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【番外編】正月イベント2

魔導円環:ロージェが開発した魔術機構で、本編に登場したミスリル入りの合金に術式を施した「魔法陣」の上位版となります。これは中央に強力な触媒となる上位の宝石、そしてその周りを囲む正n角形の頂点に下位の宝石を設置することで魔力をより増幅させた機構となります。


作中に出てくる宝石は全て無限迷宮にて主人公たちが入手したものになります

 稲の栽培を自動化していく。


 といっても基本的に工程はいままでさんざんやってきた薬草とかの栽培と変わらないからそのまま転用する。


 成長促成には中央にエメラルド、周囲の正八角形にグリーンクォーツをあしらった魔導円環を使った。


 これで劇的に成長が早くなる。


 刈り取りはいつもの風魔法で行い、脱穀も臼の中で渦風を発生させる方式でなんとか自動化できた。


 もちをつく部分に関しては……


「うおおおお、これめっちゃおもしれーーーー」


 いまだにエリウムにやってもらっている。


 ただ、杵でぺたぺたついているわけではない。インベントリからレメント国の無限迷宮で手に入れた「謎の石板」を空中に出現させ、それを餅の上に落とすのだ。


 落ちたら石板を回収し、また空中から落とす。


 石板は3m×6mほどの長方形で、厚さは50cmほどある。


 これを連続でインベントリから出し入れすることで餅をつくことにしたのだ。


 エリウムが思う存分やったら、転移魔法陣で上方に転移させることにしよう。



 正月イベント用のダンジョンは、イベント期間内だったら何度でも挑戦できる。そのため材料がなくなり次第二回目の突入をする。


「ねえ、あなたたち不器用男子だけでダンジョン行ってきてよー」


 可愛い顔で笑いながら言われてしまった。

  

「うっ、まあ仕方ない、俺らで行くか……?」


 不器用男子はずばり、俺、エリウム、ノブラックだ。


 職業はどうぐ使い、吟遊詩人、神官……


「バランス微妙すぎねえか?」


「まあ、いけないこともないんじゃないかな。私とロージェは攻防両方出来るし、エリウムは攻撃力増加のバフに集中すればある程度火力も出るだろう。ロージェは範囲魔法が強い円環あるんだろう?」

「火属性と水属性なら。」

「ダンジョンの難易度を一段落として、それらを使って進んでいけばなんとかなるんじゃないかな」

「確かにそれでなんとかなりそうだな。じゃ、行ってくるわ。」

「おい、行くならついでに完成した正月飾りと餅持ってってガチャの景品取ってきてくれよ」

「了解ー」


 ノブラックとエリウムの話し合いでなんとかダンジョン攻略はできそうだと分かった。

 こうして俺とエリウムとノブラックでダンジョンを周回することになった。


「これ、お願いします。」


「おお、こんなにたくさんの門松と輪飾りとしめ縄と破魔矢と鏡餅を!こりゃ助かるなあ」


 神主さん、わざわざ全部のアイテム名言わなくていいんですよ。まあNPCだから微妙に違和感が残るのは仕方ないか。


「お礼に、お主にこれをやろう。これをあのお賽銭箱に投げ入れると、神からのお恵みをいただけるのだ。」


「ありがとうございます。」


 神主さんがお賽銭箱に入れるためのアイテムを配るというこの構図は謎だが今それは気にすることではない。


 早速もらったイベントガチャ券を賽銭箱に投げ入れた。ガチャ券といいつつ形はコインだから、おい賽銭箱の中でチャリンといい音がなる。


 インベントリの中を覗くと、「???」というアイテムが入っていた。詳細を開いたらアイテム名が出てきた。

 それと同時に「『かずのこ』を入手しました」というシステムメッセージが表示される。


 神からの恵みって、直接インベントリにかよ!


 まあそれは許そう。しかしなんなんだ、数の子というのは。おせちの具じゃないか。


 その後何度かガチャ券を投げ入れると

「『田作り』を入手しました」

「『黒豆』を入手しました」

「『エビ』を入手しました」

「『伊達巻』を入手しました」

「『栗きんとん』を入手しました」

「『昆布巻』を入手しました」


「おい、なんかおせち料理ばっか出てくるんだけどお前らどうなんだ?」


「俺もそうだな」

「私もそのようだね」


 どうやらエリウムもノブラックも同じような感じらしい。ハズレは全部おせち料理のようだ。


 めんどくさいから手に入れたガチャ券40枚をじゃらじゃらと流し込んだら、ようやくおせちではないものが出てきた。


「『着物(正月限定版)』を入手しました」


 本当にいらないものばかりだ。しかし、なんだか周りが騒がしいな。



「おい、あそこにいるやつ、いますごい数のガチャ券を入れなかったか?」

「いや、音がもうチンッって感じじゃなくてじゃらじゃらじゃらーってしてたな」

「やばいぞ、もうあんなに大量に集めているやつがいるのか」

「くそっ、あのべたべたする餅さえなければ余裕なのに!」


 あ、これやばいやつだ。いつの間にか注目されてしまっている。


 ここは一旦この場から離れた方がいいな。しれっと行こう、と二人にメッセージを送りつつ、足早にダンジョンに向かった。


 ダンジョンに入ってすぐのところにいる敵を倒した後、ガチャで手に入れた品物の効果を見ていると、どれも「30分間、『ベタつき耐性』1%上昇」という効果が着いていた。


 これはどうやら効果が加算されるようで、大量に食えばその分耐性が上がるらしい。


 これを食ってから戦え、ということか。

 しかもさっき手に入れた着物までベタつき耐性がついている。


 一応着物に着替えて、少しだけベタつき耐性を上げてからダンジョンに挑んだ。


「あれ、思ったより餅が降ってこねえな」


「ダンジョンのランクを一段階落としているからね、その影響じゃないかな」


 なるほど、ダンジョンの難易度を下げると餅の落ちてくる頻度も減るのか。


 前回と違って地面一面に餅が降るわけじゃないから避けるのも簡単だった。


 ベタつき耐性も少し付いているからか、二週目の攻略もあっけなく終わり、三周目は難易度を元の最高ランクに戻そうということになった。


 ここで、ある問題に気がついた。


 ベタつき耐性を上げるためにはおせち料理が必要だが、3人で行くとしても合計300個無いと行けないのだ。しかも消費アイテムだからダンジョンに潜る度に必要となる。


 ガチャを回すだけで補える数ではなかった。仕方なく市場で売っているおせち料理を買うことにした。


 他のプレイヤーもおせち料理を使ってダンジョンに潜っているからか、あまり出回っていないし値段も安くはない。しかしお守りと炬燵は欲しいのだ。躊躇している場合ではない。


 俺は市場にあったおせち料理は一瞬でほぼ全部買い上げた。


 これで何周か回せるな。


「名前なんだっけ、まあいいや」


 ガーネットの魔導円環を使った自作の火魔法で敵を殲滅していく。自作だから名前呼びたいように勝手に呼べばいいのだが、いちいち名前つけても覚えられない。


 そんなわけでかなり大規模な炎が相手の集団目がけて放射状に広がり、またたく間に敵は消えていく。


「なんというか、相変わらず範囲攻撃の威力は恐ろしいな」


「一極集中が出来ない代償だ。」




 とにかく速く周ることを意識したら、一つ下のランクで30分で二週出来ることが分かった。もちろん自分から餅に突っ込む勢いだ。


 その後結局ダンジョンに参加していなかった3人も手作業に飽きたと言ってダンジョンに参加し、6人での攻略に戻った。


 おせち料理を大量に消費しながらこれでもかという速さで周回する。どうやら餅の降る頻度はパーティーの人数にも関係があったようだがおせち料理を積みまくった俺らには関係がない。


 そうして何度かダンジョンを周回した後、俺達はゲームからログアウトした。


 このゲームの一日六時間までという制限、平日は全く気にならないが特に長期休みになるとかなり厳しく感じる。


 仕方がないから俺たちはひたすら作戦会議だ。


 その中で決まったのは、手に入れたお正月飾りの品はもち米の種もみ以外はそのまま渡そうということだ。


 もち米だけ俺の自動生産機で加工して餅にすればいい。どうせドロップ品の八割はもち米なのだ。


 ちなみに収穫したもち米はどうやっても「もち米の種もみ」にはならなかった。



 今もゲーム内では機械がもち米を加工しているだろう。俺はログイン時間を20分だけ残してあるから後で見に行くつもりだ。


 正月イベントは残り四日だ。なんとか多くのお守りと、炬燵を手に入れなければ……。



続きます。

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