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初めての農業

 どうやら爆発で飛んできた大きな岩にぶつかってHPを全損してしまったようだ。


 防具をつけていたり、DEFが高ければこんなことには到底ならなかったのだろうが……


 まあ過ぎたことは仕方がない。おそらくクエスト自体はクリアできたはずだ。


「山道の復旧を終えました。」


 受付嬢さんにそう告げると


「ええ!? お早いですね! 一体どうやったんでしょうか…」


「いやまあいろいろと……」


 実際、考えてみれば移動速度にしたってたって、魔法陣以外ろくに持ってきていない分速くなっているだろうし、帰路に至っては瞬間である。


 デスペナルティが15分間付与されたが、どうせ俺は戦闘に参加しないから、問題になるのは移動速度低下くらいか。


「はい! クエストの達成を確認できました! こちらがクエストの達成報酬になります!」


 雀の涙ほどのGと、いくつかの素材アイテムを受け取った。これはどうやら防具の素材になるようだ。

 しかし俺には関係ないからクランハウスの倉庫の中に放り込んでおくか……


 なんとなく爆破したいってだけでこのクエストを受けたわけだし、ギルドランクも一つ上がったみたいだし良かったよかった。


 ギルドランクはFから始まり、俺はいまEランクだがみんなはどの程度のランクなのだろうか。


 さっき受けたクエストがDランク相応だったからみんなはDの上からCの下くらいかな?


ロージェ :みんなってギルドランクどんな感じなの?

ボーロン :どんなって?

ロージェ :あ、普通にいまどのランク? って聞きたかった

エリウム :オレはCだぞ!

ティウ  :あたしも

ボーロン :最近Bに上がったよ

ノブラック:しばらく前にBになったところだね

べリリー :Bですね



 ぐっ

 やばい。


 俺以外最低でもC、ノブラックに関してはBの半ばなんじゃないか?


 これ、パーティー単位で受けることのできるクエストのランクの足引っ張ってるの完全に俺じゃないか。


 クエストの中には一定以上無限迷宮内の魔石採集の依頼や中ボスの写真を取ってくるといったものがあるからみんなはそれらを高速でこなしていっているのだろう。


 俺も今後はなるべくクエストも消化していくことにしよう。



 さて、このゲームで初めて農業の分野に手を付けるとしよう。


 このゲームの農業は薬剤師、錬金術師、魔道士とならぶサブ職業の扱いで、農民として植物を育て、収穫することでスキルのレベルを上げることができるようだ。


 また、農業もほかのものと同様に現実より遥かに簡略化されている。まあゲーム内の植物に対しても無農薬だの天候不良だのに悩まされるのは考えたくないよな。



 とりあえず農業ギルドに行ってみることにした。農業ギルドはレメント王都の外れの方にある。

 近づいていくと一面に麦畑が広がっている。広大な穀倉地帯だ。


 一度そよ風が吹くと畑に並ぶ麦たちが一斉に同じ方向になびいてゆく。時間が夕方で夕日が綺麗なだけに余計景色に味が出ている感じがする。


 普段全く使わないが画面キャプチャ機能で一枚パシャリ、と。




 おっと、あまりに眺めが良すぎて目的を忘れるところだった。


 建物は平屋で、藁葺きわらぶき屋根になっている。

 いかにも農家って感じだが現実的ではないような…


 まあ細かいことは気にしても仕方がないのでとりあえず入っていくことにした。


 「こんにちは」


 「お、若いの。どうしたんだね?」


 いかにも農夫って感じのおじいさん……


 このゲームは見た目に反して〇〇だ、みたいなNPCはいないのか??


 一人くらいうちのエリウムみたいに戦士っぽいけど実は吟遊詩人ですみたいなのいないものだろうか。


「すみません、農業に興味があって訪ねてきました。」


「おお! そうかの、最近若者が農業に興味を持つことが少なくて困ってたんじゃ……」


 なんか一昔前のセリフを聞いている気がする……


 リアルの方では最近食糧生産のオートメーション化が進んで若い人も割と携わっているとか。


「ほれ、まずはこの本通りに薬草をそだててみなされ」


 あ、早速出てきたな、薬草。


 ぶっちゃけ俺はこれさえ作れるようになれば用済みなのだ。


 とりあえず農夫さんの言うとおりにやってみた。



 まず植木鉢に土を入れて、薬草の種を埋めて、水をやる。


 え? このあとひょっとして「一週間ほどたったらまた来なさい」とか言われないよな?

 と恐る恐る農夫さんの方を見てみると


「お、終わったかの。本来であれば強めの光に2日ほど当て続けなければならないのじゃが今回は魔法で成長を促進するとしよう。」


お、それはありがたい。というか魔法で成長を促進することができるのか。魔法自体は魔法陣を使って俺がいなくても行使することができるから将来的に自動で植物を生産することができそうだ。


「グロース・アクセラレーション!」

 この人、魔法使えるのかよ……

 お、見るからにすくすくと薬草が育っている。はじめは2cmほどの高さの芽だったものが今三十cmほどになっている。 


 「このくらいかの。さあ本に書いてある通り続きをやるんじゃ。」


 俺は本に書いてある通り鎌で薬草を刈り取った。


 「薬草D-」


 ですよねー。

 

 どうしても初めはかなり品質が低いものができてしまうのだ。そういうわけでいつものように今から研究をしていくとしよう。


 「どうやったら品質の高い薬草を作ることができますか?」


 「まず、良い肥料を使うことじゃ。今は普通の家に何も肥料を使わないで育てただけだが、肥料を使うと相当品質が良くなることが多いのじゃ。」


「肥料はどうやって手に入れられるのですか?」


「ここでも販売しておるが、市場などでも売ってるんじゃないかの。」


「ありがとうございます。とりあえずここで買わせていただきます。」


 ラインナップは…… 干鰯、牛糞、骨粉 この3つか。


 流石に窒素肥料だとかリン酸肥料なんてのは期待しすぎたかな。しかし肥料にかかる費用もなるべく抑えたいところだな。


 とりあえず骨粉辺りで試してみるか。一番安く手に入りそうだし。


 土に骨粉を混ぜてと。後はさっきと同様の手段でもう一度やってみる。


 ちなみにクエスト外でも40G払えば農夫さんが魔法を使ってくれる。


 収穫してみると・・・・・・


 「薬草D」


 ううむ。一応品質は良くなったもののまだいつも使っている薬草には届かない。 いつも薬草D+を使っているからあと一歩と言ったところなのだが……


 他の肥料で試してみたがやっぱり結果は同じだった。


 後変わるところがあるとすれば種の埋め方と鎌で刈り取るところか。




 適当に試していたら薬草D+を手に入れることができた。


 やはりその辺りの微妙な違いで品質が1ランク変わってしまっていたようだ。


 ひとまずこれで目標とするものを作ることができたので良しとしよう。


 後はこれをいかにコストを抑えて自動化して生産するかだ。


 今の時点でもっとも費用がかかっているのは薬草の種であるわけだからこれを抑えることができればいいわけだが……


 「あの、薬草ってもっと成長させて花を咲かせて種を取ることってできないんですか?」


 「できるぞい。じゃが今の三倍は育てなければならぬ。」


 ううむ、それは厳しいな……


 ひとまずグロース・アクセラレーションを使わないとどのくらい育てるのに時間がかかるのか調べてみることにしよう。


「あと、薬草って畑に植えて育てることってできますか?」

「もちろんできるぞい。じゃがその時は事前にしっかり耕して、肥料を多めにまいておくんじゃぞ」

「わかりました。ありがとうございます。耕す時の鍬ってどこで手に入りますか?」

「ここでは扱っていないから市場かのう」

「わかりました。今日は本当にありがとうございました!」

「頑張るんじゃぞ~」


 さて、クランハウスの庭を改造するとするか。表の噴水付きの庭は綺麗に整えられているので流石に壊したくない。


 なんだかんだティウが気に入っていてよく手入れをしているしな。


 たまに見たことがない花が植わっていることがある。


 だから裏庭の方をいじろう。 


 

ちなみに一般的なプレイヤーはギルドランクがCに到達していたら相当優秀で、D~Eが普通、といった扱いになっています。


――チームのメンバーと職業再掲――

ロージェ 道具使い

エリウム 吟遊詩人

ティウ  魔術師

べリリー 盗賊

ボーロン 騎士

ノブラック神官

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