎ、ご報告があって参りました。」


「うむ。リアムよ。報告はいいが、何故猫がここに?」


「ご報告に関係しておりまして。」


「もしや、大聖堂を住処にしてしまったのか?それなら……」


「いえ、違います。……聖女様を発見しました。」


「「「「「「何!?」」」」」」


『うるさいにゃあ。』


「「「「「「!?」」」」」」


「こちらのネコ……いえ、おネコ様が、聖女様です。」


「「「「「「はあ!?」」」」」」


『うるさいと言ってるにゃーよ!』


「「「「「「すみません……」」」」」」


『にゃーの可憐な耳が、聞こえにゃくにゃったらどーするにゃ。』


黒猫は、リアムの腕をパシパシと尻尾で叩く。

リアムは思わず緩くなりそうな顔を引き締めて、改めて報告をした。


「おネコ様が、広場の噴水前で、病人や怪我人を治しているのを確認しております。」


「治癒能力……まさに聖女様のお力……」


「やっと……やっと……」


聖職者たちが、あちこちで啜り泣きをしている。

今までの苦労が、報われた瞬間だった。


……ネコなのはいいのかのぉ?


教皇は1人そう思ったが、聖女様なら、人間でもネコでも虫でもこの際いいと納得した。

なんせ、見つかったことこそ重要なのだから。


あぁ……本当に良かった。


教皇の目にも、涙が滲んでいた。




聖女様が見つかったことは喜ばしい。

だが、新たな問題が、いくつか発生した。


まず、おネコ様が大聖堂を縄張りにして、住処にしてくれたのは良かったが、その結果、おネコ様を慕うネコたちが足繁く大聖堂に通うようになったのだ。


だが、いい面もある。

泣いている赤子は笑顔になり、今にも自害していまいそうな女性が生きる気力を取り戻したのだ。

また、足腰の痛みでなかなか外出しない老人が、ネコを目的に大聖堂まで通うようになり、明るくなった。

これは、力不足で悩んでいた聖職者たちの希望となった。


だが、仕事をしているネコたちに、報酬の食事を与えなければいけないので、食費が嵩むようになってしまった。

人間の食事よりは断然マシなのだが。


次に、おネコ様の姿が、よく見かけなくなることだ。

おネコ様は聖女で、普通のネコより賢いと言っても、あくまでネコだ。

大聖堂の敷地内、下手をしたら王都内を散歩している時がある。


おネコ様を一度見失うと、探し出すのは困難だ。

ネコは王族の影なんか目じゃないくらい、隠密行動が得意だ。

すぐそばにいても、全く気が付かない。

ご飯の時間には、必ず戻ってくるのだけが救いだ。


姿が見えなくなったおネコ様を探し出すのは、護衛(お世話係)の聖騎士リアムである。

理由は、おネコ様を一番に見つけたことと、抱っこが上手いことだ。

本来聖女様の専属聖騎士は名誉なことであるが、当の本人は、ものすごく微妙な顔をしていたとか。

ネコ好きの聖騎士には、羨ましがられていたが。


余談であるが、リアムのおネコ様を捕まえる技術は、日々洗練されていっているのだとか。

おネコ様以外に、何の役に立つのかわからない技術だが。




おネコ様が大聖堂になれた頃、聖女様の発見を国中に知らせた。

今後は状況を見つつ、国外にも公表していく予定である。


そんな聖女様発見の知らせに、一番最初に食いついたのは、この国の王族であった。


どこで聞いたのか、聖女様が妙齢の女性であるとの噂を仕入れて、適齢期の第二王子を大聖堂に寄越したのだ。


確かに、妙齢の女性だ。

嘘ではない。

ネコの年齢から考えれば、だが。


そして、そんなことを知らない件の第二王子が、数日後、聖女様に会うために大聖堂に来訪したのだった。


「教皇よ、聖女に会いに、わざわざこの俺が来てやったぞ!俺の妃になる聖女はどこだ?」


この一言で、第二王子は大聖堂中を敵に回した。


「はっはっは!よくお越しくださいました。聖女様なら、いらっしゃるではありませんか。」


教皇はそう言って、おネコ様を抱いたリアムを振り返る。


訝しげな第二王子は、大聖堂中を見渡して眉間に皺を寄せる。


「はあ?何の冗談だ?」


「そちらのおネコ様が、当代の聖女様です。」


「はあ?あんな獣が!?」


第二王子の声に、おネコ様がピクリと反応して、顔を上げる。

ジーッと見つめてくる黒猫を気味悪く思い、第二は視線を逸らした。


「彼の方が聖女様です。」


「ふざけるな!あんな獣を聖女だとは認めん!ただの獣だろう!」


耳をピクピクさせたおネコ様は、リアムの腕の中から跳び降り、優雅に歩きながら第二王子に向かって歩いていった。

音もなく、気配もなく近づくおネコ様に、第二王子は気がつかない。

気がついているのは、第二王子の正面側にいる大聖堂のメンバーのみだ。


おネコ様は第二王子の足元で、腰を低くしてしゃがみ込み、尾を浮かせている。

リアムがあっと、思った瞬間、おネコ様のおしっこが第二王子の足とズボンの裾を濡らす。

おネコ様はおしっこが終わると、前足で砂をかけるようにカリカリと床をかいた。


第二王子は、生暖かい水と水の流れる音を聞いて、足元に目を向けて固まった。


『ふ〜スッキリしたにゃ〜』


スッキリ顔のおネコ様は、皆んなの視線を浴びる中、颯爽と扉から外に出ていった。


その間、誰もが無言で、その背を見送った。


おネコ様が完全にさった後、その視線は第二王子の足元に向けられていた。


「あんの〜クソネコがぁ!!!!!」


フルフルと怒りを露わにした第二王子が、大聖堂の外まで聞こえるくらい、大きな声で絶叫した。


その声を、高性能の耳で聞いていたおネコ様は、にゃふふっと、人間のような表情で嘲笑ったのだった。


『因果応報にゃ〜』






評価、リアクションくれたら、抱っこしてもいいにゃよー

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