12話 読み合い
俺はすぐに相手の能力をまず考える。
片方は青と白、もう一人は濃い緑。
青は水なんだろうが、白が何なのか…
そして、風音さんとは少し違う濃い緑。
恐らく空気などに関する物じゃないかと推測する。
「やあ、成瀬 炎怒。後悔する準備は出来たか?」
青と白の髪の少年は余裕そうな表情でそう言ってくる。
俺は正直怒りを抑えられなかった。
だが、ここは相手を挑発し返すべきだと思った。
「ふっ…後悔なんてする訳ねぇだろ?」
そう言ったが、俺は頼堂や黒山さんが死んだ事で後悔していた。
こいつらには負けるかもしれない。そう思ってしまう。
俺は初めて弱気になった気がする。
もしかしたら降伏した方が良いんじゃ無いか。
そう思ってもいた。
だが、すぐに気付く。
今ここで諦めたらそれこそ後悔する事になる。
頼堂や黒山さんも金剛も風音さんも樋川も…
皆が俺の言う事に協力してくれているのにそんな仲間の事を裏切る事になるんじゃないか…
そう思って俺は戦う事を選んだ。
青と白の髪の少年は水の弾を飛ばしてくる。
俺はすぐに弾こうとしたが、その弾は急に氷になって彼に跳ね返る。
相手は予想外だったのか後ろに下がってそれを止めていた。
「助かるぜ、樋川」
氷になったのは間違いなく樋川の援護だとすぐに気付いた。
そうか、水を使ってくるとなると樋川が居るこっちが有利だ。
やはり彼を仲間にしたのは間違いじゃなかった。
俺の炎じゃ抑えられていたかもしれないからな。
水に対抗しやすい氷が居るのは圧倒的に有利だ。
「おい、氷のやつが居るなんて聞いてないぞ…」
「俺も聞いて無いぞ…? 先生が聞きそびれたんじゃないか…?」
彼等はこそこそと何かを話しているようだった。
俺達に話を聞かれていると気付いた彼等は、すぐ水を飛ばしてきた。
だが、樋川が簡単に止めようとした、その時だった。
樋川が水の方に気が行ってる瞬間に、緑色の髪の少年は彼の傍まで近付いていた。
自分を守る事を優先していた俺は彼の危険に気がつかなかった。
「樋川!気をつけろ!」
俺は炎を飛ばして居たら間に合わないと思い、言葉で助けようとした。
樋川はすぐに気付いて、彼を凍らそうと右腕で掴みかかった。
その間水は俺が防ぐ。
だが、予想して居なかった事態が起きる。
凍らそうとした彼の腕を掴んだ緑の少年。
その少年の髪は急に水色に変色した。
樋川の髪は黒くなっていた。
そして少年は樋川の右腕を凍らし砕いた。
理解不能な出来事に俺も樋川も唖然としていた。
少年と距離を取った樋川にすぐに近付いて無事かどうかを確認する。
「大丈夫か!?」と聞くと彼は黙って頷いた。
少年の方を改めて見ると、やはり髪の色が水色になっている。
人の能力を奪った…
そんな物があるのか…?
奪う物… 奪う物…
家電製品で奪う物なんて思いつかないぞ…?
という事は奪っているんじゃないのか…?
別の言い方… 吸い取った…?
吸い取る…って事は…
「掃除機…?」
俺はそう呟くと水色の髪になった少年は笑って言う。
「正解! 俺の能力は掃除機だ!」
人の能力を吸い取る掃除機の力…
これはなかなか厄介な相手じゃないのか…
だが、ここは冷静に分析するしかない。
恐らく、今の俺の能力を取ったりしないという事は、触れていないと吸い取れないんじゃないのか…?
そして、後はいくらでも吸い取れるのか…
そこが問題だ。
2人共の能力を取られてしまえば、それはもう絶望的な状況になるが…
でも色が変わっている今は掃除機の能力を使えないと俺は思った。
ここは一か八か、賭けるしかねぇ…!
もう一人の俺、お前に任せるぜ…
「遊んでやるぜ…」
もう一人の俺はそう言った。
そして俺は彼等に向かって走り出した。
水を飛ばす少年が前に出てきたが、攻撃するフリをして避け、その先に居る樋川の能力を持った彼に殴りかかる。
これで俺の能力も取られるなら俺達の負けだ。
だが、取れないならまだチャンスはある。
そう思って俺は彼に殴りかかった。
その瞬間、俺は絶望した。
彼の髪は急に緑に戻った。
このままじゃ取られる。
そう思った時にはもう遅かった。
彼は俺の腕を掴み髪の色が赤くなった。
炎を出して攻撃をされるそう思った俺は咄嗟にもう片方の手で彼の顔を殴る。
その攻撃に怯んだところを俺はすばやく下がるが、もうどうしようもない。
能力が無いんじゃ…と思ったが、俺は後ろを見て驚いた。
樋川の髪は水色に戻っていた。
「樋川…!お前髪の色が元に戻ってるぞ!」
俺がそう言うと彼は左手で氷を出す。
これで分かった。
あの掃除機は一つまでしか取れない。
そして一つ前の能力は自然と持ち主に戻る。
これならまだいける…!
いや、今能力の無い俺にはどうしようもないんだがな…
そう思っていると樋川は急に今度は赤い髪になった彼に突撃した。
俺に能力を戻すつもりなのか…?
そう思っていると、違う事をした。
また殴りかかるが、今度は少し違う。
殴りかかって、彼の髪が緑になった瞬間、氷を飛ばして下がった。
フェイントで相手が能力を無くすのを待ったのか…!
あの掃除機の能力は自分のタイミングで無くすのか…
これは樋川も一か八かに賭けたんだな…
「ナイス、樋川… 良い判断だったぜ」
そう言うと彼は「オレはあいつがオレの能力を取ルのが分かってた」と言った。
一瞬何故だ?と思ったが、すぐに分かった。
「水と相性の悪い氷を敵にしておきたくないからか…」
そう言うと彼はもう一つの理由を言った。
「それと、炎怒に対して有利になるカラだ」
なるほど、それが分かっていたから突っ込んだのか。
最初会った時は異常者なのかと思ったが、案外考えて行動してるんだな…
俺は樋川の事を改めて見直した。
「さて、お前の能力も分かったここからが本番だぜ…」