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恋愛病死 ― 愛は、最後に名前がつく ―  作者: 椿
第6章:すれ違い
69/90

69 距離

 

 帰り道。


 空はもう暗くなり始めていて、

 街灯の光が、ぽつぽつと道を照らしている。


 隣にいる。


 いつもの位置。


 手を伸ばせば触れられる距離。


 でも――


(遠い)


 歩く。


 足音だけが、静かに重なる。


 リズムは揃っているのに、


 どこか噛み合っていない。


「……」


 何か言おうとする。


 でも、言葉が浮かばない。


 何を話せばいいのか、分からない。


 凛も何も言わない。


 前を見たまま、歩いている。


 その横顔は、街灯の影で少し見えにくい。


「……」


 沈黙。


 前なら、この時間は心地よかった。


 言葉がなくても平気で、


 むしろ、それが自然だった。


 一緒にいるだけでよかった。


 でも――


 今は違う。


 同じ沈黙なのに、


 重い。


 空気が詰まるみたいに、苦しい。


 風が吹く。


 少し冷たい。


 季節がまた進んだみたいな風。


 その中で、


 距離だけは変わらない。


 近いまま。


 なのに、


 触れられない。


 触れない。


 理由は分からない。


 ただ、


 前とは違う何かがある。


 凛が少しだけ歩く速度を変える。


 それに合わせる。


 ぴったり揃う。


 それでも――


 埋まらない。


「……」


 また沈黙。


 言葉にすれば、壊れそうで。


 言わなければ、このまま続きそうで。


 どっちも選べないまま、


 ただ歩く。


 隣にいるのに、


 遠い。


 同じ距離なのに、


 届かない。


 その感覚だけが、


 はっきりと残っていた。

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