13話 もう一人の家族
彼の能力が分かった以上、後は簡単だ。
あいつに触れられないように気をつければいいだけだ。
近付かれそうだったら距離を取りながら球を飛ばせば触る事なんて出来ないだろう。
「あいつに触れられんなよ?」
俺は樋川にそう言うと「分かってル」と返してきた。
ここからの戦いはこちらが優勢だと思っていた。
だが、一つ肝心な事を忘れていた。
俺達は緑髪の彼に触られないように意識しながら戦っていた。
青と白の髪の少年は突撃してくるような素振りを見せないからこっちは彼の攻撃を止める事を優先した。
そしてその間に、緑髪の少年に触れられないよう、気をつけながら攻撃を仕掛ける。
遠距離で攻撃し合う2人と、近距離で戦う2人で分かれていた。
俺が遠距離の攻撃を止めている間は樋川が緑髪の少年と戦う。
だが、彼は左手しか使えない分、少し押され気味だった。
それに気付いた俺は彼に遠距離の水攻撃を氷にしてもらい俺が緑髪の少年の相手をする。
彼は相手の能力を取れなければ何の能力も無いのと同じだ。
だから、強く無いはずだが、彼は身体能力がなかなか凄く、こちらの攻撃を容易く避ける。
そして避けた後はすぐ掴みかかりに来る。
こっちが殴ればどうにかなる可能性もあるが、掴まれた時のリスクが大きいから俺はとにかく炎を出して応戦していた。
水を止めるのは樋川の方が圧倒的に有利で今の状況が恐らく最善策だった。
だが、どれだけ炎を飛ばしても彼には当たらない。
このままじゃこっちがもたなくなる。
どうにかして当てるしか…
でも、どうやって当てれば…
それを考えようとしていた時、もう一人の少年が攻撃を仕掛けてくる。
そう思った時、忘れていた事が起きる。
彼は突然、俺達の周りに泡を飛ばした。
それはシャボン玉のようにふわふわと飛んでいた。
その泡は白く輝いていて、俺は彼の髪をふと見て思い出した。
彼の髪は2色だった事を。
白い髪の部分はこれだ… 泡だったんだ。
その時、樋川は「何だコレ?」と言って泡を壊そうとしていた。
俺は直感で触れたら危険だと思った。
「触るな!樋川!!」
俺はそう叫ぶが、彼は既に手を伸ばしていた。
彼がその泡に触れた瞬間、中から水が弾けるように飛んできて、彼の体は蜂の巣のようになった。
「ウワァァァァ!」
「樋川!」
俺は反動で後ろに倒れこむ彼の元に駆けつけながら彼の名を呼んだ。
彼の体を支えて怪我を見る。
だが、すぐに気付いた。
これはもう助からない…と。
「炎怒、オマエはあいつらに勝てル…」
彼はそう呟いた。
周りを飛んでいた泡は徐々に中を舞って行く。
俺は内心思った。
勝てるかじゃない。勝つしかない。
だが、俺1人でどうやって勝てと…
そう思っていると、彼はニヤりと笑った。
「まだ終わってない…!」
そう言って彼は手を伸ばして、泡を氷に変えた。
上から流れ星のように飛んでいくその氷は青と白の髪の少年の体を貫いた。
まさか、この攻撃を当てるために、油断させたくて食らったのか…?
緑髪の少年は彼を見ていたが、どうやらあっちも瀕死のようだった。
これで1対1になったという訳か…
「後は俺に任せろ…」
俺はそう呟いたが、彼は既に目を閉じていた。
俺は彼の体を地面にゆっくり置いて、怒りを露わにした。
もう一人の俺に託した。
「怠慢しようぜ…? 掃除機さんよ?」
俺が構えると、彼も戦闘体勢になっていた。
相手の援護が無くなって1対1になったのは良いが、これじゃさっきの状態と変わらない…
むしろ、取られてしまったら取り返すことが出来ないと考えると不利になっている気がする。
何か倒せる方法を考えないと…
「あいつ…もしかして炎怒か…?」
一人の青年は彼等の戦いを見ていた。
そして赤い髪の少年を見て驚き少し笑った。
「ふっ…まさかな…」
こいつの弱点をまずは探る必要が…
そんな事を考えていると後ろから「お前、炎怒か?」と声がした。
その声はどこか俺に似ていて、でも聞いた事の無い声だった。
振り返って見ると、そこに居たのは赤い髪の男性だった。
「あなたは…?」
そう聞くと彼は少し笑ってこう答えた。
「成瀬 羅守屠。お前の兄貴だ」
俺の兄…?
「何を言ってるんですか…?」
俺に兄なんて居ない…
何だ?新種の詐欺か…?
「そうか、お前がまだ小さい頃だったからな…。 知らないのも当然だ」
彼はそう言って思い耽っていた。
俺が小さい頃に何かがあったのか…?
そう考えていると、緑髪の少年は不意打ちを狙って俺に掴みかかりに来た。
俺は咄嗟に下がろうとし、躓いて尻餅をつく。
このままじゃ盗られる…!
そう思った瞬間、赤い髪の男性は炎を出して、応戦した。
「まあ、俺がお前の兄だって事は後で証明してやるよ。今はあいつを倒す事に集中しようぜ?」
その男性は俺に手を差し伸べながらそう言った。
俺は彼をまだ兄だとは思って居ないがとりあえず協力してもらえるならしてもらおうと思い、その手を掴んで立ち上がる。
「それじゃやってやるか」
彼はそう言って戦う姿勢を見せる。
その姿勢は俺とそっくりだった。
それを見て俺は本当に兄なのか…と少し信じてきていた。




