29回目
レヴィアタンは雪女と対峙した後、自身のアジトへと帰ってきていた。
レ「か、帰りました〜」
小声でおそるおそる中に入るレヴィアタン。実はベルゼブブが死んだこともあり、出かける時は最低でも1人には声をかける必要があったのだが完全に忘れていたようだ。
ア「何してたんですか?」
レ「ア、アスちゃん!?ち、違うんだ!ただメリーに会いに……」
ア「メリーちゃんに話は聞いてます」
レ「………えっと」
ア「ルールは守ってください」
レ「……ご、ごめんなさい」
アスモデウスの説教は長いいったいどれだけの間怒られるのかと肩を縮こませているとマモンがやってきた。
マ「まぁまぁいいじゃねぇか!」
ア「そういう訳にはいきません!何かあってからでは遅いんですよ!」
レ「ごめんなさい」
マ「ほら、こうして謝ってんだから許してやれよ」
ア「………今回だけですよ、次はお説教ですから」
アスモデウスはその場を後にした。ほっと一安心するレヴィアタンの肩を組むマモンはにやにやした様子で聞いてきた。
マ「お説教されたかったか?」
レ「そ、そんなわけないよ!」
マ「あーそう………それでどこ行ってたんだ?」
レ「言わなきゃダメ?」
マ「助けてやったんだからそれぐらいいいだろ?」
レ「………メリーに会いに行ってたのは本当だよ………でも出会っちゃったんだ………ベルゼを殺した奴に」
マ「へぇ〜俺も会ってみてぇなぁ」
レ「や、やめといた方がいいですよ」
マ「あ?なんでだ?味方にサタンがいるってんならもう知ってんぞ…それとも俺がツクヨミに負けるって言いてぇのか?」
レ「ち、違うよ………あの氷の魔女も味方だったんだよ!いくらマモンでも危ないと思って……」
マ「………」
レ「そ、それに僕とやる時は力を解放するって言ってたし……」
マ「………あの魔女が味方って噂は本当らしいな…………わかった!やめとくよ……だが最後に聞かせろ」
レ「………えっとなにを?」
マ「そいつの名前は?」
レ「………確か快って言ってたような?」
マ「快ね………ありがとよ!」
レ「あ、会いに行っちゃダメだからね!」
レヴィアタンの忠告をしっかり聞いたかわからないまま、マモンは部屋に戻ってしまった。
レ「………なんかすっごく疲れた……はぁアスちゃんも怒ってたし当分は部屋にこもってよ……」
シュン
ア「………」
…………………………………
私の名前はアスモデウス、最上位の悪魔と言われてる者の1人。そんな私は今、悩んでいる事がある、それは最近みんなが自分勝手すぎることだ。
ルシファーは部屋にこもりっきりで出てくる様子がなく、ベルフェさんはいつも通りくつろいでいる……自身の部屋で。この時点で2人ほど引きこもりがいるが問題はあれど話自体は聞いてくれるのでまだマシだ。
問題なのはまずマモンだ。彼が1番厄介で話を聞かない、やりたいことだけやって後処理を全部私に任せてくる。そして何よりルールを守ってくれないことだ。そんなマモンのせいで最近はレヴィアタンもルールを破るようになってしまった。
このままではいつか破滅するそんな気がしてならないのだ。そんな悩みもサタンがいればなんとかなる、サタンがいれば少なくとも定期会議ぐらいはみんな参加するようになるはずだ。
だから私は先程の2人の会話で閃いた。快を仲間にすればサタンをこちら側に戻せるのではないかと、さらにあの氷の魔女も味方だって話なら尚更やらない手はない。サタンと氷の魔女がいればきっと今の状況を脱してくれるはずだ。
アスモデウスはアジトを抜け快の所へ向かった。
…………………………………
みんなが寝静まった夜中、快の家に忍び込むひとつの影そうアスモデウスである、本人は怪盗気分でちょっと楽しそうだがそれを許さぬ者もいた。
ツ「こんな夜中にまで来るとはのう………アスモデウス」
ア「………ツクヨミさん起きてたんですね」
ツクヨミは気配を感じ取っていたようだ、少々骨が折れるがこんな苦労今までに比べたら軽い、可哀想ではあるが少しの間眠ってもらおう。
ズンッ
ツ「???………」
バタッ
ア「おやすみなさいツクヨミさん、大丈夫ですよ起きたらすべて終わってますから」
ここからが本番だ、快を仲間に引き入れるために私は今から快を落とす
………………………………
気がついたら外にいた。また呪いの影響かとも思ったが特に変わった様子もなくいつも通りの光景だった………いつも通りではない気もするが。
何気なく散歩しているとジッとこちらを見ている女性がいた。怖くなり早歩きでその場を後にする、チラッと後ろを振り返ると追ってきてはなかった。ほっとして前を向くと目の前にいた。
快「うおっ!?」
?「え!?だ、大丈夫ですか?」
驚きのあまり尻もちをついてしまう。………びっくりした……綺麗な人だな………でもどこか不気味な感じがするのはなぜだろう?
差し伸べられた手をおそるおそるとりゆっくりと立ち上がる。
快「えっとありがとうございます、ではこれで」
?「え!?」
なんで驚いてるんだ?………なんか怪しい、ここに居座るのは危険な気がする。早く帰ろう
快「えっと……さようなら!」
?「ま、待ってください!」
ガシッ
腕を掴まれ逃げれなくなる。力強すぎんだろ?どっからそんな力が………?
僕はそこでようやく彼女が震えてることに気がついた。目をウルウルさせて今にも泣き出しそうな様子でこちらを見ている、そしてなにも言わずに僕を抱きしめてくる。
快「え?………え!?なんで」
?「ごめんなさい、少しだけ、少しだけでいいんでこのまま……」
快「わ、わかりました……」
とは言っても柔らかいし、いい匂いするし、僕だって健全な高校生だ頭が悶々としてしまう。これは帰ったらあいつに天罰を下してもらわなければ………
数分後、ようやく解放され少しの安堵と少しの惜しさを感じながら話を聞く。
快「それで、いったい何があったんですか?」
?「私と同じ人が見つかったから安心しちゃって……」
そう言って彼女は手の甲を見せてきた、そこにはなんと3/100と書かれていて僕は目を疑った。
まさか自分と同じ呪いにかかってる人がいるなんて思ってもみなかった。
快「あなたも死んだことが……」
?「はい………あっ!私、アモスっていいます!」
快「僕は快、よろしくね!」
ア「とりあえずお互いのこと知っておくためにお出かけしませんか?」
快「それは……」
どうなんだろうか?言ってることは正しい気もするが会ったばかり相手とお出かけなんて言い出すのはなんか怪しい…………のか?………そんなことない気もしてきた………というかなんでこんな警戒してたんだ?
ア「どうかしました?」
快「………あっ!なんでもない……ただのお出かけだよね、いいですよ」
ア「はい………では行きましょうか」
僕はアモスさんと話しながら一緒に街を歩いていたのだが途中途中で違和感を覚えていた。
まずは呪いだ。毎日なにかしらあるというのに今日は恐ろしく平和なのだ………いや平和な方がいいけど。しかも2人も呪われてるというのになにも起きないなんてあきらかにおかしい。
快「今日はやけに平和ですね」
ア「………それが"普通"では?」
快「あれ?いつもならなにかしら………」
ア「そんな毎日襲われてたらきりがないですよ……」
快「………確かにそうですね」
ア「それより聞きたいことがあってですね」
快「は、はいなんでしょうか?」
ア「今までで1番やばかったのってどんな相手でした?」
誰なんだろう?やっぱりルシファーか?苦労したので言えばツクヨミもある意味………ツクヨミって誰だっけ?なんか……変だ……思い出せそうで思い出せない……なんだこのモヤモヤは?
ア「快さん?」
快「ツクヨミ………」
そう口にした瞬間頭の中からなにかが抜け落ちた感覚になる。………これも呪いの影響か?それとも他のなにかが僕に……
ア「………どんな方なんですか?」
快「………ごめんなさい、実は思い出せなくて」
ア「そうですか……ならいいのです」
アモスさんはぐっと近づいてきて真剣な様子で僕と目を合わせてくる。その瞳に吸い込まれそうになるが理性がそれを許さない、それに気付いたのか頬に手を触れ目を閉じてくる。
なにされるか予想は出来る………勘違いだったら恥ずかしい奴だけど………雰囲気に流されてはいけないのに体が動かない。
ア「もう一つだけ質問してもいいですか?」
ギリギリの所で止まりちょっとだけ安心する。僕はアモスさんから目を離すこともできないまま息を呑む。
ア「私達が死んだ後ってどうなると思います?」
快「………え?」
ア「死体が再生?新たに体が作られてそこに魂が入り込む?………それとも」
快「………」
ア「体も魂もただそっくりだけの他人が生まれる………とか?」
………考えたくなかった、自分が快ではない誰かなんて………心臓がドクンドクンと跳ね上がり息が苦しくなる。無理に呼吸しようとするとアモスさんの香りが肺に入り込みだんだんと彼女に夢中になっていってくような感覚なる。
ア「どう思いますか?」
快「僕は………」
シュィン!!!
急に体が軽くなり今までの感覚が嘘みたいに消え去った。アモスさんは驚き目を見開いた、その隙に距離を取り冷静になる。
快「……ちゃんと本物だと思ってます」
ア「………そうですよね」
…………………………………
アモス(アスモデウス)視点
………おかしい、あれからどれだけ魅了をやってもなんも反応しない、それもこれも全部あの白きオーラが許さぬと言わんばかりの様子で私の力をかき消してくる。
快「……なんか怒ってます?」
ア「………いえいえ!全っ然!怒ってませんよ!!」
快「怒ってるでしょ………」
ア「なにか!言いました?」
快「いや!なんでもないです!」
とにかく!このままでは埒が明かない……こうなったら無理矢理にでも連れて帰ってから記憶を書き換えてしまえば………
友「あ!快じゃねーか!」
快「あー久しぶり?なのか?」
友「………隣の子ってまさか……彼女!?」
快「な訳ねーだろ今日知り合ったんだよ」
快の友人でしょうか?………なぜでしょう?彼から底が見えない恐ろしさを感じる。
ア「こんにちは私はアモスっていいます!」
友「ふーん……よろしくね」
快「アモスさんも呪われてるんだよ」
友「マジで!?」
ア「は、はい!この手に……」
快の友人は私の手の甲をマジマジと見てから納得した様子で私のことを睨みつけものすごい威圧を放ってきた。
人間とは思えないその威圧感に後退りしてしまう。………何者でしょうか?
快「どうかした?」
友「いやなんでもない!用事あるからまたな!アモスさんもさようなら」
ア「さ、さようなら」
友「快になにかしたら許さねぇから………アスモデウス」
ア「えっ?」
去り際にとんでもないことを言われた、振り返る時にはすでに友人はいなかった。何者かはわからないがさっきのは確実に忠告だ、今も尚監視されてるかもしれない。………作戦は失敗した。そう思うしかなかった。
…………………………………
快視点
アモスさん怒ってたと思ってたら急に落ち込み始めた。ずっと黙って下を向いたまま僕についてくる………気まずい!とても気まずい!………せっかくできた同士を失うのは惜しい、どうにかして元気にさせなくては!
快「なんかありましたか?」
ア「いえ……」
快「そ、そうだ!今日のお礼になんか買ってあげますよ!」
ア「そんな……別にいいですよ」
快「いいから行きますよ!」
ニギッ
アモスさんの手を握りショッピングセンターに向かう。彼女はされるがままだったが途中で足を止めた。アモスさんの体幹の良さに転んでしまう。
ズコッ
快「痛っ!?………どうかしたんですか?」
ア「………」
アモスさんはジッとなにかを見つめていた。視線の先にはキーホルダーが並んでおりそれを見つめる彼女からはなにかを恨んでるようなでもどこか寂しそうな雰囲気を漂わせていた。
快「どれかほしいのでもありました?」
ア「……あ、いえ」
快「え〜本当に………あっ!」
そこにはサタンのキーホルダー飾られていた。なんかのアニメのグッズなのだろう………本人に全く似てないが
キーホルダーを手に取るとアモスさんはぐっと近づいてきてキーホルダーから目を逸らさなくなった。
快「欲しいんですか?」
ア「………いえ………これがサタンなんですね」
快「まぁ実際のサタンは……」
ア「えっ…」
快「あーいやなんでもないです!これ買いましょう!」
キーホルダーの持ってレジに進む………キーホルダーにしては高いな。
快「はい!どうぞ!」
ア「本当に買ったんですね」
快「いらないなら貰いますよ?」
ア「………ありがたくちょうだいしますね」
快「さて!そろそろ帰りましょうか!」
ア「………そうですね」
…………………………………
帰り道、僕らは河川敷にきていた。夕日が沈みそうになっているこの景色を見ながらアモスさんはずっとキーホルダーを大事そうに握って嬉しそうにしていた。
快「そんなに気に入ったんですか?」
ア「……そうかもしれませんね!」
快「ならよかったです、実は友達に同じ名前の奴がいて……」
ア「………」
快「まぁ人じゃなくて悪魔なんですけどね……でもとってもいい奴で」
ア「快さん……いきなりですが質問してもいいですか?」
快「え、は、はい」
ア「あなたは裏切り者を許せますか?」
本当にいきなりだな………裏切り者か、その話をするとやはりサタンが浮かび上がってくる。けどあいつは………
快「状況によりますね」
ア「状況?」
快「これら友達の話なんですがそいつはある時、仲間達と意見が別れたそうなんです…しかも6対1で、それでもそいつは自分を曲げなかったそうですよ」
ア「………」
快「けど本当の理由は1人にしたくなかったじゃないかって気もするんですよね」
ア「1人?」
快「雪女さん……じゃなかった、その人の姉さん?が元々1人側の意見だったんじゃないのかなって……孤立させたくなかったじゃないかってそう思うんです」
ア「………」
快「ま、まぁ!裏切りはよくないですけどね!」
アモスさんは考えた様子で黙りこくってしまった。………誰かに裏切られたのだろうか?それとも………
バッシャーン!!!
川の方を見ると子どもが橋から落ちたようで溺れていた。
早く助けなきゃ!と思わない川に飛び込もうとするがアモスさんに止められてしまう。
快「どうしたんですか!?」
ア「あの看板…川に飛び込んではいけないって」
快「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
ア「でもルールは守らなきゃ」
言い合ってる場合じゃない!もう行かないと!
ドボン!
………………………………
子「あ、ありがとう………お兄ちゃん………」
快「気をつけろよ」
子「うん!バイバイ!」
助かってよかった……けどびちゃびちゃだ、風邪ひく前にとっとと帰るか。
ア「どうして………」
快「え……」
ア「どうしてルールを破ったんですか?」
快「そんなに怒ることですか?」
ア「当たり前です!ルールは守らなきゃいけないはずなのに……」
快「………じゃあ僕がルールを守ってたらあの子はどうなっていたと思いますか?」
ア「それは……」
快「そういうことですよ……」
きっとこの人にとってはルールはなによりも大事なのだろう……今まで一度も破ることなど考えもしなかったのかもしれないだからアモスさんはルールとはなんなのかわかってないのかもしれない。
快「アモスさん、ルールってなんのためにあると思います?」
ア「………なんのため?」
快「僕はきっと己自身を守るためにあるんだと思ってます」
ア「………」
快「もちろん基本的には守らなきゃいけないものです………それでも時には破らなきゃいけない状況がくる、ルールを守るか破るかは勝手です。その時は自分自身に悔いのない選択をしてください」
ア「………わかりました!ちゃんと胸に刻んでおきます」
なんか柄にもなく説教みたいなことをしてしまった。まぁでもさっきまでの落ち込みはなくなったみたいだからよかった。
快「それじゃあそろそろ帰りましょうか!」
ア「そうですね!その前に……」
ズンッ
快「え?」
バタッ
ア「ちょっとした仕返しです!また会いましょうね」
…………………………………
快を殺した後の帰り道、私はまた快の友人に出会っていた。
友「なんで殺した?」
ア「………だって殺したら会ってくれたじゃないですか」
友「そんなことのために殺したのか?」
ア「………あなたじゃありませんよ」
スッドクンッ!
そう言って彼の胸に手を当てて隠れていた悪魔を呼び出す。友人は力なく倒れ、気絶してしまう。
ア「久しぶりですね、サタン」
サ「なんでわかった?」
ア「……勘ですよ」
サ「あーそう、まぁでも快を殺したのは変わらねー………罰は受けてもらうぜ」
ア「最後に聞かせてください、快さんが言ってたこと本当ですか?」
サ「あ?」
ア「あなたは氷の魔女のために私達を裏切って」
サ「………別に裏切ったつもりなんてねぇよ」
ズンッ
サタンの攻撃によって気が薄くなっていく。
ア「………本………当?」
サ「あぁ……ルシファーの奴も裏切られたなんて思ってねぇはずだ………またな」
具体的なことは何ひとつ言わずに本当にそういうところは昔から変わりませんよね………
バタッ
………………………………
快視点
目を覚めると部屋の中にいた。なんかめっちゃ疲れてる?
ツ「ずいぶん寝ておったな」
快「え!?そんなに?」
ツ「とは言ったが余もさっき起きた!」
快「………おい」
ツ「まぁ死ぬよりマシじゃ!とりあえず飯にするかの!」
快「そ、そうだな」
ふと手の甲をみると29/100と書かれていた。
快「あれ?いつ死んだ?」
ツ「どうかしたかー?」
快「………いや、気のせいか……なんでもねーよ!今行く!」
ハクマです!
かかった……こんなかかる予定ではなかった
このボリュームで書くの頑張ろうかな?




