season2-207 第9話 停戦の終わり
2030年10月11日5:10 国際同盟安全保障理事会 モニタールーム
デングリーヅ連邦キューバ地区、グリーンランド地区、ハワイ地区、ニュージーランド地区は全世界へ向けた緊急共同声明を発表した。演壇に立ったのは、デングリーヅ連邦キューバ地区のヴァイオス司令、ニュージーランド地区のイグロ司令、グリーンランド地区のマーゼン司令、ハワイ地区のユート司令の4名が【国際同盟及び日本国・アメリカ合衆国に対する緊急共同声明】をヴェルディ連邦共和国を介して通達した。
「本日未明、デングリーヅ連邦は、国際同盟による組織的かつ計画的な軍事挑発を受けた」
その第一声は、世界中の政府関係者に衝撃を与えた。デングリーヅ連邦政府は声明の中で、ハワイ周辺海域に展開していた国際同盟監視艦艇および日本・アメリカ艦隊が、ヴェルス停戦条約を利用して軍事包囲網を形成していたと主張した。さらに、停戦海域周辺においてデングリーヅ連邦海軍艦艇へ火器管制レーダー照射および威嚇飛行が行われたと非難した。
またハワイ沖で発生した戦闘について「連邦海軍部隊は国際同盟側より先制攻撃を受けた」と断定し、今回の軍事行動を「国家生存権を守るための正当防衛」であると主張した。しかし、その後に発せられた内容こそが、世界を決定的に震撼させる。
「ヴェルス停戦条約は本日をもって完全に失効した。デングリーヅ連邦は、国際同盟による侵略行為に対抗するため必要なあらゆる軍事行動を実施する。よって我々は国際同盟加盟国全国家に対し、正式に宣戦を布告する」
国際同盟緊急安保理でこの演説を共有していた会場は静まり返った。だが次の瞬間、世界各国の外交・軍事回線が一斉に騒然となる。停戦条約の一方的破棄と全加盟国に対する全面戦争を宣言する蛮行に踏み切った。それは単なる局地紛争ではなく、国際秩序そのものへの挑戦だった。
さらに声明では、連邦軍総司令部が「第一級戦時体制」へ移行したことも公表された。この戦時体制により全海軍艦隊への交戦命令、空軍の全面作戦移行、「トライデント」ミサイルの使用制限解除、、サイバー・電子戦部隊の無制限運用、占領地域における戒厳令発動や加盟国領土への上陸・占領が命令された。加えて、ハワイ地区では完全軍政への移行が宣言され、港湾・飛行場・通信施設・発電設備が次々と連邦軍管理下へ移された。さらに今回の声明では、連邦側最大拠点の存在も改めて強調された。
「この戦争は、連邦の生存を賭けた聖戦である。侵略者たる国際同盟に対し、我々は最後まで戦い抜く」
その演説は、事実上の総力戦宣言だった。この声明に対する国際同盟側の反応は極めて迅速だった。
5:25、30分ほど前に始まった国際同盟緊急安全保障理事会は先ほどまで停戦違反への対処を議論していたが宣戦布告を受けて集団的自衛権の行使によるデングリーヅ連邦4地区の解放作戦が決定した。会合終了後、各国代表の間には重苦しい沈黙が流れた。最初に発言したのは日本代表だった。
「デングリーヅ連邦側の本声明は、停戦体制のみならず国際法秩序そのものへの重大な挑戦であります。我が国はすでに武力攻撃を受けています。これは明白な侵略行為です」
続いてアメリカ代表が発言する。
「デングリーヅ連邦は自ら戦争を選択した。デングリーヅ連邦キューバ地区ハバナは連邦軍戦力の中核である。そして国際同盟は加盟国を守る義務を負うため我々は核兵器を含めた必要なあらゆる手段を用いて敵を排除する」
その後も各国代表が次々と発言し、声明を強く非難した。特に問題視されたのは停戦監視艦艇への攻撃、ハワイ占領継続だった。結果として、国際同盟は満場一致で以下を決定する。
・デングリーヅ連邦を「国際平和秩序破壊勢力」と認定し、加盟国軍による全面共同軍事作戦を承認
・国際同盟軍(United Allied Force)の統合運用開始し、ハワイ周辺海空域の制海・制空権奪還
・デングリーヅ連邦軍戦力の無力化
・キューバ地区、ニュージーランド地区、グリーンランド地区、ハワイ地区の解放
以上が決定したことにより国際同盟は正式に戦時統合体制へ移行した。さらに加盟各国でも急速に軍事態勢強化が進む。日本では防衛出動が正式発令され、自衛隊は全面戦時体制へ移行。アメリカではDEFCON 1が発令され、空母打撃群、戦略爆撃機、原潜部隊が一斉に展開を開始する。そして、ハワイ沖はその全ての発端となった海域では、すでに大規模戦闘が継続していた。被弾した海上自衛隊護衛艦「なかすかぜ」はなおも航行を続け、防空戦闘を継続。周囲では同盟軍艦艇が続々と戦域へ到着しつつある。空では戦闘機同士のミサイル戦が激化し、海上では対艦ミサイルが飛び交う魔境となった。
デングリーヅ連邦の一方的な行動により世界は全面戦争に突入した。
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