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神風ナイト  作者: Ringo
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第1章 高校生、借金11億、月収1億。 後編

体が痛い・・・。部活が終わったせいか、1ヵ月も動いてないだけでこんなにダメージが来るとは・・・。走っただけで・・・orz

 昼食


「ねぇ、ミリ。あなたあの転校生と知り合いなのぉ?」


 時はすでに12時をすでにまわり、昼食時で男女問わずみんながワイワイとお喋りをしながら弁当を食していた。そんなお喋りの中、話題の一つして持ち上がっていた一つが「転校生」の事であった。机を向かい合わせて弁当を食べていると、他の女子から未璃は今朝のホームルームについて問われていた。


「えっ? あ、あれは・・・今朝学校行く時に遅刻しかけてて、慌てて自転車扱いだらひきかけて・・・」


 未璃は声を潜めた。共に聞いていた友達も耳を寄せてきた。


「えー! 受け止めてもらったのー?!」


 声を潜めた意味を台無しに大声でリピートをしてくれた。慌てて未璃は頬を赤く染まらせて首をぶんぶん振って否定を意味を表した。


「ちっがぁう! 倒れたの! 偶然重なったの!!」


「でも大胆だよねー。何か漫画みたい」


「顔もそんな悪くないし、付き合っちゃえば?」


 からかわれた少女は顔をさらに染まらせ、「無い! 絶対無い!」と否定を繰り返した。


「・・・」


 一方、話題になっているのも知らず誘われた男子と共に弁当を食べている蓮。だが、蓮は弁当の包みすら解いていなく、横目でちらちらと「護衛対象者いざき みり」の安全を確認していた。まさかではあったが、こうも朝から偶然が重なるとは思いもしなかった。轢き殺しかけた張本人は実は護衛対象者であり、クラスまで一緒になると、事が上手く進むのにむしろ怖ろしさを感じていた。


「どうした蓮。顔引きつってんぞ」


 気がついたら彼女を盗み見ている自分の顔は酷く筋肉が強張り、目は殺気を辺りに漂らせるレベルまで悪化していた。慣れない環境で仕事と学業が切り替えられていなかったのだ。我に戻ると「ああ・・・悪い」と呟いて昼食に集中をすることにした。だが、彼の心は何故だかまったくもって落ち着く事ができなかった。


 包みを解いて蓋を開けた。今日は朝食だけではなく昼食まで兄の祐介が作ってくれていた。だが、蓮はこの感覚・・・匂い・・・形・・・全てを覚えていた。死闘にまでわたる「奴」と再び、こんな形、場所で相見えようとは・・・。


「ひ・・・飛騨ぁぁぁ!!!」


 そう。「奴」は、「国産飛騨牛」は、まだ倒されていなかったのだ。


「おい、転校生の弁当飛騨牛入ってんぞ?!」


 向かいの男子が彼の弁当を覗き、大声で叫んだ。それに誘われ何人ものクラスメートが飛騨牛を取り囲んだ。蓮はただ、絶句しているしかなかった。








(くそがぁ・・・飛騨ぁ・・・)


 二度にも亘る飛騨牛との戦いは苦戦を強いられたが、勝敗は僅かに蓮の方が上であった。だが朝も昼も戦い、胃に残ったダメージというものはとてつもなかった。5時限目が始まる鈴が学校中に鳴り響く頃になっても、蓮の表情は眉間にシワを寄せ腹を抱えていた。


「大丈夫かよ転校生・・・。これから合同体育だぞ」


 先程蓮と共に昼食を取っていた男子の1人、佐渡亮さど りょうが心配の声を掛けてくれた。蓮は喉を唸らせながら整列していた。


 本日は男女合同でバスケットをする予定だった。クラスの全員が(蓮を除いて)ワイワイと楽しみながら試合を行っている中、1人体育館のステージに腰を下ろして胃の傷を癒していた。


「ねぇ、バスケやんないの?」


 声を掛けてきたのは未璃であった。彼女は自分が命を狙われている事も、彼が極秘で護衛をしている事も知らずに、ただの転校生の体調を心配しているのだ。


(なんでこいつが狙われるんだ・・・? どう見たって俺と違って普通の高校生だろ)


 顔をジッと見られ、「どうしたの?」と彼女は訊いた。すると・・・


「ごぉっ!」


 聞き慣れない声が一つ、二人の耳に届いた。その方向を向いてみると亮がコートの真ん中で鼻血を垂らしながら倒れていた。コートにいた者は急いで亮の下まで駆けつけ心配の声をかけていた。2人も何事かと心配し、亮の傍に駆け寄った。


「悪ぃ亮。パス強すぎたわ・・・」


「至近距離でチェストパスかよ・・・そこは手渡しだろぉ・・・」


 若干涙が瞳に浮かびつつも、彼は立ち上がって試合を続行しようとした。


「待てよ、お前そんなハナヂで試合をやろうってのかよ!」


 止めようとするが、亮はふんっと鼻で笑い、「お前の栄光時代はいつだよ」と訳の分からんことを口にした。


信也しんや、今俺はお前の言ってたもんができたぜ・・・ダンコたる決意ってやつがよぉ!」


 格好をつけたのはいいが、彼は見る見るうちに鼻からの出血の量を留める事無く噴射していく。


「言ってねぇよ。つか出血止めろ」


 すると量は満足そうな笑みを浮かべて倒れてしまった。


「りょっ、亮! 誰か先生呼んで来い!」


 それを見物する蓮と未璃。感嘆の声を漏らした。


「バカだ・・・」


「今の台詞はスラムダ・・・」言いかけの所を彼女に口を塞がれて言えなかった。何か問題があったのだろうか?と言わんばかりに蓮はキョトンとしていた。


「あーあ、1人いなくなっちまったよ」


 愚痴を吐くとふと蓮の存在に気づき、「お、蓮腹大丈夫なのか? じゃぁ亮の代わりに入ってくれよ」


 忘れていたが胃ははだいぶ楽になっている。この調子なら体を動かしても問題は無さそうであった。蓮はコクリと頷いた。


「うぉっ!」


 蓮がドリブルをし、信也がデフェンス。信也男子バスケ部でもあり、素人には負ける訳には行くはずがない。だが、蓮の思いもよらぬドライブスピードに圧倒され、声を上げた。負けじと疾走する蓮を追いかけるがゴール付近になると蓮は加速を突然止め、そこからジャンプシュートを放った。綺麗に弧を描きながらゆっくりと回転し、リングに触れる事無くスパッと乾いた音が響いた。


「なっ・・・トップスピードからのフェイダウェイ・・・?」


(以外とできるもんだね・・・俺)


 その試合を見ていた者全員が呆然と口を開けていた。連は基本的身体能力は標準より確かに上回っていて、まだ幼いころから賞金稼ぎを始めていたこともあって、筋力、走力などはかなり優れていた。一瞬無音の時間が続いた。暫くすると周りから歓声の言葉が飛んで来た。


(へぇ・・・うまいじゃん)


 未璃は1人呆然とせず、彼の技術を感心していた。








 帰りのホームルームを終え、皆が下校する頃だった。蓮は酷く頭を悩ましていた。その原因は飛騨牛でもなく、亮の鼻血が心配という訳でもなく、護衛をしなくてはならない「未璃」を下校時にどうマークすれば良いか、という事だった。後方から隠れつつマークするのもいいだろうが、周囲の人物から怪しまれるのは見えている。どんな事を考えても、自分の正体が怪しまれる結果が出てくるだけであった。


(なら、彼女と仲良く帰るしかないか・・・)


 下校だけにならず登校時も、彼女と仲が良いと周囲に印象付けておけば2人で歩いても怪しまれることは無い。もう、これ以外方法が無かった。蓮は自分が辱めを受けるのも覚悟を決め、下駄箱へ直行した。


 下駄箱の前に来て、未璃が靴を履き終えていたのを確認した。声を掛けようとした瞬間―――、何かが足の動きを制し、体は地面に吸い込まれるように傾いた。


 バダッ


 手が地面に着くのが遅く胴体から倒れ、肋骨が悲鳴を上げた。ゆっくりと体を起こしてみると上履きの紐が解けて踏んでいた。


(だっせぇー・・・)


「あれ、転校生君どーしたのー?」


 未璃の横にいた小さな少女「藤沢愛梨ふじさわ あいり」が気付いてくれたお陰か、未璃本人も足を止めてこちらの様子を伺っていた。何はともあれ、こちらにとっては護衛対象者が離れていないので都合が良い。蓮は紐を縛らず立ち上がって拳をぐっと握り締めた。


「あ、あのさ・・・!」


「あっ、そうだ! みーちゃん、この派手に転んだ転校生君も呼んでいい?」


「え、別にいいけど・・・」


 なにやらこちらの話を一切無視して蓮は何処かに連れていかれる話になっている。蓮は何の話か訊いてみた。


「・・・何の話?」


「みーちゃんの家で勉強会やるんだー。あたしとみーちゃんと、あと亮君と信也君も来るけど。この後何にも用がないんだったら来るでしょ」


 まさか自分が辱めをすることなくこうにも未璃の傍に居れる機会ができたのは好都合である。蓮は迷わず答えた。


「じゃぁ決まりっ! そういえば転校生君料理得意って言ってたよね? じゃぁ何か作ってよ、おいしいの!」


 蓮は朝の自己紹介での自分の緊張でやらかした事を思い出し、恥ずかしそうに首筋を掻きながら答えた。


「あ、ああ・・・。人数もいるし、カレーで良い?」


 愛梨はその言葉を耳にした瞬間、突如幼い子供の様に澄んだ瞳をキラキラと輝かせ喜んだ。


「うっそー! 転校生君カレー作れるの?! あたしカレーだーいすきー!」


「そ、そりゃ良かった・・・な?」


 愛梨の圧する瞳に押されて言葉が詰まった。だが、未璃の自宅で勉強をするとなれば、家の周辺に怪しい者がいないか確認もしなくてはならない。面倒だが、いつかは調べなくてはならない事だ。彼女に接触できるのは好ましい状況である。


 そうして、賞金稼ぎ曰く蓮は護衛対象者の未璃の自宅で勉強会に参加することになった。




 第1章 高校生、借金11億、月収1億 完

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